今年も実家から柿が届いた。富有柿(ふゆがき)という品種で、郷里の名物だ。すでに1か月前に、平核無(ひらたねなし)という柿が届いていたのだが、これは渋を抜いた合わせ柿だ。
平核無も悪くないが、実がやや柔らか過ぎ、甘さがくどい。富有柿の甘さは、ほんのりとしていてあとを引く。シャキシャキした食感で、歯ごたえ抜群だ。
小学校高学年の頃、通学路の段々畑に「日本一 九度山の富有柿」という大きな看板が建った。誇るものなど何もないと思っていた和歌山県の片田舎に、日本一のものがあったというのは、驚きであったし嬉しくもあった。
40歳を越えた頃から、柿を好んで食べるようになった。それまで実家からもらった柿は、自分ではほとんど食べていなかったのだ。それを母に告げると「トシをとったら、柿が好きになるらしいよ」と言われてしまった。
実家には柿畑があり、家族揃って柿を取りに行き、その場で食べた記憶もある。柿が嫌いではなかったはずだ。その話を持ち出すと母は「あんたがいくらでも柿を欲しがるので、お祖母ちゃんが、これは渋柿やで、と言いきかせてたよ」と言う。
柿は消化があまり良くなく、体を冷やすので、子供が食べ過ぎては良くないとの躾だったようだ。だが、その躾がもとで30年以上もこんな美味しい果物を遠ざけていたとは。
しかし柿を敬遠していたのは、過去の刷り込み体験だけでもなさそうだ。昭和の高度成長期から、いろんな果物が栽培されたり輸入されたりするようになった。バナナ、パイナップル、メロン、オレンジ、巨峰、キウイ、ラ・フランス…。
これらの香りも甘みも強い果物に比べれば、柿はいかにも地味だ。ケーキに対する饅頭、ゼリーに寒天、クッキーに煎餅、コーヒーに煎茶。
トシのせいで素朴な味を好むようになったというのは、納得できる話だ。そういえば、最近は饅頭も好きになった。この話をすると「糖尿の気(け)では」といわれそうで、家内にも黙っているのだが。
平核無も悪くないが、実がやや柔らか過ぎ、甘さがくどい。富有柿の甘さは、ほんのりとしていてあとを引く。シャキシャキした食感で、歯ごたえ抜群だ。
小学校高学年の頃、通学路の段々畑に「日本一 九度山の富有柿」という大きな看板が建った。誇るものなど何もないと思っていた和歌山県の片田舎に、日本一のものがあったというのは、驚きであったし嬉しくもあった。
40歳を越えた頃から、柿を好んで食べるようになった。それまで実家からもらった柿は、自分ではほとんど食べていなかったのだ。それを母に告げると「トシをとったら、柿が好きになるらしいよ」と言われてしまった。
実家には柿畑があり、家族揃って柿を取りに行き、その場で食べた記憶もある。柿が嫌いではなかったはずだ。その話を持ち出すと母は「あんたがいくらでも柿を欲しがるので、お祖母ちゃんが、これは渋柿やで、と言いきかせてたよ」と言う。
柿は消化があまり良くなく、体を冷やすので、子供が食べ過ぎては良くないとの躾だったようだ。だが、その躾がもとで30年以上もこんな美味しい果物を遠ざけていたとは。
しかし柿を敬遠していたのは、過去の刷り込み体験だけでもなさそうだ。昭和の高度成長期から、いろんな果物が栽培されたり輸入されたりするようになった。バナナ、パイナップル、メロン、オレンジ、巨峰、キウイ、ラ・フランス…。
これらの香りも甘みも強い果物に比べれば、柿はいかにも地味だ。ケーキに対する饅頭、ゼリーに寒天、クッキーに煎餅、コーヒーに煎茶。
トシのせいで素朴な味を好むようになったというのは、納得できる話だ。そういえば、最近は饅頭も好きになった。この話をすると「糖尿の気(け)では」といわれそうで、家内にも黙っているのだが。