tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

古都奈良の風土を料理と器で再現!ならまち「白(つくも)」の懐石料理

2021年12月30日 | グルメガイド
先月(2021.11.25)、年上の友人であるKさんと、ならまちの「白 Tsukumo」(奈良市紀寺町968)を訪ねた。男2人の忘年会である。このお店、以前はJR奈良駅の近くにあったが2021年6月、ならまちに移転して来られた。


表に看板は出ていない。この写真はJR東海のサイトから拝借

この日は、夜の懐石コース(@16,500円)を予約していた。スタート時刻の午後6時には、日はとっぷりと暮れていた。JR東海のサイト「うましうるわし奈良」に、詳しい情報が出ていた。


前菜からスタート


晩秋のイメージが出ている、器もいい

店名は「白」と書いて「つくも」と読みます。百から一を取ると「白」に、一を引くと「九十九(つくも)」になることから。九十九と百の差はほんのわずかなのに、「そこには永遠が存在する」とご主人の西原理人さんは言います。あえて完璧ではない「九十九」にこだわるのは、古くから日本人が持つ「未完の美」という独自の美意識を大切にしたいから。その精神は、西原さんが作る料理の細部にも表れています。





東京出身の西原さんが最初に門戸を叩いたのは、京都の名店「嵐山吉兆」。10年間の修業の中で京料理の神髄はもちろん、華道・茶道・書道にも触れ、野菜の目利きに関しては土づくりから勉強したそう。次に選んだのは、軽井沢の蕎麦の名店。2年間、蕎麦懐石を学び、四季・風土・歴史を背景に料理を考えることを身に付けました。


不思議な形の赤膚焼の皿に、平城京をイメージしたきらびやかな料理が載る


なんと、この皿は正倉院宝物の「漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)」をかたどったものだった!


下に敷いた杉板には見事な木目!春日杉だろうか

その後、アメリカ・ニューヨークで初の精進料理店の初代料理長を3年、吉兆時代の恩師と働くためイギリス・ロンドンのセレブ御用達の日本料理店で3年を過ごし、奥様の故郷であり日本最古の都である奈良で独立。「奈良は1300年前、海外の人がたくさん集うメトロポリタンでした。世界の最先端だった奈良で店を開くことが、海外での経験を取り入れてやりたいという自分の思いと一致したんです」。


ここで蕎麦が出てきた。ご主人は軽井沢の蕎麦名店で、蕎麦懐石を学んだのだった

その経歴が物語るように、西原さんの料理にはその土地の良さを存分に生かしたストーリーがあります。できるだけ奈良の食材を使い、四季折々の奈良の風土・情景・文化を料理に織り込んでいきます。たとえば2月なら、梅をモチーフにした料理を作りたいと、わざわざ梅が有名な月ヶ瀬梅林へと出かけ、その土地を自らで感じて、器と料理にイメージを落とし込むという手間をかけます。


脂の乗ったサンマが、こんな古風な皿に載って出てきた

器選びも秀逸で、現代の作家ものから知人から譲り受けた年代物まで、幅広く使用します。自身の思い描く器がない場合は特注することも。今では決して作り出すことのできない古くからあるものを現代のテイストに合うように使っています。料理は月替わりのおまかせで、昼は「一汁三菜」5,500円、夜は懐石料理16,500円~。




ご飯をお代りすると、香ばしいおこげを入れてくれた

茶懐石の根源を学び、海外に出た経験が強く影響していると言う西原さん。「今は自分の視点で作ることを大切に、自分なりの解釈で料理を考え、古い文化などを取り入れていきたいです」。西原さんの奈良と料理への探求心は、これからも果てなく深く続きます。ますます目が離せなくなりそうな一軒です。


デザートは、興福寺五重塔と猿沢池をイメージされている

工夫を凝らしたお料理はもちろん、器もよく吟味され、料理とマッチしている。地元食材にこだわっておられるだけではなく、奈良の歴史や風土をうまく表現している。以前、「アコルドゥ」の料理を「プレートの上の小宇宙」と書いたが、こちらの料理はさしずめ「皿の上の古都奈良」だ。

お客さんは地元民が多いそうだが、改めて地元に誇りを持ったことだろう。皆さんも、ぜひお訪ねください!
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