エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

ならぬ事はならぬものです

2006-02-08 | 教育を考える
  
 先日、国会予算委員会のテレビ中継で質問者が会津藩の什の掟を挙げていた。
最近の、耐震偽造事件、ライブドア事件、天下り官僚の談合事件などに共通するものは、恥を知らない行為である。金儲け主義のホテルの弱いものいじめはも情けなくなる。
 これら卑怯な振る舞いを例に、今の教育に什の掟「ならぬものはならぬ」の大切さを確認していた。
 本棚から「日新館童子訓」を取り出し、什の教えを確認してみた。会津藩5代藩主の松平容頌(かたのぶ)がつくった幼少年期の修身書である。
 これは人として生きる基本、時代が変わろうと変わらない不易の教えであろう。

 ふと、自分の名誉のため、死を選んだ郡長正を思った。
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郡長正
《 明治のはじめ豊津小笠原藩(福岡県)に留学。ある日郷愁を覚えた長正は
  母の手紙に食べ物が口に合わないと書いた。後に母より届いた戒めの手紙
  を落としてしまい、拾った小笠原藩士の子弟に大衆の面前でののしられた。
  長正は会津武士の屈辱をはらそうと藩対抗剣道大会で完勝、その後切腹し
  て果てた。時に16歳の若さだった。 》【www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/j/yukari/jinbutsu/knagamasa.html】参
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 今朝、犬の散歩中に、他人様の犬の落とし物まで拾った。ゴミステーションに散乱する生ゴミを素手でかたずけた。些細なことかも知れないが、私は小さなゴミも捨てない。人に迷惑をかけないことは社会生活の基本だ。でも、人の本性は悪なのかと疑いたくなる。されば、悪を理性で正すのが教育なのだろうか。恥ずかしいという気持ちが欠落しているのだと思う。

  会津藩幼年者 什の掟
      一、 年長者の言うことに背いてはなりませぬ。
      二、 年長者には御辞儀をしなければなりませぬ。
      三、 虚言を言ふ事はなりませぬ。
      四、 卑怯な振舞いをしてはなりませぬ。
      五、 弱い者をいじめてはなりませぬ。
      六、 戸外で物を食べてはなりませぬ。
      七、 戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
     ◎ ならぬ事はならぬものです。

教育を語る時、不易流行が言われる。教育改革も知育偏重でなく、まず、他人を思いやる気持ち、豊かな人間性をめざすものでなければならないと思う。

今年の歳の神

2006-02-07 | 日々の生活
   
 吹雪の最中、今年も八幡町内の歳の神が行われた。年男の点火で、それぞれの願いを込めた火祭りがはじまった。御燈明から燃え上がった火はたちまち夜空を焦がし、吹き付ける雪を幻想的に照らした。

 清清しい気持ちで一年の無病息災を祈った。朝方からの新雪と厳しい寒さが小正月の伝統行事をいっそう見事に演出してくれた。新年の挨拶を交わしながら、火が少し収まった頃を見計らいお餅、スルメが思い思いの方法で火にかざされた。
 最近は、歳の神もいろいろな事情でやらなくなった町内も多いようだが寂しいことだ。ここ十数年来、田畑が極端に減った町内だが、まだ萱や場所など環境に恵まれている。でもこれ以上は都市化してほしくはない。
 妻の里信州松本、安曇地方では三九郎と呼ばれ、今も盛大に継承されていると言う。これからも子供たちの生きた地域の生活体験場面「歳の神」がいつまでも続いてほしいと思う。

今、春を待つ雪の庭

2006-02-06 | 自然観察

《ハクモクレン》                   
 立春の朝は大雪、会津地方は寒さ厳しく、まさに早春賦に歌われる通り「春は名のみの風の寒さよ」で、庭のどこにも春はなかった。
でも今朝は一転、朝から風もなく日差しは春を思わせ、ふわふわと木々の芽を包んだ綿のような新雪がキラキラ光っていた。
 わずかな時間にも、庭へ出てファインダーを覗いている。朱色のナンテンの葉や実に淡い雪がとても美しく、秋の終わりに裸になったウメやケヤキ、トウカエデが、それぞれに個性的な芽吹きを準備している。そして、ハクモクレンの堅いつぼみの小さな息使いが聞こえるようだった。
 静かに落ちる雪をながめながら、程なく巡る春の情景を思い浮かべた。雪が消え、枯れ葉のじゅうたんの間からすべてが萌えいずる山道に、マンサクが咲き、越冬したミヤマセセリやヒオドシチョウ、ルリタテハが舞う。
 しばし、冬から春へ移ろいゆく季節の美しさに魅せられたいと思っている。


《サンショウ》


教育は難しい

2006-02-05 | 教育を考える
 教育は難しい。自分も子ども3人を試行錯誤で、夢中で育ててきた。それぞれに、オンリーワンの個性的な1個の人格に育ったと思う。カントは「人間は教育によって初めて人間になる」と言ったという。いつも教育は、本当に難しい。

 昨今の青少年による事件報道を見るとき、過剰な物質文明社会が子供たちに軽薄、安逸な日々を余儀なくしているような気がしてならない。この不安を取り除くには子供たちに真に豊かなグローバルな社会環境を取り戻さなければならないと考える。科学技術の世紀に残された「環境」と「人間」という時代的課題の解決は、やはり子供たちの教育に求めなければならない。
学力論争とも関わるが、活字中心の書斎科学よりも、野外で身近な本物の自然にふれる体験的学習環境こそが大切である。自然に親しみ、学び、守ると言ったプロセスから人として当たり前の自然観や人生観が育まれるはずだからだ。
 炎天下の畑のニラの花に吸密する、あの敏速なヒメアカタテハの翅の模様があまりにも美しかった。目的のクヌギ林では、ゴマダラチョウやキマダラヒカゲが樹液に群がり、時にはオオムラサキが悠然と飛び交っていた。半世紀も前の虫採りに明け暮れた日々が今でも鮮明によみがえってくる。


人間このすばらしいもの  

2006-02-04 | 教育を考える
 大雪の朝、娘の勤務する「つるが保育園」を訪ねた。
娘から講演会の案内を受け、娘の職場の様子も見たい気持ちがあり、
妻と楽しみに出かけた。
 日頃の子どもたちの生活の様子を垣間見ることができた。どの部屋もにぎやかで、明るく、活発な雰囲気の保育参観が行われていた。
 以下は講演の要旨である。
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 演題 「人間このすばらしいもの -私の出逢った子どもたち- 」
 講師 水戸 昇 教育相談所長  喜多方市字1丁目4560-4 
                     tel(0241)22-0715
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【 内容概要 】
○世界に一つだけの花 全員で合唱で講演が始まる。
   No.1にならなくてもいい  もともと特別なonly one
   地球上に63億人それぞれの生き方、咲き方がある。
○みんなができる楽しい子育ては、楽しい家庭から。
 育児は育自  共に成長
○幼児期は人間性の土台づくり、そして思春期への影響が大。
○乳幼児期の子育てで大切なこと
   よく遊ぶ子ども  よく食べる子ども  よく寝る子ども
○みんなが持っている可能性
 これまで出逢った、可能性に挑戦した生徒たちの生き様を紹介。
  ○親は、長い目で子どもの才能が育つのを見守る良き理解者であれ。
エジソン、向井千秋、大江健三郎を例に
  ○みんなが持っている可能性について(多くの本を紹介)
  紹介図書 「不良品」      宇梶剛士著  ソフトバンク
       「運命の顔」     藤井輝明著  草思社
       「蛇にピアス」 金原ひとみ著
       「アンジュール(ある犬の物語)」ガブリエ・バンサン著 BL出版
       「いのちのまつり」  草場一壽文   サンマーク出版
       「入れ墨牧師のどん底からの出発法」 鈴木啓之著 講談社
       「小学校中退 大学卒業」 花柳幻舟著  明石書店
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・講演は、歌あり、音楽あり、体操ありで、終始講師のパワーに圧倒された。
 沢山の資料をもとに、机上でない、自らの教職体験に基づき築き上げられた
 教育論を聞くことができた。あらためて、幼児期が本当に重要な時期である
 ことを認識させられた。私自身、毎日接する2人の孫(3歳半、1歳)に、
 素直に、明るく育って欲しいと願わずにはいられない。

あり余る時間に冬の庭を楽しむ

2006-02-01 | 自然観察
《雪に鮮やかなアオキの実》

 静かな雪の庭に木漏れ日がやさしい。一回り小さくなった軒先のつるし柿が美味しそうに熟してきた。命ある小さな虫たちはいつしか雪の季節に埋もれ、厳寒の静寂が巡ってきた。寒さに凛とした赤紫のサザンカ一輪を手折り、家に入った。
 ツバキ、ジンチョウゲ、センリョウなど緑の葉は、雪に埋もれ寒さに耐えていた。ニシキギやアオキの橙色の実がはじけ、雪に映えてとても美しい。いつもの変わらない庭の木々だが、朝に夕に、雨の日、雪の日に、そのときどきの一瞬一瞬が美しく感じられる。
 雪の降る前にいくつもの鉢を部屋に取り込んだ。廊下から書斎の奥まで射し込む冬の陽を追いかけて鉢を移動することは実に楽しい。暖かな書斎から、巡った厳寒の真っ白な別世界を眺め、静かに、緩やかに流れる雪の季節を楽しみたいと思っている。
 あり余る自分の時間、冬の庭を楽しむ贅沢が有難い。


《紅いニシキギの実》