長期にわたる北関東暮らしで海の魚は諦めざるを得なかったが、川魚の代表格である鰻を食べる楽しみを覚えた。小さな町には牛丼チェーン店よりもはるかに多くの鰻屋があった。
広島の人間は鰻を注文してすぐに出てくると勝手に思い込んでいるが、北関東では注文を聞いてから捌くところが大半である。蒸し工程も入るので大体30~40分待つのは当たり前なのである。私は肝焼きやうざくをつまんで酒を飲み、鰻が焼きあがるのを気長に待っていた。
地元に帰って来てから鰻屋に行くことがめっきり少なくなったのは好みの味を出す店が無いためである。蒲焼のタレが甘過ぎて足が向かない店がほとんどだ。せっかく良質の鰻を仕入れてもあのくどい甘みのタレを使ったのでは台無しである。
ばら寿司の甘さには割と寛容な私だが、鰻のタレに関しては滅法厳しい(笑)。東京の上品な鰻料理に慣れてしまうとこっちのはえらく下賎に感じる。鰻に関しては素直に関東に軍配を上げたい。土用の丑=鰻と思い込む地域の人間は本当の味を知らないのが極めて多いと付け加えておこう(笑)
