■梅雨入りしたものの…■
今年の初釣行は年券を購入した新しい川に向かうつもりだったのだが、梅雨入直後の晴天続きで釣行計画が狂っていた。
透明度の高い川に生息する渓流魚は、雨が降らない状況が続けば水が澄みすぎる上に水量が減り、魚食する鳥達から水中が丸見えになるために警戒心が強まって食いが確実に落ちる。特に上空が開けている川はその傾向が顕著になる。従って、当初に予定していた新しい川はキビシそうな条件が予想されたので、早々に候補から外れてしまった。
一方、この時期、いつも頼みにしていた高原川も遅れていた雪代が出る時期になっていたし、ボクが好きな本流域は晴れでは厳しそうだ。あれこれ、さんざん迷った挙げ句、結局はもう少し後に釣行するつもりだった富山県下の久婦須川へ向かうことになった。
■久婦須川■
兵庫県から遠征する身にとって6月の富山県釣行は辛い。何しろ到着するまで4時間近くかかるし、朝4時頃には周囲が明るくなっている。夜10時頃に自宅を出発すると、車中での睡眠時間が2時間になり、釣りを終えてからはまた4時間かけて戻らなければならないのだ。それでもボクにとっては相性の良い川であることには変わりないので、ついつい足繁く(ボクの釣行ペースでは)通うことになる。
午前2時前に現地に到着。その後は予定通り?2時間の睡眠をとった後、河原へと降りる。そこまでは藪をこいでゆかなくてはならないが、昨今話題の真ダニとりつかれることもなく、無事に到着する。
■ピンチョロ■
ボクのように都市部に暮らす者にとって、渓流釣りはマイナーな釣りなので、近辺の釣りエサ店で事前購入しようにも、限られた店に在庫があるミミズやブドウ虫といった市販品以外のエサはほとんど手に入らない。最も渓魚の食いが良いとされるのは川虫だが、これらを事前購入するには、岐阜県郡上市あたりに立ち寄って自販機を利用する手もあるが、そこに立ち寄って東海北陸道経由で富山に向かうのはプラス1時間のロスがあるので、睡眠時間が更に削られる。
「現地調達すればイイじゃないか」という意見もあるだろうが、現場に詳しい地元在住者と違って川虫の付き場所をそんなに把握しているわけではなく、川に入るタイミングによって極端に量が少なかったり、サイズが小さかったりで、ウマく手に入らないことがよくある。
このようなもどかしい状況を打開するために川虫の通販を時折利用していたのが、これも季節限定的な要素があって、日持ちのするキンパクが採れる4月中旬頃までしか手に入らないことが多かった。そんな中見つけたのが、岩手県から通販で取り寄せるピンチョロで、今回はこれを利用し、久婦須川に持ち込むことになった。
■実釣スタート■
川に入って最初に感じた印象は例年より冷たく思える水温で、これにより、何となく当日の展開がキビシイものになる予感が漂っていた。
その実、投入を開始してもアタリは簡単に出る様子はなかった。これは、水温低下に加えて釣行日が日曜だったために、恐らく前日に散々叩かれていたことと、雨後4日目だったことなど悪条件が重なっていたためであろうと思うが、いずれにせよ、食い渋りを想定した粘りの攻めが必要と感じざるを得なかった。
そのため、実釣がスタートして以降は持参した市販エサとピンチョロを始め、現地採取したクロカワムシやオニチョロといった川虫とをローションをさせ、渓魚の目先を変えることで何とかアタリをとろうと試みていた。
その結果、市販エサに出るアタリはほとんど無く、川虫類にしか、それも一種類につき一回程度しか反応がなかったし、食い込みが悪くてハリに乗らないことも多いという傾向を初期段階で掴んでいた。
そのような傾向であることから、普段なら既に移動しているハズの時間帯でのアタリを捉えて、ポツポツとヤマメを拾ってゆく。しかも嬉しいことに、ピンチョロにもちゃんとアタリがあって、当初の区間では最大サイズがこのエサに反応してくれた。
そこからまた更に粘って「いくら何でも、もう出ないだろう」と区間ラストのつもりで流してみたのだが、意に反して反応があって、アタリと共に”ゴンッ”と衝撃が走る大型ヤマメらしき魚が竿を大きく曲げっていった。たが、衝撃後に締め込むこと僅か数秒でハリが外れて逃してしまった。もっともこの時点では「流し終わる最終部分でアタリを捉えたために、マトモにアワセることができなかったこと」が、ハリ外れの原因だと思っていたのだが…。
■ハリスの号数を上げる■
その後の区間も粘り腰を発揮しながらポツリポツリとアタリを捉えて釣果を積み重ねてゆくが、昨年同時期と水量が変わらないものの、流筋が変わってポイントとして成立しなくなっているところがほとんどで、その意味でも苦労を重ねた。そのうえ、誰の目にもポイントと判断できる箇所でのアタリはほぼゼロの状況で、先行者は居ないようだったが、いわゆる竿抜け部分でしかアタリが出なかった。
そして水温の影響は本当だったのか、釣り上がるにつれて、より低水温に強いイワナのアタリが増え始めた。
しかし、これすら簡単に出るわけではなく、じっくり時間を掛けて丹念に探った結果だったが、嬉しいことにその努力が実って徐々にサイズアップしてゆく。
脱渓までの中間地点に差し掛かっても、ボクにとっては本命である、ヤマメのアタリは相変わらず渋くて、掛けることすら苦労する状態だった。そこで、食い渋り対策として「ハリスを落とそうか?」という判断に一瞬向かいかけたのだが、それよりもアタリが出た瞬間に、いつもより強めに即アワセを入れることを優先し、ハリスをそれまでの0.3号から逆に0.4号まで上げてアワセ切れを防ぐ作戦を思いついた。これで魚が出なければ細くすれば良いまでのことだ。
有り難いことにハリスの変更後もアタリの数はそれまでと変わりはなかった。そして渋いアタリを掛けアワセて何匹かのヤマメを釣った後に、ようやく判り易い大きなアタリを目印が捉えたが、その様子から当日の状況下では、すぐに「ヤマメではないな」と判断できた。案の定クネクネとした抵抗感はヤマメとは別物で、引きにスピードがない。号数を上げていたハリスのお陰もあって強気のやり取りで無事タモに納めたのは、今シーズン初めての尺越えのイワナであった。
■頻発するハリ外れ■
尺イワナの後は、更に釣り上がっていったが、相変わらず、大場所や当たり前のポイントではアタリが皆無の状態が続いていた。そんな中であっても集中力を切らさずに即アワセで対応し、何とかゲット数を伸ばしつつ、最終区間まで到達した。
ここまでに大型ヤマメらしき、アワセた後に衝撃が来るような渓魚には四度遭遇していたが、四度共にハリ外れで逃してしまった。それら全てにおいて、一匹目と同じ「シツコク粘って、もう出ないだろう」と思い始めた頃のアタリであったし、それを外した後は他に何も食ってこないというパターンまで同じであった。そしてこの状態は、ハリの号数を上げるといった工夫をしても好転することはなかった。要するに、ボクにとっては努力の及ぶ範囲外の超食い渋りと解釈するしかなく、尺越えのヤマメとの出会いは諦めざるを得ない状況だった。
■全ては雨後から■
通常なら午前中の半日もあれば到達する区間だったが、脱渓した時刻は午後4時を回っていた。かなり時間は掛かったが、それでも何とかほどほどの釣果を得ることができたことは幸いだった。
食い渋り傾向に対抗して、粘ってアタリを出し、それを即アワセで確実に掛ける方法を今回は学んだ。とは言うものの、上述した大型や、それ以外を含めてヤマメらしき渓魚のハリ外れ回数は多く、これは相当に悔しかった。こんな時「逆に細ハリスにすればもっとアタリがあって、楽に釣れたかも?」と思うのは釣り人としてのスケベ心であるが、基本的な決めごと以外は「逆もまた真なり」で、その可能性があることは釣りの奥深さでもある。
そうやって当日の思いを再確認している今だが、気付けば昨年あたりから自身の久婦須川での釣果は下降気味であり、それに加えて川の様子が悪い方に変化していることも気になっいている。この点については次回以降の釣行でキッチリと確かめてみたいことがあるのだが、「その前に梅雨らしく、ちゃんとした雨が降って一旦川がリセットされなければ何も始まりそうにない。」と思っていた。そんな矢先、台風4号の接近と活発化した梅雨前線によって、状況は好転し始めたようである。梅雨明けまでにそのチャンスを逃さないようにしたいのだが…。
今年の初釣行は年券を購入した新しい川に向かうつもりだったのだが、梅雨入直後の晴天続きで釣行計画が狂っていた。
透明度の高い川に生息する渓流魚は、雨が降らない状況が続けば水が澄みすぎる上に水量が減り、魚食する鳥達から水中が丸見えになるために警戒心が強まって食いが確実に落ちる。特に上空が開けている川はその傾向が顕著になる。従って、当初に予定していた新しい川はキビシそうな条件が予想されたので、早々に候補から外れてしまった。
一方、この時期、いつも頼みにしていた高原川も遅れていた雪代が出る時期になっていたし、ボクが好きな本流域は晴れでは厳しそうだ。あれこれ、さんざん迷った挙げ句、結局はもう少し後に釣行するつもりだった富山県下の久婦須川へ向かうことになった。
■久婦須川■
兵庫県から遠征する身にとって6月の富山県釣行は辛い。何しろ到着するまで4時間近くかかるし、朝4時頃には周囲が明るくなっている。夜10時頃に自宅を出発すると、車中での睡眠時間が2時間になり、釣りを終えてからはまた4時間かけて戻らなければならないのだ。それでもボクにとっては相性の良い川であることには変わりないので、ついつい足繁く(ボクの釣行ペースでは)通うことになる。
午前2時前に現地に到着。その後は予定通り?2時間の睡眠をとった後、河原へと降りる。そこまでは藪をこいでゆかなくてはならないが、昨今話題の真ダニとりつかれることもなく、無事に到着する。
●薄暗い中、藪こぎで河原を目指す●
■ピンチョロ■
ボクのように都市部に暮らす者にとって、渓流釣りはマイナーな釣りなので、近辺の釣りエサ店で事前購入しようにも、限られた店に在庫があるミミズやブドウ虫といった市販品以外のエサはほとんど手に入らない。最も渓魚の食いが良いとされるのは川虫だが、これらを事前購入するには、岐阜県郡上市あたりに立ち寄って自販機を利用する手もあるが、そこに立ち寄って東海北陸道経由で富山に向かうのはプラス1時間のロスがあるので、睡眠時間が更に削られる。
「現地調達すればイイじゃないか」という意見もあるだろうが、現場に詳しい地元在住者と違って川虫の付き場所をそんなに把握しているわけではなく、川に入るタイミングによって極端に量が少なかったり、サイズが小さかったりで、ウマく手に入らないことがよくある。
このようなもどかしい状況を打開するために川虫の通販を時折利用していたのが、これも季節限定的な要素があって、日持ちのするキンパクが採れる4月中旬頃までしか手に入らないことが多かった。そんな中見つけたのが、岩手県から通販で取り寄せるピンチョロで、今回はこれを利用し、久婦須川に持ち込むことになった。
●岩手県産のピンチョロ●
■実釣スタート■
川に入って最初に感じた印象は例年より冷たく思える水温で、これにより、何となく当日の展開がキビシイものになる予感が漂っていた。
その実、投入を開始してもアタリは簡単に出る様子はなかった。これは、水温低下に加えて釣行日が日曜だったために、恐らく前日に散々叩かれていたことと、雨後4日目だったことなど悪条件が重なっていたためであろうと思うが、いずれにせよ、食い渋りを想定した粘りの攻めが必要と感じざるを得なかった。
そのため、実釣がスタートして以降は持参した市販エサとピンチョロを始め、現地採取したクロカワムシやオニチョロといった川虫とをローションをさせ、渓魚の目先を変えることで何とかアタリをとろうと試みていた。
その結果、市販エサに出るアタリはほとんど無く、川虫類にしか、それも一種類につき一回程度しか反応がなかったし、食い込みが悪くてハリに乗らないことも多いという傾向を初期段階で掴んでいた。
●現地採取のオニチョロ●
そのような傾向であることから、普段なら既に移動しているハズの時間帯でのアタリを捉えて、ポツポツとヤマメを拾ってゆく。しかも嬉しいことに、ピンチョロにもちゃんとアタリがあって、当初の区間では最大サイズがこのエサに反応してくれた。
●ピンチョロで釣った25cmのヤマメ●
そこからまた更に粘って「いくら何でも、もう出ないだろう」と区間ラストのつもりで流してみたのだが、意に反して反応があって、アタリと共に”ゴンッ”と衝撃が走る大型ヤマメらしき魚が竿を大きく曲げっていった。たが、衝撃後に締め込むこと僅か数秒でハリが外れて逃してしまった。もっともこの時点では「流し終わる最終部分でアタリを捉えたために、マトモにアワセることができなかったこと」が、ハリ外れの原因だと思っていたのだが…。
■ハリスの号数を上げる■
その後の区間も粘り腰を発揮しながらポツリポツリとアタリを捉えて釣果を積み重ねてゆくが、昨年同時期と水量が変わらないものの、流筋が変わってポイントとして成立しなくなっているところがほとんどで、その意味でも苦労を重ねた。そのうえ、誰の目にもポイントと判断できる箇所でのアタリはほぼゼロの状況で、先行者は居ないようだったが、いわゆる竿抜け部分でしかアタリが出なかった。
●昨年とは全く違う流れ●
そして水温の影響は本当だったのか、釣り上がるにつれて、より低水温に強いイワナのアタリが増え始めた。
●25cmのイワナ●
しかし、これすら簡単に出るわけではなく、じっくり時間を掛けて丹念に探った結果だったが、嬉しいことにその努力が実って徐々にサイズアップしてゆく。
●28cmのイワナ●
脱渓までの中間地点に差し掛かっても、ボクにとっては本命である、ヤマメのアタリは相変わらず渋くて、掛けることすら苦労する状態だった。そこで、食い渋り対策として「ハリスを落とそうか?」という判断に一瞬向かいかけたのだが、それよりもアタリが出た瞬間に、いつもより強めに即アワセを入れることを優先し、ハリスをそれまでの0.3号から逆に0.4号まで上げてアワセ切れを防ぐ作戦を思いついた。これで魚が出なければ細くすれば良いまでのことだ。
有り難いことにハリスの変更後もアタリの数はそれまでと変わりはなかった。そして渋いアタリを掛けアワセて何匹かのヤマメを釣った後に、ようやく判り易い大きなアタリを目印が捉えたが、その様子から当日の状況下では、すぐに「ヤマメではないな」と判断できた。案の定クネクネとした抵抗感はヤマメとは別物で、引きにスピードがない。号数を上げていたハリスのお陰もあって強気のやり取りで無事タモに納めたのは、今シーズン初めての尺越えのイワナであった。
●32cmのイワナ●
■頻発するハリ外れ■
尺イワナの後は、更に釣り上がっていったが、相変わらず、大場所や当たり前のポイントではアタリが皆無の状態が続いていた。そんな中であっても集中力を切らさずに即アワセで対応し、何とかゲット数を伸ばしつつ、最終区間まで到達した。
ここまでに大型ヤマメらしき、アワセた後に衝撃が来るような渓魚には四度遭遇していたが、四度共にハリ外れで逃してしまった。それら全てにおいて、一匹目と同じ「シツコク粘って、もう出ないだろう」と思い始めた頃のアタリであったし、それを外した後は他に何も食ってこないというパターンまで同じであった。そしてこの状態は、ハリの号数を上げるといった工夫をしても好転することはなかった。要するに、ボクにとっては努力の及ぶ範囲外の超食い渋りと解釈するしかなく、尺越えのヤマメとの出会いは諦めざるを得ない状況だった。
●当日最大27cmのヤマメ●
■全ては雨後から■
通常なら午前中の半日もあれば到達する区間だったが、脱渓した時刻は午後4時を回っていた。かなり時間は掛かったが、それでも何とかほどほどの釣果を得ることができたことは幸いだった。
食い渋り傾向に対抗して、粘ってアタリを出し、それを即アワセで確実に掛ける方法を今回は学んだ。とは言うものの、上述した大型や、それ以外を含めてヤマメらしき渓魚のハリ外れ回数は多く、これは相当に悔しかった。こんな時「逆に細ハリスにすればもっとアタリがあって、楽に釣れたかも?」と思うのは釣り人としてのスケベ心であるが、基本的な決めごと以外は「逆もまた真なり」で、その可能性があることは釣りの奥深さでもある。
そうやって当日の思いを再確認している今だが、気付けば昨年あたりから自身の久婦須川での釣果は下降気味であり、それに加えて川の様子が悪い方に変化していることも気になっいている。この点については次回以降の釣行でキッチリと確かめてみたいことがあるのだが、「その前に梅雨らしく、ちゃんとした雨が降って一旦川がリセットされなければ何も始まりそうにない。」と思っていた。そんな矢先、台風4号の接近と活発化した梅雨前線によって、状況は好転し始めたようである。梅雨明けまでにそのチャンスを逃さないようにしたいのだが…。