青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

レトロ往く 讃岐の空は 澄み渡り。

2021年11月10日 17時00分00秒 | 高松琴平電気鉄道

(在りし日の120号@仏生山車庫)

さて、今回ラストランを迎える、いわゆる「ことでんレトロ」と呼ばれていた旧車両群。京急・京王・名古屋市交の車両が投入され、通常の営業から外れた後も4両が大事に保存され、イベント列車として都度運行が続けられてきました。どの車両も大正時代に製造された車両ですが、国の産業遺産に認定されたのもあって、90年経てもなお動態で(稼働出来る状態で)保存されていたというのが特筆すべき事ですよね。これは去年の1月末に訪問した際、仏生山の工場で普通に道路脇の側線に置かれてた120号。貴重な車両なのにこんなところに置いておくの?って驚くような扱いだったのだけど、そういうものらしい(笑)。

さて、そんなことでんレトロラストランの撮影場所に選んだのは、平木~学園通り間にあるストレート(赤丸位置)。長尾線をレトロが往復するのは朝8時~9時台。長尾線は平木の駅の手前辺りから南東~東南東へ進路を変えるため、朝の順光で列車を捉えるにはこの辺りが好都合と踏んだからです。そして、この駅の間には常満寺と妙徳寺という比較的大きなお寺がありましてね、この寺町的な風景を入れ込んで写真を撮りたかったってのもある。

これは個人的なお話になっちゃうんですけど、ことでんの三路線をパッとイメージすると、琴平線は讃岐平野に聳える甘食型の山だし、志度線はそれこそ塩屋あたりの海の碧さで、そして長尾線は寺町を往くイメージがあったんですよ。なので、レトロを長尾線らしく撮るには、ここでお寺の大伽藍を入れての一枚ってのがいいんじゃないかなあって。惜しむらくは、山門の前に立つ大銀杏の木がまだ色付きが早かった事かな。これが染まってたらまたひとしお風情があったと思うのですが。

本命機とサブ機のセッティングを済ませ、とりあえず前走りの電車で練習を何本か。ハローブリッジ号が一生懸命走って高松に早着してくれたおかげで、本番までに十分なピント合わせと構図の確認が出来たのはありがたかった。長尾線の電車は基本的に京急の旧1000形と700形で運用されていますが、行き交うどの電車を見ても撮影地へ向かう撮り鉄の皆様で盛況な模様・・・この日のフリーきっぷの売上高はどんなもんだったかいな。それこそコロナ不況を吹き飛ばす景気のいい売り上げである事を望みますが。

私が陣取った場所の後ろに、これまた長尾線の名撮影地の一つである新川の鉄橋があります。こちらにも川沿いにカメラを持ったファンがズラリと集まっておりまして、目算ざっと40人程度。最終的にはこの平木~学園通りで約100人程度が集まりました。おそらく長尾線で一番人が出たのがこっからもう少し先の白山バックだろうけど、ここも相当な人出だった事が分かります。ホント最近自分以外はいても2~3人の撮影地にしか行かないので、壮観ですわなあ。

列車の通過する時間が近付くに連れて、何とはなしに高まって来る緊張感。賑やかに喋っていた隣のおじさんたちも、急に黙って各々の配置に着きます。平木の駅に進入するレトロのタイフォンが「フォォン!」と聞こえると、誰からともなく「来たぞ~!」の声がかかる。新川の鉄橋のたもとの踏切が鳴ると、全員臨戦態勢に。こちらもファインダーを覗く目とレリーズを握る手に力が籠ります。

ことでんレトロのラストを飾るに相応しい、素晴らしい讃州の秋の青空。満員の乗客を乗せて、平木のストレートに現れた120号+300号の特別編成。ツリカケ音も高らかに、艶めくブラウンとアイボリーの車体を光らせて走り去って行く古豪コンビ。迎えた撮影者たちも、長年の労いの拍手の代わりに、嵐のようなシャッター音でその功労を称えました。

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高松へ はやる気持ちは 三千里。

2021年11月08日 17時00分00秒 | 高松琴平電気鉄道

(一夜の宿を頼む@西東京バス・ハローブリッジ号)

ことでん&伊予鉄を撮影しに四国に行く事を決めたのはひと月前くらいの話なんですが、それもこれもまずは11月3日に開催される「ことでん電車祭り」にて、開業当時からの旧型車両がとうとうラストランを迎える事になりましてね。あ、実際は去年のGW(だったかな)で引退の予定だったんですわ。でも、コロナ禍の中でイベントが開催出来ませんでね。高松琴平電気鉄道の開業以来の人気のある車両たちだったんで、ことでんもイベントの延期を繰り返して引退を先延ばしにした結果、ようやく今回開催の段取りが組めまして。4両残っていたうちの最後の2両が長尾線・琴平線を午前と午後、それぞれ運行して引退するという情報が出た瞬間、「行ってみようかなあ」という運びになったんですね。旅の始まりは前回同様、横浜駅西口から西東京バスのハローブリッジ号高松・丸亀行き。横浜駅2215ってのがいい。バスタ新宿まで行くのは面倒くさいでなあ。

久々の夜行高速バスで寝れたか・・・と言われればうつらうつらしてただけであまり眠れなかったのだけど、一晩中運転して富山に行くよりは他人にハンドルを任せていた方が全然楽だし、体の疲れ方も違うもの。ハローブリッジ号は特段のアクシデントもなく、新東名-伊勢湾岸-新名神-山陽道-神戸淡路鳴門道-徳島道-高松道を順調に走行。所定0745高松駅前を大幅に早着しての0715到着はお見事。青空の高松駅前、本当ならまずはゆっくり駅前でうどんでも啜ってから沿線に展開したいところだけど、SNSを覘けば、各地からこのラストランを目当てに多くのファンが高松に集結しているようで、長尾線に展開するのに早いに越したことはないみたい。取り急ぎショバを確保しに、築港駅に急ぎます。

大急ぎで窓口にてフリー切符を買い、築港駅から長尾行きに飛び乗る。普段なら、おそらく休日朝の長尾線の下りなんて2両編成に10人も乗ってればいい方なんじゃないかと思うんだけど、まあこの日はいるわいるわの同業者(笑)。この列車だけで70~80人くらいはいたんじゃないかというね。どいつもこいつもゴッツいバッグと三脚と長玉付けたカメラを抱え持って、既に臨戦態勢に入っておりました。偶然隣り合わせた隣の先輩、お話すると昨日の夕方に会社を定時で引けて、最終の飛行機で高松に飛んで来たらしく気合が満ち満ちている。前の吊り革に掴まっていた御仁も、有給取って高松に前日入りしているそうで、最近こういう鉄火場みたいなネタ系撮り鉄の舞台にとんとご無沙汰しているアタシにはヒリヒリするようなトークが続きます(笑)。

そんなヒリ付くトークを繰り広げながら、元京急の長尾行き電車は三木町の平木(ひらぎ)駅に到着しました。ここで10人くらいの同業者が下車・・・だいたいの目の付け所は同じなんだろうな。あとは立ち位置への陣取りが早いか遅いか。通過の一時間以上前とは言え、出足の早さは異常なほどで気遅れしてしまう。いやあ、フィーバーしてますねえ・・・みんな小走りに撮影地に向かって行くもんだから、流石に自分も早足で歩いちゃったけど(笑)。前回の訪問とこの日の光線から、どこらへんで撮るかのアタリはだいたい付けては来たんですけど、果たして自分の好みの立ち位置が残っているのか・・・

住宅街の路地を抜け、撮影地が見えてくる。おお、やっとるやっとるという感じで先客を数えてみると、ざっと20人程度。ま、関東とかJR系の大物ネタとかでもないので、50人とか100人とかいる訳じゃなかったのだけど、でもことでんで考えたらメチャクチャ多いんじゃないでしょうか。二年前のGW(だっけ?)に先に引退したレトロの2両を含めた4連での引退興行の時も凄かったらしいけどさあ。てゆうか、踏切際のいいところは先人によって既に抑えられていた。これ以上早く来ることも出来ないのでもうどうしようもないのだけど。今さら場所を移るのも電車の本数的に難しいので、予定通りここで三脚を出す事にしましょう。

天気だけは申し分ない、抜けるような讃岐の国の秋晴れ。先客さんに軽くご挨拶をしてセッティング。
この時だけのためにわざわざ持って来た三脚を据え、二丁態勢でお目当ての列車の登場を待ちます。

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四国民鉄旅遍路。

2021年11月06日 17時00分00秒 | 高松琴平電気鉄道

(青空の 玉藻城下に 水清し@高松城・玉藻公園)

9月に富山に行ってから、チビチビとここのブログでネタを卸してはおりましたが、そろそろ棚卸しするネタもなくなって参りました。そして、世の中のコロナの状況・・・まあ、世界ではまだ蔓延しておる国や地域もあるようですが、なぜか日本に関してはワクチンが効いたのか神の思し召しか、急速に感染状況が改善してたのもありましてね。そうなるってえと、そろそろ品物が捌けた私のHDDに新しいネタを仕込みたいところ。文化の日の休日に有給休暇を合わせ、香川・愛媛の四国二県に馳せ参じ、レトロ電車がとうとう引退を迎えることでんと、未訪問だった伊予鉄の沿線を放浪して参りました。天気は二日間ともまずまず上々、青空の高松市街、玉藻公園から眺めるお堀の水と瀬戸内の海の美しさよ。

そして愛媛は松山。伊予鉄電車の高浜線、終点の高浜駅にある高浜港から、瀬戸内に浮かぶ小島と夕陽の美しいコラボレーションを。今回は、ことでんと伊予鉄の比率でいえば3:7くらいで伊予鉄に力点を置いたんですが、まあ楽しめましたよね。電車と路面電車の両方が楽しめるってのは地鉄と同じなんだけど、完全に魅力では鉄道線に軍配が上がる地鉄に対して、路面電車と鉄道線の魅力がともに拮抗しているのが伊予鉄だなと。また、路線数も距離もそこそこあるんだけど、市内線も郊外電車もほぼ15分以内で列車が来るというフリークエンシーが保たれていて、非常に回りやすいのが何よりも助かりましたよね。

なかなか松山ってのは行けない場所だから、2dayのフリーパスを購入してみっちり乗り撮りして来たんですが、お釣りが出るくらいはネタが仕込めたのではないかと思います(笑)。またチビチビと、大吟醸を舐めるようにネタを卸して参りますので、ご贔屓のほどをよろしくお願い申し上げます。

 

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