tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

プレートの上の小宇宙、川島シェフの哲学が光る!アコルドゥのディナーコース

2021年12月28日 | グルメガイド
今月初め(2021.12.3)、友人と2人で久々にモード・スパニッシュ「アコルドゥ」(奈良市水門町70−1−3−1)を訪ねた。予約したのは夜のコース料理¥13,000 (税込み¥14,300)だ。開店と同時の午後6時に訪ねたが、日はとっぷりと暮れていた。



暗闇と静寂が、否が応でも期待を高める。テーブルに着いたがメニューはなく、カードに判じ物のような文言が書かれていて、店員さんがめくってくれるという仕掛けである。お店の公式HPの「Story」には、


オードブル。カードには「旬と結崎ネブカ シェリー風味の“ヌタ”」とある

アコルドゥとは単に場所や店の名前でなくその概念、世界観の総称です。その入り口であり、出口であるアコルドゥは、どこからでもその世界に思いを馳せることができます。


パンには味と香りがついていた。聞いてみると、なんと、タマネギが練り込まれていた!

物語 materials ヒューマン・テロワール
“地産地消” アコルドゥを表現する時によく用いられる言葉。単純に、その土地でできたものをその土地で食べようと言う事では無い。どこで作られたかではなく、誰がどのような思いで作ったのか、その素材が、どのような背景と時間の流れの中で生まれ育ってきたのか。そんな事に思いを寄せて、私たちは自分たちの生きる環境を愛し、人と素材、料理に向き合っています。



カボチャのスープの満月、赤いのはアマランサスの幼葉。「三笠の山に出(いで)し月かも…」


カブラは新鮮でシャキシャキしていた。ヒゲ根まで美味しい!

地に根ざしてそこで生きてゆく人々と、そこから作り出される素材。豚や牛や鶏や鴨。自分達が生み出したものが一番だと信じている。しかしながら、皆常に何かを思い、常に改良しながら昨日よりも一つ先に進む。


カードには「秋の実りと生きるモノ」




葉っぱをずらすと、こんな感じだ

情熱と優しさ、プロ意識と思いやり。料理は人そのもの。素材だけでなく、その想いまでひっくるめて頂く。


「海のミネラルと大地 冬の香り」


「大和まなのジェノヴェーゼ(大和まなを練り込んだパスタ)温かなミルク」

作り手のピュアさが、素材の美しさ、美味しさに繋がる。『アコルドゥの料理は綺麗ね』と言われる。それは素材と料理の内面に含まれているものが美しいから。人も果物も野菜も、自然もすべてに生涯がある。


「ソパ デ アホ(ニンニクのスープ)魚のロースト」、魚はキアラ(青ハタ)


「サフランのアロス(炊き込みご飯)と大和肉鶏 深まる秋と景色」トップ写真に同じ


「日本のケソ(チーズ)とパート・ド・フリュイ(果物を固めたゼリー)」

旅人 nomad
私たちはたくさんの自然や人と出会い、彷徨うように世界を見つめます。奈良に生きる自分たちと、地と時を思う皆様の心をリンクさせながら、手に届く豊かな素材をもとに料理という形でストーリーを綴ります。



「根の質感と美味しい土」


「実り、終わり行くもの」


小菓子には、大和橘の実が練り込んである

宇宙 microcosmos
アコルドゥは過去を振り返り。そして未来へ飛び立ちます。私たちの思考を表現し、無限に広がる場所。この箱は、まさに小宇宙。


大和橘は香りは良いがとても小さいので、そのまま食べるのはムリだ


夜はカフェインを控えているので、香り高いハーブティーに替えてもらった

最初からおしまいまで、息もつかせぬほどの高いレベルの料理が、次々と繰り出されてきた。地元の食材を使い、しかも普通は捨てるようなヒゲ根まで使い切る。五感を刺激し、「次は何が出てくるのだろう」「これは何を象(かたど)っているのだろうか」と、想像力もワクワク感も高まる。

アコルドゥとはバスク語で「記憶」という意味だそうだが、食べ手の記憶にシッカリと刻み込まれる素晴らしい料理である。ぜひ、お訪ねいただきたい。
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