原題:『牯嶺街少年殺人事件』 英題:『A Brighter Summer Day』
監督:エドワード・ヤン
脚本:エドワード・ヤン/ヤン・ホンヤー/ヤン・シュンチン/ライ・ミンタン
撮影:チャン・ホイゴン
出演:チャン・チェン/リサ・ヤン/ワン・チーザン/クー・ユールン/タン・チーガン/ジョウ・ホェイクオ/リン・ホンミン/エイレン・ジン
1991年/台湾
日本とアメリカの狭間に立たされていた台湾について
1960年の台湾はまだ日本が占領していた形跡を残しており、戦後に中国の上海から家族と渡って来た主人公の小四(シャオスー)が住んでいる家は日本家屋なのだが、同時にシャオスーか通う建国中学の夜間部の近所では映画の撮影スタジオがあったり、友人の王茂(ワンマオ)は小猫王(リトル・プレスリー)の異名を持ち、エルヴィス・プレスリーの曲をライブで歌っていたりする。つまり台湾は日本文化とアメリカ文化の狭間に立たされていたのである。
建国中学の校舎内にある「小公園」というグループのリーダーのハニーは本作のヒロインである小明(シャオミン)を巡って敵対する「217」というグループのリーダーと奪い合った末にリーダーを殺してしまい、台南に逃走していたのであるが戻ってきていた。現在の「217」のリーダーの山東(シャンドン)は「小公園」を仕切っている滑頭(ホアトウ)を利用してコンサートを開いて金儲けを企んでおり、ハニーを誘い出すと交通事故に見せかけて殺してしまうのであるが、ハニーと親密だったヤクザたちが「217」のメンバーたちのたまり場を急襲するものの、ヤクザたちは銃ではなく刀で襲うのである。
ラストシーンも印象的で、ワンマオがプレスリーに宛てて手紙を出していたのであるが、プレスリーから返事が届き、指環まで貰ったことを伝えるために無くしやすい封筒の代わりに自分の声で知らせようと吹き込んだテープを留置所にいるシャオスーに渡してくれと事務員に託すのであるが、おそらくプレスリーが何者かさえ知らない事務員たちは、そのテープをごみ箱に捨ててしまう。日本とアメリカの文化に翻弄された台湾の若者像が的確に描かれると同時に、若者たちを駆り立てているものを大人たちは知らないというジェネレーションギャップの描き方も優れていると思うのである。
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