(2020年11月19日付毎日新聞朝刊)
アメリカの前大統領のバラク・オバマが出版した回顧録において、オバマが鳩山由紀夫元首相を「酷評」したとニュースなっているが、翻訳が怪しいという指摘が上がっているので検証してみたい。最初に論争になっている部分を書き出してみる。
「A pleasant if awkward fellow, Hatoyama was Japan's fourth prime minister in less than three years and the second since I'd taken office - a symptom of the sclerotic, aimless politics that had plagued Japan for much of decade. He'd gone seven years months later.」
これを拙訳してみると、最初のフレーズは「if awkward」の方から訳した方がニュアンスに近くなる。
「やりにくくも感じの良い相手だった鳩山は3年足らずの間の4人目の首相で、私が大統領になってからは2人目で、そのほぼ10年間、日本を苦しめていた硬直化し漫然とした政治の症状(つまり惨状)だった。彼は7カ月後にいなくなった。」
説明していくと、「3年足らずの間の4人目の首相」というのは2006年9月からの第一次安倍政権から、福田、麻生の次の鳩山という意味で、オバマの大統領就任は2009年1月だから2009年9月に首相に就任した鳩山は2人目なのである。
だから「ほぼ10年間」というのは2006年からオバマが大統領の就任期間である2017年1月までを指し日本では第3次安倍政権までを指すと思う。
ここで重要な点は「症状(a symptom)」という単語で、これは人に使われる言葉ではなく、ころころと国のトップが変わったという現象を指しているのだから、鳩山を酷評しているわけではないのである。
ジョー・バイデン次期(仮)大統領が敗北を認めないドナルド・トランプ大統領に対して「恥ずべきこと」と批判したという翻訳も間違っていたと思うが、一体誰が翻訳したものを記事にしているのか定かではなく、それほど難しい文章ではないのだから各大手メディアが記事にする際に確認するべきで、明らかに英文法よりも「偏見」が勝ち過ぎており、こんな不祥事が続くと信用されなくなると思う。
gooニュース
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