■大失速■
解禁期間の終盤に入った玄達瀬だが、稀に見るブッ飛び潮続きで、各船長は苦労しているようだ。
但しそのブッ飛びは上層だけの現象であり、底層はそんなに動いていない事も多いので対処が更に厄介になっている。ブリ族とは違ってヒラマサ、特にその大型は、上層の潮況が気に入らない場合はワザワザ浮上してエサを追わないし、産卵&放精時期に入る前後はその傾向が顕著になる。
したがって、通常の攻略法でゲットするのは難しくなってくるのだが、それでも周囲のライバル数が多ければ中には浮上する個体もあるので、運良くゲットの場合もある。だが今年の玄達瀬では中盤以降「ヒラマサたちはどこへ行ったの?」と思えるほどの極端な失速状態で、それも殆ど望めない状況が続いている。
「ならば攻略法を試してみよう!」とばかりに挑んだ釣行だったが…。
■ケチのつけ始め■
思えば釣り場へのアプローチから苦労があった。三度にわたって中止が続き、ようやく釣行可能となったのだが、北陸地方を襲った大雨の影響で道路網が寸断されて岐阜から中部縦貫道経由でしか福井入りできず、疲労困憊の状態で乗船場に到着していた。
「それでも釣りという遊びが出来るだけで幸せだ.。」とばかりにいつもの晴海丸さんに乗船し、現地へと向かったが、ここで忘れものに気付いた。この炎天下の中で帽子を車内に置き忘れてしまったのだ。
「熱中症になったらどうしよう、初っ端からロクな事がないなぁ。」と思いつつ現着して、第一投の準備を開始。海底の地形の様子がそれほどハードではなさそうだったので、2本バリ仕掛を選択した。まず先バリにサシエサを装餌して続いて枝バリに装餌しようとハリをつまんだ瞬間、水面に青い影が走った。
「マズイ!」と思った次の瞬間、先バリを加えたシイラが全力疾走して、太いメジ・カツオの14号が本人の目からはスローモーチョンのようにカエシからフトコロの奥深くまで「ブスリ」と、左手の親指に食い込んで行った。
「痛~いっ!」と大声を上げながらハリスを掴もうとするが、強烈な痛みを伴いつつ、良型シイラに引っ張られて伸びきった左手に右手が届かない。それに気付いた船長が慌てて12号のハリスを引きちぎってくれたから助かったが、あのまま放置していれば裂傷などのドエライ事態になっていたかも知れない。幸いにも同乗していた釣友が整形外科医だったため、必要最小限?の痛み(モチロン麻酔ナシ!)だけでハリを抜き取ってくれたおかげで、その後はズキズキ痛む程度で済んだが、不幸はこれで収まらなかった。
■不幸は続く…■
気を取り直して、投入を再開した。とりあえずは通常の発砲ウキ7番が1個の攻めで狙ったが、潮速は攻略しきれないほどの速さではなかったのは幸いだった。
●100mあたり2分35秒●
送り出しを40mとって流した二投目だったろうか、200m過ぎにラインが走ってイサギをゲット。 続いて「イサギが喰うタナに入って来るヒラマサが居るかも?」の仮説の下にその周辺を攻めている最中に釣友がヒラマサをゲット。続いてボクにもそれらしきアタリが…と、思った瞬間に何故か130m付近でラインが原因不明の高切れを起こして取り込みには至らなかった。
失意の中でリールを換装するが、これも数投でオマツリして解けず、ラインと時間を大量ロストして3台目のリールに換装するハメになった…。
三台目のリールには8号のラインが巻いてあったので、潮流抵抗を考慮してタナを取り直す事にした。送り出しの量を20mに減らし、190mで30秒の止めを加えた後にメカニカルブレーキを絞ってみると、205m付近でラインが走って、またまたイサギをゲット。そして良型の尾長グレも登場したので、〝リーチ感”はあったのだが、ヒラマサは出てくれなかった。
「ならば、その奥のやや深みか?」と、思い、190mからのメカニカルブレーキの絞りを無くすと、240m付近でラインが走って70cm弱のマダイをゲットする。
そこから「マダイのタナに入って来る大型がいるかもしれない」という仮説の下、重点的に攻めてみたが、70cmオーバーのマダイと、「オヤッ?」と思わせる引き味で勘違いさせられた、ブリとメジロのダブルが出た程度で朝一のジアイが終わりとなった。
●思わせ振りなブリ族の引き●
■カゴフカセ■
その後は潮速が増して、100mあたり2分チョイとなった。それでも当初はポツリとブリ族のアタリを拾えたが、それもやがて途絶えてしまった。
しかし、これは予想の範囲だった。そんな状況で試してみたかった釣法があったので、それを実践する事にした。それはいわゆるカゴフカセというヤツで、春の白石グリでブッ飛び潮に遭遇した際に成功した釣法だ。
一般にカゴフカセでは5号までの軽めのオモリを打つことが多いが、導入したのはもっとヘビーなタイプで、潮速と道糸の太さの関係から10号のオモリを背負わせていた。本来ならこんな仕掛けは使わずストレートにアタリを取りたいのだが、言わば苦肉の策となる。
完全フカセの仕掛けのサルカン上に丸玉オモリを通してサルカンとの間に目の粗いナイロンカゴを入れたが、それを固定せず、スナップを引っ掛けただけの遊動スタイルで、仮に大型魚が掛かっても、これなら引っ張られる方向に対しての抵抗が減るだろうとの目論見だった。
●カゴフカセのセッティング●
戦略を立てる為、船長に沈み根の位置を確認すると、一番手前が150m付近という事だったので、その手前の140mで30秒の一旦停止を入れてからカゴのマキエサを振り出し、そこからゆっくり流そうかと思っていたが、カゴを振った瞬間にアタリが出て、イサギをゲット。
続いての流しでは振り出した後にメカニカルブレーキを絞って底層の流れに合わせてゆっくり目に流しているとラインが走ってブリ族をゲットした。続いてアタリを数回拾っていったが、残念ながら結果は全てがブリ族だった。
しかし、この間、通常の完全フカセで攻めていた釣友はアタリがゼロだったので、急潮時のアプローチとしては一応は成功と言えると思う。但しこれで解ったのは、「この時間帯の上潮はブリ族ですら浮上したがらない状態。」という事だった。だから、更に数が少なく潮況に敏感なヒラマサが反応しなかったのは当然の事だったと思う。
■後半も…■
「この方法なら深場も攻められるだろう。」という事で、船長は移動して探りを入れてくれたが、そこに〝らしき影″は無く、再びやや浅めのポイントに戻って通常の完全フカセで徹したが、ブリ族とイサギ以外に得る物は無く、この日の釣りが終わってしまった。
という事で最初っからボクに付き纏った不運は解消される事無く、十数本のブリ族は得たものの、見事に〝ヒラマサ・ボーズ”となり、春以来キープし続けていた連続ゲットも途絶えてしまった。残る玄達瀬釣行のチャンスは1回のみとなったが、今や「少ない」と言ってよい状態のヒラマサをほじくり出す事は出来るのだろうか?。
まぁ、こんなにツキに見放された一日はそうはやって来ないだろうから、次回に期待するとしよう。
●当日のキープ分(左列がボクの分)●