中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

釣り味・食い味 ~その5(ヒラマサ編)

2013-08-03 12:30:00 | 釣り一般
■キング・フィッシュ■

 今回とり上げるのは、ボク自身が釣り人生の中で獲った魚の中では評価No,1のヒラマサだ。以前にマダイのところで触れたように、この魚はオーストラリアやニュージーランドでは”Kingfish(キングフィッシュ)”と呼ばれているが、その通り、「釣って良し」、「食って良し」で、魚の王様だと思うのは、ボクだけではないだろう。(南半球のヒラマサは、亜種という説もあったそうだが、最近では同種とする意見が優勢。)
 また、見た目に於いても”King”の冠に恥じない、魚界では一、二を争う容姿を誇り、同じ系統の色彩を持つブリ系に比べて、体側の中央を横切るラインや周囲に立つヒレといった部分の”黄色さ”が、より鮮やかで、それを挟んで背中のブルーと腹の白銀とのコントラストが美しい。特に船縁まで引き寄せた頃に見える海中での姿は、思わず見とれてしまいそうになるほどだ。(本当に見とれているとバラしてしまうから要注意。)


■ヒラマサの釣り味■

 ヒラマサの魅力、その第一は引きの強さだ。写真上では一見似ているかのように思えるブリ系(実物は、見ればすぐに違いが判るが、)とは、同寸同士で単にパワーを比較するだけなら、ヒラマサの方がやや上程度になると思う。だが、「ブリ系の方は単調であるが、持続的な力を発揮する」のに対して、ヒラマサの方は、「ここ一番の馬鹿力」が基本の力に上乗せされる。
 この馬鹿力が実に厄介で、ブリ系が海中の岩塊といった障害物の上を通過することが多いのに対して、ヒラマサはその馬鹿力を発揮しつつ障害物が入り組む海溝や岩塊の際を目指して一目散に走る。そして釣り人がそれを止めることができなければ、結果的にそれら障害物に道糸やハリスが触れたり、2本バリの上バリが引っ掛かったりして、仕掛が飛んでバラしてしまうことになる。だから同じ青物でも「ブリ系は力があるだけのアホ魚で、ヒラマサは力がある上に賢い魚だ。」と釣り人は語るのだ。
 よく完全フカセ釣りでは「一度本命魚に対して仕掛けが合うと、潮流が変わらない限り、魚の食いが続く。」と言われるが、この釣法でヒラマサ狙っている際の、根ズレによるバラしも同様に「同じ位置でアタリがあって、それを、掛けても掛けても同じところに走られる。」から、ヒラマサの頭をこっちに向かせるだけの仕掛強度と、釣り人側の対処がなければ、入れ食いならぬ”入れバラし”になることもある。
 これだけの違いがブリとの差であるとすれば、単に「習性の違い」として捉えることもできるのだが、他にも賢さを感じさせる部分がある。
 ボクが青物を狙う際には小魚を使った「飲ませ釣り」はほとんどせず、オキアミを使った釣りになるが、この釣りの場合、経験上ブリ系は捕食の結果、サシエサと同時にその中にあるハリごと飲み込み、エラの周辺や時には胃までハリが到達していることもある。しかし、ヒラマサが同様になることはほとんど経験しておらず、大概は口の周りにハリが掛かっている。これはヒラマサの方が警戒心が強いためにそうなるのだと言われているが、この習性がまた実釣時の障害になる。即ち、ヒラマサは、よくハリ外れが起こる魚でもあるのだ。
 ハリ外れは前回の玄達瀬での釣行時にも一度経験しているが、これに限らず今までに何度も経験している。口そのものは硬く、ウマく上下の唇の蝶番部分=かんぬきに掛かれば全く問題はないのだが、硬い唇と顔の間に薄い膜があって、吻部は蛇腹ホース(一層のみだが)のようになっいてる。これが問題だ。
 この薄い部分にハリ掛かりすると、やり取りを繰り返すうちに徐々にハリ穴が広がってゆく。そして何かの拍子で糸のテンションが緩むタイミングとヒラマサが頭を振るタイミングが重なると、ハリ外れが起こってしまうようだ。特に船縁まで引き寄せ、竿を竿受けにセットし、ハリスを手繰りする段階になってこれがよく起こるのだ。実際に8年前、丹後半島沖の白石グリで、メーター前後のヒラマサを7本掛けたが、獲れたのは5本で、残りの2本は目の前でポロッとものの見事にハリが外れてサヨナラとなってしまった。この件を複数の船長に話しても同様の意見を持っていることがほとんどで、余談だが、「外れた瞬間に何故か逃げるヒラマサと目が合う。」という意見まで同じだった。

●8年前の1m3cm(自己記録)だが、この日は目の前で2本がハリ外れ●


 馬鹿力を持つうえに賢いヒラマサをゲットするための仕掛は、それなりの強度が必要になる。勿論細い方が食いが良いハズなのだが、そのメリットがハッキリと感じられるのは恐らく6号程度であると思われる。しかし、70cm以上のヒラマサに対してこれを使うのは「足下の水深が深い」「障害物が少ない」などの地形の条件が整っていることに加えて「ドラグ操作に馴れている」など、釣り人側にも技術が要求されるので、自信がある人以外はやめておいた方がよい。
 「回遊魚はバラすと後が続かない。」と言われるだけに、ヒラマサ狙いではリスクを減らした仕掛を使用して欲しい。細めのハリスで仮に10本掛けることが出来ても、手にする魚が2本であるのなら、5本しか掛からないが手にする魚が3本以上(それも、より大型)になる方を選んで欲しいと思う。また、ボクを含めて仕掛を自作する人も一定の割合で居るが、枝針を出す際に「編みつけ」ができなければ、いっそのこと市販品を利用した方が身のためだと思う。

 ボクがヒラマサを釣るために訪問した釣り場は、西から山口県萩沖の見島周辺と京都府の若狭湾周辺、そして福井沖の鷹巣周辺と玄達瀬だ。
 各地で釣法や仕掛が違うが、見島周辺は長大な棒ウキを使って流す「ウキ流し釣り」で狙い、仕掛に使用する道糸はPE製の6号、装着するハリスは12~14号と特別太い。ここでは時期によって希に1m40cmクラスの超大型も出るが、普通に出るのは70~80cmクラスだ。別段ここのヒラマサの引きが強いワケでもないのに、この太さのハリスを使用するのは、マグロ等、他の回遊魚に対する意識もあるだろうが、結局は重いウキとオモリ、カゴや天秤といった抵抗物を背負っていることと、クッションゴムは着いているものの、伸びの少ないPE製の道糸を使っていることが大きな要素だと思う。
 それが若狭湾周辺では釣法が完全フカセ釣りになり、道糸はフロロカーボン製の6~7号、ハリスは7号以上となる。以前にも書いたが、ボクの場合はメーター前後の大型ヒラマサであっても、ハリスは8号が標準になる。これはゴールデンウィーク頃から釣れ始めるこの一帯のヒラマサが、何故かMAXのパワーを発揮しないからだ。
 そして、福井沖の場合も完全フカセ釣りで狙うが、沿岸の鷹巣周辺では狙えるサイズが大きくても80cmまでになるので、道糸がフロロカーボン製の6~7号に、7~8号のハリスを使用する。これが玄達瀬ともなると、一日に数発来る120cm以上の超大型クラスに対応するため、道糸はフロロカーボン製の8号~10号に、ハリスは標準が10号、場合によっては14号までを使用する。シンプルな完全フカセであるにも関わらず、ハリスが太めになるのは季節のせいか、地形のせいかは判らないが、玄達瀬で釣るヒラマサの引きは最強クラスだからだ。
 因みに仕掛の長さは、ウキ流しでは15m以上を使うが、完全フカセでは全て6mになる。枝バリは1本(全長70cm)のみで、これを編み込んだ2本バリ仕様の自作仕掛以外は基本的に使用しない。

●今年5月の96cm●

 とにかくヒラマサ釣りの魅力は、相手の度を超えたその強い引きと賢さに対して、自分がどこまで迫れるかにある。特に相手が大型の場合は、まさに「食うか食われるか」の世界だ。それだけに釣り人はこの魚を釣るために躍起となる。その昔、オキアミの出現によって釣り人界にヒラマサ・ブームなるモノが到来したが、それも頷ける話だ。

 ここで釣り味の評価をしよう。「完全フカセ」での釣果であれば文句なく10段階の9をつける。だが、その他の釣法では引きがダイレクトでない分だけ釣趣が下がるように思え、もったいない気がするのが残念だ。


■ヒラマサの食い味■

 食べたことがある人には判ってもらえることだが、ヒラマサのウマさは超一級品で、上段でも述べたようにその意味でも”Kingfish”の名に値する魚だ。
 その旬は夏とされていて、ブリ系とは季節が真反対になる。ブリ系の70cmクラスは関西ではメジロと呼ばれるが、そのサイズとヒラマサは時々同じポイントで釣れることがあって、そうした場合、帰宅後は直接比較できるので、その違いの大きさが、見た目以上にあることがよく理解できる。
 両魚共に、ちゃんとプロの手によって血抜きがなされているにも関わらず、身の色はヒラマサに白っぽさを感じるのに対してブリ系は血の色がにじんで見える。食してみても見た目の印象通りでブリ系はどこか「血なまぐささ」が残るのに対して、ヒラマサはそれを全く感じないのだ。これは身についている赤黒い部分=血合いの体積がブリ系の方が多いことも関係していると思う。
 身に乗る脂の質も両者に違いがあって、ヒラマサは大型の脂が多い個体であっても脂分が上質なため、しつこさは感じないが、ブリ系は、何故か脂が乗り過ぎてしつこいか、少なくてあっさりし過ぎて味気ないかの、両極端の印象がある。
 気になる寄生虫も、水温の高い時期のブリ系ではでは「かなりの確率で入っている」と思った方がイイのに対して、ヒラマサでは過去4月に萩沖で釣った、痩せた一個体だけに”身の毛もよだつ”ような量が入っていた以外は全く発見したことがないから、その意味でも有り難い。

 今までボクがヒラマサを釣った月は1月と、4月~11月の各月だが、どんな魚でも季節差もあるように、ヒラマサも例外ではない。
 玄達瀬で釣る7月初旬では個体それぞれで腹に抱える卵巣や精巣のサイズは大きく、それらに栄養分が取られていて、身の脂分が減っているから、ヒラマサらしい旨味は充分にあるものの、割とあっさりとしたイメージだ。だから、ボク個人の印象かも知れないが、旬と言われる産卵期の夏場よりも産卵から回復した9~10月と、産卵に入る直前の4~5月が一番ウマいように感じる。

 料理法は、今まで定番の「平造り」を始め、「しゃぶしゃぶ」「塩焼き」「洋風のソテー」「味噌漬け」等々、様々な調理法で味わったが、何をやってもウマい。だが、上述した産卵期を除外したその前後の「はらす(腹側の身)の平造り」と、365日、いつの日であっても「半割にした頭部と、エラブタ後ろの”カマ”と呼ばれる部分の塩焼き」の味は格別だ。
 頭部とカマは、やや強めの塩を施してオーブンで表面がパリッとなるまで焼くのだが、これを、友人を交えて5人で食した際は、四方から箸が伸びてアッという間に無くなってしまうほどの好評さだった。

 上述した理由から、食味の評価もかなり高く、たとえ味的にピークの時期でなくとも他魚を凌駕している。だから釣り味同様に10段階の9をつけたい。


■総合評価■

 釣り味、食い味共に9であることから総合評価は10段階の9としたい。実のところ、これ以上の高評価の魚は未だ遭遇しておらず、ボク的には無い。9.5クラス以上は“夢”として残しておきたいからであって、実質ヒラマサ、特に完全フカセで狙う玄達瀬の大型は最高評価になる。
 昨秋以来、若狭湾~福井市沖では8年ぶりの大回遊があって資源量は確保されているものの、これがまたいつか何かのタイミングでサッパリ居なくなってしまうこともあり得るワケである。だから、もし仮にヒラマサ釣りに興味があるのなら、是非今年はチャレンジを実行して欲しい。チャンスは今なのだ。


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