エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

日本画家 小野竹喬

2009-11-25 | 文芸
    【秋 小野竹喬】

先日の毎日新聞の余録で、日本画家、小野竹喬を知った。いま、大阪市立美術館で、「生誕120年 小野竹喬展」が開かれている。彼が芭蕉の心境を追った一連の「奥の細道句抄絵」について書かれていた。

 日本画家といえば、東山魁夷、平山郁夫が馴染みだった。いつか桜の季節に東京の山種美術館で奥村土牛作品を鑑賞したこともあった。長野市の東山魁夷記念館へは静かに雪の降る日だった。そうそう、いわきに単身赴任中には隣町の茨城天心記念五浦美術館へも何度か足を運んだ。

ネットで、初めて知った小野竹喬について調べた。
「小野竹喬(おの ちっきょう:1889~1979)は、近現代日本画を代表する日本画家。14歳から89歳にいたる75年間の画業を通して、日本の自然の美しさを描き続けました。
竹喬芸術のかけがえのない清らかさ、柔らかさ、温かさ、それは多くの人が語るように竹喬の温厚で誠実な人柄によって生まれたものです。」などとあった。
 
初めて見る作品は、何ともいえない独特な絵でほのぼのとした、独特な気品が感じられすっかり気に入った。出身の笠岡市に笠岡市立竹喬美術館があることを知ったが、ちょっと遠い。いつか訪ねてみたいと思っている。


【奥の細道句抄絵より 荒海や佐渡に横たふ天の河 】

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余録:おくのほそ道 毎日新聞(2009.11.23付)
 元禄2(1689)年夏、みちのくの旅を続ける松尾芭蕉は日本海岸の名勝で足を止めた。浅い海に無数の小島を浮かべた浜辺で、ひそやかに咲く薄紅色の花を、古代中国の伝説の美人が目を閉じた姿に見立てて<象潟(きさかた)や雨に西施(せいし)がねぶの花>の一句を残す▲現在の象潟(秋田県にかほ市)は、江戸時代後期の大地震で地盤が隆起し、平野に小山が点在するひと味違う風景に変わっている。1975年、この地を訪れた日本画家が、旅の途中で見かけたネムノキに発想を得て、芭蕉が見たはずの、雨に煙る幻の海景をよみがえらせた▲大阪市立美術館で開かれている「生誕120年 小野竹喬(おのちっきょう)展」で出合ったこの作品に、心ひかれる。「奥の細道句抄絵」連作の一点だ。別の一点、<あかあかと日は難面(つれなく)もあきの風>は、ぎらつく夕日が空を朱に染め、すすきの野に濃い闇が迫る。澄み切った空気感に魅了される人も多かろう▲若い日の竹喬はセザンヌに傾倒し、立体的な構図と鮮やかな色遣いを取り入れて、自然を切り取ってみせる勢いで新しい風景画に挑戦した。だが、日本画の技法や画材で表現し切れない壁にぶつかり、満足しなかったという▲「虚心になると自然は近づいてくる」。竹喬が語っている。自然に身をゆだねていれば、筆を誘うささやきが聞こえてくるのか。芭蕉の心境を追った一連の作品は、年ごとに無駄をそぎ落として陰影を深めた画家の仕事の総決算といえる▲大阪展は12月20日まで。その後岡山県・笠岡市立竹喬美術館、東京国立近代美術館を回る。竹喬はさまざまな日本の四季を描き残した。自分だけの心に刻む作品が、きっと見つかるだろう。
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