原題:『春に散る』
監督:瀬々敬久
脚本:瀬々敬久/星航
撮影:加藤航平
出演:佐藤浩市/横浜流星/橋本環奈/坂東龍汰/松浦慎一郎/尚玄/奥野瑛太/坂井真紀/小澤征悦/片岡鶴太郎/哀川翔/窪田正孝/山口智子
2023年/日本
ボクシングという「概念」の違いについて
本作は同年に公開された『クリード 過去の逆襲(Creed III)』(マイケル・B・ジョーダン監督 2023年)と比較するとよく分かると思う。
『クリード』は主人公のアドニス・クリードが一旦は引退したものの、幼なじみで18年の刑期を終えたデイミアンが訪ねてきたことで、ある因縁によりタイトルマッチを行なう羽目になるのである。どう考えても出所したばかりのデイミアンがわずかな期間の練習でチャンピオンになることには違和感しかないのだが、やはり最終的にアドニスがチャンピオンベルトを奪還するシーンがエンタメの定番として観客にカタルシスをもたらすのである。
『春に散る』の物語は『クリード』とは正反対の構成で、そういう意味ではカタルシスを得られない観客に不満が残るかもしれないが、そもそも『春に散る』は栄光とは、つまり挫折だという矛盾を描いているのである。つまり「目的」であると同時に「終わり」という意味も持つ「END」に突き進むようにストーリーとして栄光と挫折が同時に描かれるために、そのじれったさにイラつく観客もいるだろうが、「現実」を描くとなるとボクシングの試合自体が派手なエンタメと化している『クリード』よりも『春に散る』のようになるのである。
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