(海の香りのする駅に@浜加積駅)
地鉄の駅の中では、比較的海の雰囲気があるのが、この浜加積の駅。「浜」と名前がついているからそう思うのかもしれないが、路地裏にひっそりと佇む駅舎から広がる空の向こうに、青い富山湾が見えるような気がする。古い駅舎の多い富山地鉄ですが、今年のお正月に発生した能登半島地震に伴い、耐震補強の観点から一部の老朽化が進んだ駅ではリニューアルの事業が始まっています。風雪に耐えたトタン屋根は軒が歪み、雨風をしのいだ赤茶色の屋根瓦は今にも剥がれ落ちそうなこの駅舎も、おそらくはその対象になっているものと思われますが、未だその気配はありません。軒下に並べられた自転車数台、この駅の利用者のものであろうか。そう思うには訝しいほどに、真夏の光線の下で静寂に包まれていました。
駅舎の中に入ると、陽射しが遮られて外に棒立ちでいるよりかは幾分マシだ。駅のつくりは富山地鉄の標準的な構造、地鉄において最初から無人駅として作られた駅は少なく、どこの駅にも駅舎とかつての窓口が残っていて、そしてその窓口の大半が後の無人化によって閉鎖されている。個人的に、ローカル私鉄の無人化された駅舎の、閉じられた出札口を覗くのが好きだ。駅に駅員がきちんと詰めていた時代が、そのまま閉じ込められているような気がするのだ。海に近い駅らしく、壁には津波対策で海抜が示してある。土間打ちの待合室からホームへは数段の階段を上がって行く形。ホームには、潮風に錆びて蝕まれ朽ちて落ちるを繰り返し、既に用を成していない駅名票がある。地鉄らしい・・・と言ってしまえばそれまでだが、どうしてここまで、という惨状である。
アスファルトの照り返しは真っ白く、日差しをよける場所もない灼熱の駅前。1分でも立っていられないほどで、呆然となって来る。京阪10030が富山方面からゆっくりと浜加積の駅にやって来た。以前は(今でも)地鉄の電車で言えば60形至上主義ではあるけれど、夏にこのコントラストの強いかぼちゃ色の京阪は案外悪くない。悪くないというか、富山の夏の空気感にピタッとハマっている。それもそのはず、かぼちゃは夏の緑黄色野菜なのであった。