台北の夜市を歩いて気になったことがある。路肩にいくつも血痰のような赤い染みができているのだ。私は台湾通のTさんに尋ねた。
「ありゃー何ですの?」
「あの赤いヤツは檳榔(びんろう)の吐きかす。ガムのように噛むと目が冴えるんだって。覚醒作用を期待してトラックの運ちゃんなんかが買ってる。まあ、まともな人間は檳榔なんて噛まないよ」
「しかし、汚らしいですな」
昔はカゴを持った色っぽい檳榔売りの姉ちゃんが街角に立って男を吸い寄せたそうだが、規制が厳しくなってからはいなくなったとのこと。私は妙に生々しいかすを見つけて大声を出した。
![路肩に吐き捨てられた檳榔(びんろう)](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/41/a526fac696a55e79998a2683c2ff2ca5.jpg)
「これなんか馬鹿犬の捻り出した糞にそっくりですよ」
「あら。嫌だー」
Rさんは思い切り顔をしかめた。それを見て男達はニヤニヤしたのである。
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