台北の街は雨が降ると長袖でちょうどいいが、今日みたいな好天ではTシャツ1枚で歩きたくなる。喉の渇きを覚えた私達はオープンカフェでひと休みすることにした。
Rさんは女親分という形容がぴったりの人で交渉にかけては男以上の強さを発揮する。なかなかアイスコーヒーが出てこないので彼女は店員を呼びつけた。どうやらオーダーを忘れてお喋りに夢中だったようだ。こっぴどく叱られた店員は半泣き状態で気の毒になった。
私は改めてRさんとTさんにお礼を言った。そして旅で得たことは一生の宝になると伝えた。名残は惜しいが、昼食開始時刻はとうに過ぎていた。
「そろそろ行かないとKABAちゃんが頭から湯気を出すわ。急ぎましょう」
「はい」
二人は私を昼食会場まで案内してくれた。ここで彼らとは別れた。私が最後に発した言葉は今でも憶えている。
「またお会いすることになると思います。ここ台湾でね」
