青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

三郷暮色

2018年10月07日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(優良物件@越中三郷駅)

富山に来て、地鉄の雰囲気を味わいたいけどそんなに時間がないよ!と思うならとりあえず行っとけと思うのがこの越中三郷駅。関東もんだと「えっちゅうみさと」と読んでしまいがちですが、「さんごう」が正解。電鉄富山から数えていくつもない駅ですけど、この駅の一番のポイントは駅名標に残る右から書きの「鐵電山富」の文字。富山電鐵を母体として富山地方鉄道が設立されたのが1943年ですから、1930年に富山電鐵の駅として開業した当時からの物件がそのまま残っているところにありますでしょうか。


待合室付きの駅舎を出れば相対式のホーム。その端っこに構内踏切があって、どちらにもホームへ上がる何段かの階段。階段を上がったところにだけ僅かに屋根掛けのスペースがあって、そこには電車待ちのためのベンチがある。これが地鉄の古くからある駅のスタンダードな構造で、他の駅でもよく見られます。三郷の駅は無人駅なので、構内踏切の向こうには駅の裏手に抜ける出入口が付いています。


駅の構内踏切から寺田経由の立山行きカボチャ14760系。14760系は見る位置によってフロントマスクの角度が目立ったり目立たなかったりするのだけど、こんな感じで下から煽ると角度が目立って見える。角度の付き方が国鉄の80系っぽくて、ああこの車両ってある意味湘南マスクなのだな、と思う。


すっかり暮れなずむ富山平野。長い間使われて、雨と風の匂いの染み込んだ古ぼけた駅の灯りには、都会の駅にはない温かみがあるような気がする。構内踏切がカンカンと鳴って、静かに宇奈月温泉行きの電車が富山電鐵当時からの時代物の駅に滑り込んで来た。家路を急ぐ人が駅から消えた後、ふと鼻をくすぐる夕餉の香り。三郷の暮色であります。
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