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簡潔に説明できる「パターン」「スタイル」を身につける/奈良新聞「明風清音」第40回

2020年06月25日 | 明風清音(奈良新聞)

以前(2020.6.1)、当ブログに「説明力を鍛える55の方法」という記事を書いた。齋藤孝著『頭のよさとは「説明力」だ~一目置かれる知的な説明力の伸ばし方』(詩想社新書 )のレビューとして書いたのだが、わりと反応が良かった。「さっそく注文した」「部下に推薦した」というお声をいただいたのだ。

NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の講師のなかにも「説明力」の低い人がいるし、私自身「ゆうドキッ!」(奈良テレビ放送)に出演するようになって、短い時間(秒刻み)で話すことの難しさを痛感していたので、この本はとても参考になった。ちょうど6月18日(木)には奈良新聞「明風清音」のローテーションが回ってくるので、「では新聞でも紹介してみよう」と思いついた。

字数制限も締め切りもない個人ブログと新聞連載とは大きく違うので、特に文字数を切り詰めるのに苦労したが、何とか掲載することができた。見出しは《「説明力」向上のコツ》。以下「明風清音」の全文を紹介しておく。

奈良まほろばソムリエの会では原則として毎年1回、会員向けに講師養成講座」を開講している。講演のできる会員を育成し、歴史講座などに講師として出向いてもらうためである。養成講座の講師は私が務めている。 

そこで私はいつも「知識、パワーポイントを使う技術、話す技術(説明力)」が大切ですよと申し上げている。しかし最初の2つは経験さえ積めば向上するが、なかなか「説明力」が上達しない人がいる。そんな人にどう助言したものかと悩んでいたが、いい本を見つけた。齋藤孝著『頭のよさとは「説明力」だ』詩想社新書。以下、本書の要点を紹介する。

▼時間感覚を身につける
説明の下手な人はわずか1分間に5回も6回も「ええと」を連発する。これは説明を時間感覚と結びつけていないから。常に時間を意識することが大切で、齋藤氏はそのためにストップウオッチを持ち歩いているという。

▼究極の説明は「ひと言」
説明が下手な人はポイントを絞ることが下手。常に「ワンフレーズで説明できないか」「ポイントを3つに絞れないか」と考える習慣をつけよう。

▼だめな説明とは
だめな説明の代表例は「分厚いマニュアル」。情報が過多で、その優先順位も不明確で、情報の羅列でしかない。

▼「現物」が最強の武器
説明の場に現物を持ち込むと俄然、威力を発揮する。私も講演に、埴輪や三角縁神獣鏡のレプリカを持参することがある。

▼良い説明の基本構造とは
①ひと言で言うと〇〇です(本質を要約し、キャッチコピー的に表現)。②詳しく言えば〇〇です(要約したポイントを最大で三つ。重要度や、聞き手の求める優先順位を加味する)。③具体的に言うと〇〇です(エピソード、自分の体験などを例示)。④まとめると〇〇です(説明の最終的なまとめ)。

▼三色ボールペンを活用する
資料として本を読むときは、三色ボールペンで傍線を引く習慣づけを。絶対外せない要所には赤、まあ重要なところには青、主観的に面白いと思ったところには緑。私もやり始めたところ、あとで振り返る時、とても楽だ。

▼ファスト情報とスロー情報
まずは映像や画像でざっと見てもらい(ファスト)、あとで文字などで補足する(スロー)。これらの相乗効果で理解が進む。

▼「通説BUT」で説明する
①「今まではこのように理解されていましたが、実は〇〇です」(通説BUT)②「それはこういうことです」(詳しい説明、ポイントは最大で3つ)③「たとえば〇〇です」(具体例、エピソード、データなど)④「つまり、こうなのです」(全体のまとめ)

▼最後は講師の「人間力」
齋藤氏は「人からの説明には、インターネットから受ける情報とは違う強みがあります。それはその説明をする人の感情や情熱、生き生きとした部分が伝えられるというところです」「説明の技術と、さわやかで誠実な雰囲気という人柄がセットになったとき、人の心まで動かしてしまう上手な説明になるのだと思います」と書く。このくだりには膝を打った。説明の技術だけでなく、最終的には講師の誠実さや人間力が問われるのだ。

齋藤氏は、人生には「ミッション、パッション、ハイテンション」が大切とも書く。使命感と情熱を持ち、しかも明るく前向きに取り組む、これは人生にも仕事にもボランティア活動にも、欠かせないことだ。
説明力が向上し、人間力を高めるヒントにもなるこの本、ご一読をお薦めしたい。



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