麺を食べ終える間際にRさんが話したことがしばらく頭から離れなかった。
「顔立ちがよく似た台湾人と日本人との区別が難しいと言う人がいるけど、麺の食べ方を見れば日本人だとすぐにわかるのよ」
「つまり台湾人が決してしないことを日本人は無意識にしているんですね」
「そうよ。日本人はほとんどレンゲを使わずに丼に直接口をつけてスープを飲むでしょ。台湾では下品な行為と見なされるから注意して。確か、汚い食べ方を意味する日本語があったよね、何だっけ。思い出せないわ」
「犬食いですね!下等な犬や猫が食器に頭を突っ込んでピチャピチャ音を立てて餌を食らう様子から出来た言葉で、育ちの悪い者がよくやってますな。丼に口をつけるのは畜生そのものということですか?」
「正直に言うとそう。だから貴方には教えておこうと思った。気を悪くしないでね」
「平気ですよ。知ってるのと知らないのとでは天国と地獄ですね。どうもありがとう。台湾ではレンゲを使えと友達にも伝えましょう」
彼女は缶ジュースを口飲みすることもないと言った。缶にストローを挿すのが当たり前と聞いて私はびっくりした。食事作法のタブーは国によって大きく異なることを学んだ。
ホテルに戻り、美しい絵はがきを購入した。旅の記念に親しい友人と実家にエアメールを出すためである。楽しい旅の様子を短文で綴りフロントに預けた(料金は1枚10元)

※最初の画像は元宵節に行われる平渓天燈祭りのイラスト(台北のホテルで購入した絵はがき)。ちなみに実家にはがきが届いたのは投函から5日後のことだった。
