原題:『罪の声』
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
撮影:山本英夫
出演:小栗旬/星野源/松重豊/古舘寛治/市川実日子/火野正平/宇崎竜童/梶芽衣子
2020年/日本
「強い画」の撮り方について
「ギンガ萬堂事件(つまりグリコ・森永事件)」が学生運動の最後の「残り火」だったという推察が興味深い。
例えば、主人公の曽根俊也の母親の真由美が入院先から家に入る瞬間から、イギリスにいるもう一人の主人公である阿久津英士が曽根達雄が営む本屋に入るジャンプカット、あるいは阿久津に心情を告白する曽根達雄の横顔から部屋にいる真由美の横顔へのジャンプカットなど凝った演出が素晴らしいが、川岸で阿久津が曽根俊也に自分の記者としてのこれまでの経緯を語るのだが、2人の背後に船が通るところまでワンカットで撮っており、これくらいこだわるからこそ画に力が宿るのである。
達雄は元カノから「Fossil(時代遅れの人)」と呼ばれているのだが、達雄が営む本屋は「Fossgate Books」という名前なのである。この書店は実在するらしいのだが、この名前の意味を察すると「溝の口の書店」となり、達雄の「追い込まれた感」を感じなくもない。
しかし「何故わざわざ足がつきやすいように3人の子供の声を使ったのか」という最大の疑問は解けていないように思う。