tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

「なぜ田原本で祇園祭り?」の謎を解く!

2022年07月01日 | 奈良にこだわる
田原本町の津島神社(奈良県磯城郡田原本町祇園)では、7月の第3土日曜に祇園祭り(ぎおん祭り=田原本町民夏祭り)が行われる(2022年は7月16~17日)と申し上げると、「なぜ京都ではなく、田原本で祇園祭り?」と驚く人が多い。
※写真はすべて、祇園祭りの日に撮影した(2011.7.17)

「祇園信仰」は全国で広く行われているものであり、以前それを詳しく「どちらの祇園さん?」というブログ記事で紹介したが、「説明が詳しすぎて、余計に混乱する」と言われた。なので今日はこれを簡潔に説明することにしたい。世界大百科事典「祇園信仰」にはその全貌が紹介されているが、要点を整理すると、

1.祇園信仰は、「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」(古代インドにあった寺)の守護神とされる「牛頭天王(ごずてんのう)」(スサノオノミコトの化身)を祀り、厄除けを祈願する信仰。

2.牛頭天王は蘇民将来(そみんしようらい)の伝説と結びつき、「蘇民将来之子孫」の護符を門口にはる習俗や、「茅輪(ちのわ)くぐり」の行事(夏越の祓)となって広く日本全国に広まった。

3.祇園信仰は京都府の八坂神社や愛知県の津島神社をはじめ、牛頭天王(スサノオ)を祭神とする神社を中心に広まり、神社の名称にも「八坂」「祇園」を冠する例が多く、祭礼も多くは「祇園祭」「天王祭」という夏祭りである。




江戸時代初期、尾張国津島出身の平野長勝が田原本に藩邸を構えた。平野は尾張の津島神社の祭神・牛頭天王を信仰していたので、同じ祭神を祭る田原本の祇園社(今の津島神社)に、毎年米を寄進していたという。

1869年(明治2年)、当社は津島神社に改称した。牛頭天王を祭神とする神社は全国に多数あったが、明治に入り「天皇」の世になるとこれを憚(はばか)って、祭神をスサノオに変えていった(そのとき当社も、改称とともにご祭神をスサノオに変えたのだろう)。

当社の現在の祭神は、スサノオとクシナダヒメの夫婦神である。では最後に、世界大百科事典「祇園信仰」の全文を掲載しておく。

疫病を鎮める強い力をもつ疫病神として牛頭天王(ごずてんのう)をまつり,消厄除災を祈願する信仰。牛頭天王については天竺(インド)の祇園精舎(ぎおんしようじや)の守護神とする説をはじめ諸説があるが,要するに疫病流行など不慮の災厄にさいなまれつづけた古代の人々が,既往の信仰・伝説とも結び合わせながら信仰の対象として育成した神格である。



この神は別に〈武塔神(むとうしん)〉の名をもつが,それは《備後国風土記逸文》にみえる〈蘇民将来(そみんしようらい)〉と〈巨旦将来(こたんしようらい)〉という兄弟の伝説にもとづく。すなわち,一夜の宿をもとめた武塔神を,富裕な弟の巨旦はことわったが,貧しい兄の蘇民は粟柄(あわがら)を敷いて座席をしつらえ,粟飯を献じて心から歓待した。年をへて再来した武塔神が蘇民に茅輪(ちのわ)の呪力をもたらしたので,そのおかげで蘇民の一家は天下大疫のときにも救われたという。

この伝説はその後ひろく民間に流布し,〈蘇民将来之子孫〉と記した護符を門口にはる習俗や,〈茅輪くぐり〉の行事(夏越(なごし)の祓)となって,ながらく日本人各層に親しまれることになった。また,この神が素戔嗚(すさのお)尊と同一視されるのは,素戔嗚尊の多面的な神格がすさまじいばかりの荒ぶる力で裏づけられているのが,人々の畏敬と期待とをまねいたためであろう。

祇園信仰は,京都府の八坂神社や愛知県の津島神社をはじめとして,素戔嗚尊を祭神とする神社を中核にひろまっており,神社の名称にも〈八坂〉〈祇園〉を冠する例が多く,その祭礼も多くは〈祇園祭〉〈天王祭〉といい,夏祭である。



疫病が流行しやすい時候にかかわる。この疫病の発生の原因として〈怨霊(おんりよう)〉のたたりが想定され,それを慰憮し鎮める営みがとくに重大視されるようになったのは,9世紀後半から10世紀にかけての平安京でのことであり,その意識の深まりが〈御霊(ごりよう)信仰〉の弘通をもたらすとともに〈御霊会(ごりようえ)〉という新しい宗教行事を生んで,各地に伝播した。

地方住民の生活の中で育成されてきていた牛頭天王信仰が都市生活者に受容され,信仰形態・行事ともに都市的感覚によって洗練されつつ,再び地方住民の世界に帰って根を張りなおしたのである。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 見事な朝引き鶏が続々! 近鉄... | トップ | 鹿の食害で、吉野山「七曲坂... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

奈良にこだわる」カテゴリの最新記事