中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

’10 男女群島遠征 ~第1部

2010-06-05 12:31:22 | 磯釣り
■季節外れの寒気■

 毎年5月の半ば過ぎにやって来る、恒例の男女群島遠征が始まった。

 男女群島とは五島列島の南西端である大瀬崎から、更に70kmほど南西に向かった東シナ海にある絶海の孤島で、モチロン無人島でもある。その名はメインになる5つの島の内、最大の物を男島(おじま)、2位の物を女島(めしま)と呼ぶことが由来であろう。
 魚種は豊富で、石鯛狙いの人達の憧れであるクチジロ石鯛の80cm級や、グレ狙いの人達の憧れである60cm級の尾長グレのゲット率の高さでは全国でも3本の指に入るほどなので、この群島を目指して釣り人が全国各地からやって来る。
 当然ボクはグレ釣り師なので、狙いは尾長グレだ。それも前々回で出した、自己記録の60cmジャストを越えるサイズを狙っての釣行だ。
 直前の情報では、そんなにパッとした状況ではないようだ。しかも季節外れの寒気がしばらく居座る最中でもあった。
「気圧配置が季節通りに推移していないときは往々にして潮流の動きが悪く、食いが悪いことが多い」と、昔、漁師をしていた福井の船頭から聞いたことがあるが、ボクの場合、嫌な予感はよく当たる方だ。更には寒気の吹き出しによる強風と高波のため、本来は初日に予定していた男女群島よりも更に西に浮かぶ、尾長グレに関しては更に有望と言われる「肥前鳥島」(ボクは全くイイ目をしたことがない)への釣行は早々と中止になり、今回もとりあえず風裏の磯を目指すことになりそうだ。
 「『暗雲たれ込める』とは正しくこの状況を言うのだろう。」と変に納得しながらも、出港地との中継地点にある、福岡市内へと向かう新幹線に飛び乗った。


■いつものうどん■

 福岡市内の釣具店でいつものメンバーと再会し、エサを仕込んだ後はレンタカーで出港地である、佐賀県呼子へと向かう。
 途中で、この遠征名物の「牧のうどん」で夕食をとる。この店に入ると「今年もやって来たんだな~。」と実感が湧いてくる。

                  
                       ●九州北部各所にあるうどん屋チェーン●

 以前にも書いたが、ここのうどんは不思議なうどんで、油断も隙もない。湯がき具合を硬めに指定してさっさと食べてしまわないと、ドンドン伸びてエライ目に合うのだ。その様子は丼から溢れるが如くだ。

                  
                                ●鴨うどん●

 食事を済ませ、しばらく走ると呼子港に到着する。しばらくの猶予の後、これから現地2泊3日の間、お世話になる「日之出丸」が到着する。
                  
                          ●荷物を積み込み中の日之出丸●

■いざ男女群島へ■

 午後10時過ぎ、荷物を積み終えたと同時に出港した。普段なら到着は午前3時前になるはずだが、北東からの強風に煽られて時間が結構掛かり、到着は午前4時半を回ろうとする頃になった。ほぼ夜明けと同時に各所へ釣り人が降りて行く。ボクに対する指示はないままにフロントデッキで待機していると、渡礁の手伝いをするポーターさんから、
「次、上物(グレ狙い)の人、用意して」と言われ、準備を進めていると、一昨年に自己記録を釣ったあの「帆立岩(ほたていわ)」が眼前に迫っている。
「ラッキー!」と思ったのも束の間、この日の朝釣りはボク一人で降りる予定だったことから、
「一人か~、この風ではね~。」という船長の判断で、3人組みのパーティーが降りることとなり、断念せざるを得なくなってしまった。
 その3人が降りた時点で船内に残る釣り人はボク一人。
「ハテさてどこに行くのやら?」と思った矢先、「捨てる神あれば拾う神あり」で、男女群島の中では帆立岩と並んで3本の指に入ると言われる「立神」という磯に渡礁することと相成ったのである。

■満ち潮の立神にて■

 釣りをしない人には解らないことだが、海の魚(雑魚を除く)は潮流が流れている時間でないと基本的には口を使わない。これは潮が動かないとエサが流れてこないことを魚が知っているからだとも言われている。更には磯釣りの場合は、満潮に向かう満ち潮でしか釣れないポイントや逆に干潮に向かう引き潮でしか釣れないポイントもある。グレ釣りなどのウキを流して広範囲を探る釣りの場合は、基本的に自分の立ち位置から離れて行く方向に流れる潮流を釣るのだが、その流れの行く先々に魚の隠れ家や、魚がエサを食べやすい流れがないと魚が極端に少なくなってしまう。この立神という磯は満ち潮では潮が足元でぶつかった後に弾けて流れて行くのだが、その方向に魚の居る要素が少ないのか、引き潮で10の力を発揮するとすれば、満ち潮では3以下の実力しかない。渡礁直後はその悪い方の満ち潮だった。

                  
                     ●足元に当たって弾け、南西方向に流れる潮●

 潮は理想の状態ではないものの、何とかしなければならない。そこで、足元右にある本流へと引かれる潮に一旦仕掛を入れて馴染ませた後に本流方向にへ入れ込んで行く方法で攻め始めた。
 数投目、「マキエサが効き始めたか?」と思った頃に待望の初アタリがロッドを直撃し、それと同時に道糸がリールからバリバリと音を立てながら出ていった。
 「1匹目から尾長グレか?」と喜んだのも束の間。強烈な引きの割には中層をひた走りに走り、底方向へは行こうとしない。やがて姿を現したのは案の定、スマガツオだった。

                  
                         ●60cm級なので、引きは強烈だ。●

 気を取り直して何投かしていく内にポツリポツリとアタリは拾えるものの、尾長は全く当たらず、口太グレや外道ばかりでウンザリしてしまう。

                  
                        ●口太グレは、ほとんどが45cm級●

                  
                 ●「ヒェ~!」ボクには毎度お馴染みの60cm近い特大サンノジ●
             (サンノジは標準和名をニザダイと呼ぶが、磯臭くてマトモには食えないのだ。)

■本流釣り■

 グレ類にアプローチするには様々な方法があるが、ボクが好きなのはブッ飛ぶ潮の中を釣る「本流釣り」というスタイルだ。その中でも特に潮が速い地域=伊豆諸島や四国の南西部、五島列島、それに今回の男女群島のようにウキをマトモに流せば普通の人間が全速力で走っても追いつけないほどの早さの本流が突き抜ける地域での本流釣りがボクは大好きだ。このような地域では尾長グレが釣れる確率が高いので尚更だ。
 一口に本流釣りと言っても釣り人によってスタイルも様々で、多様性がある。ボクが好きなのはM~Lサイズ、オモリ負荷は00、4B、1号の3種くらいのウキを狙う深さによって使い分けて装着し、その負荷以上のオモリを打ってゆくスタイルだ。
 当然、ウキはオモリに負けてすぐに沈み、「浮き」ではなく「沈み」になっているのでアタリ(魚信)は竿の穂先でとることになる。
 よく「尾長グレはハリスに打ったオモリを嫌う」と言われているが、それはある程度の早さまでの話であってブッ飛ぶ潮の中では関係ない。2段3段は当たり前で、「4Bを4つ」なんてこともある。そんな仕掛をサシエサが時折取られるタナに到達するまでオモリをドンドン増やして流してゆくのだ。

                  
            ●Lサイズ、0号負荷クラスのウキの下に3Bと2B、ハリスにも2Bを2ヶ所打ち●

■初尾長■

 結局、満ち潮ではロクな釣果を得ないまま、潮変わりし、今度は本命の下げ潮へと変わる。

                  
                    ●今度は向かいの重箱めがけてまっしぐらの潮だ。●

 まずは、足元左側にある、本流へと引かれる潮で馴染ませてから本流へと仕掛を沈ませていったが、45cm級の口太グレが連発し、5匹目を釣ったところで作戦変更。今度は足元右側の本流へと直接仕掛を入れる戦法に切り替えた。
 これが功を奏したのか、それまでとは違う引きで今航海初の尾長グレが登場する。

                  
                              ●初尾長は43cm●

しかし、サイズは物足りない。2発目以降を狙うが、何故か単発で後が続かないので、試行錯誤の繰り返しが始まる。試しにもう一度本流の左を狙うと、良型口太グレが再び連発するものの、尾長グレは一向に姿を見せなかった。
 そして夕刻になると、潮止まりの時間を迎え、それと同時に撤収時間がやって来た。この後は夜釣りのポイントへと移動だ。


■夜釣りポイントへ■

 「さて、さて、どこに流れて行くのやら…。」超A級磯に渡礁出来たにもかかわらず、尾長グレが貧果に終わったボクは、ある意味「予想通り」の展開に苦笑しつつ、次なるポイントへと向かった。
 日之出丸が舳先を向けたのは男島方面だった。ポーターさんが説明するには、前回の航海で良型尾長グレを連発した夜釣りのポイントがこの方面にあるそうだ。その言葉を聞いたボクの苦笑が少々の「ニヤけ」に変化する頃には、真浦(まうら)という大きなワンドの中心部に到着していた。
 到着直後は、それまでマトモに飯を食っていなかったことから、とりあえず夕食の支度を開始する。男女群島の遠征では、到着日の夕食時以降に「弁当」と賞する物が渡船店から支給される。とは言ってもこの弁当は白飯にたくあんが3切添えてあるだけなので、おかずは各自が用意することになる。

                  
                               ●遠征ディナー●

 ヒマのある人達は食材を持ち込んで、焼肉や鍋を楽しんでいるようだが、以前にも書いた通り釣行時は粗食派のボクなので、レトルト食品が精一杯だ。この日も、ハッシュドビーフとカップスープ、野菜不足になる部分はジュースで補うという、いつものパターンでサッサと済ませることにした。

   
                            ●夕闇迫る真浦の風景●

■夜尾長■

 釣りを再開した後は、これまた予想通りの展開で夜釣りタイムが過ぎてゆく。夜のエサ取りであるミナミハタンポなどが釣れ続き、時折それが消えるとグレ類が来るものの、それは40cm級の口太グレであったり、30cm級の尾長グレであったりで、パッとした釣果は得られない。アレコレと工夫はするものの、欲しいサイズの尾長グレは全く無反応。そうこうしている内に策も尽き、珍しく眠気に襲われ始めた。
「ヤ~めた。」と、竿を置いて寝袋に入るが、時折吹き抜ける風が冷たすぎて寝られない。
 1時間ほどウトウトしただろうか?最終的には震えるほどの寒さに耐えかねて寝袋を飛び出していた。その後は体を温めるつもりで無理矢理竿を降り続けたが、結局明け方に40cmに満たない尾長グレを2枚追加するに留まった。
 明るくなればなったで、このような湾奥のポイントは小魚天国と化してしまう。太陽が上がったことも手伝って、やや気温が上がったのを良いことに、遂にボクは2時間ほどフテ寝を決め込んでしまった。

                  
                 ●「マキエサに 寄るのはカモメ ばかりなり」 詠み人知らず●

■真浦立神1番へ■

 目覚めると約2時間を経過しており、慌てて荷物を片付けて10時に迎えにくるであろう、日之出丸を待つ。
 10時過ぎ、船に飛び乗ると、すぐにポーターさんから声が掛かり、先程の磯からは、すぐ沖合にある「真浦立神(まうらたてがみ)の1番」という磯に降り立つことになった。
 ここでは緩い引き潮が流れていたので、本流釣りは出来そうにない。そこでB負荷の普通の仕掛けを装着して普通にウキでアタリをとるようにする。
 そして、その仕掛けは40cm前後の口太グレに取り囲まれて、投入後はほぼ入れ食い状態になってしまう。
 途中、またもやスマガツオが掛かってしまい、そのキョーレツな引きに度肝を抜かされたが、ハリを飲み込んで暴れ回ったので、そこら中が血まみれになってしまった。
 この血がイケなかったのだろうか?…。しばらく経つと、口太グレの入れ食いがピタッと止み、急に魚が磯際に集まり始めた。
「変だな~?」と思いながらも再び磯際で口太グレのアタリを捉えたが、引き寄せる途中に魚突然変身したかのように猛烈な馬力で沖合めがけて走り始めた。次の瞬間水面が盛り上がり、背ビレが見えたかと思うと、体をくねらせ、「ドッバーン!」と水シブキを上げた。
「出た~。」心で叫びつつ確認したのは体長2mくらいのサメの姿だ。どうやら先程まき散らしたスマガツオの血の臭いに寄ってきたサメが、掛かった口太グレに食いついたらしい。
 滅多にない機会なので写真が撮れる位置まで引き寄せてやろうとボクは少しの時間やり取りをしたが、冷静に考えると高切れして道糸が減るのはイヤなので、糸が出すぎる前に無理に止めてやることにした。そしてサメはいとも簡単にハリスをブチ切っていくのであった。(その後に、もう1匹掛かったが、今度はハリを折られてしまった。)
 その後はポイントを休め、サメが居なくなるのを確認した後に釣りを再開したが、良型口太グレは出るものの、全く尾長グレの気配はないまま、夕刻の移動時間を迎えるに至った。

■船長への直訴■

 この時点で尾長グレのキープ数は1枚。それも大型とは呼べないサイズだった。この状況下、真浦立神を去る際にボクは心に決めていたことが一つあったが、それは「『帆立岩』が空いていれば、乗せて欲しい。」と船長に直訴することだった。幸い風が収まり、海は凪ぐ方向へと向かっており、渡礁の確率も高そうだ。もし、それがダメなら今回の航海全体の展望を修正して「家へのお土産釣りに徹しよう」と考えるほどの決意であった。
 そしてボクは船に乗り込むと、途端に船長に直訴をした。だが、意外にも簡単に快諾してもらうことが出来たのだ。但し、「一人ではダメ」との指示が…。
 その時、シマノ石鯛インストラクターの中出一也クンから同礁O.K.との助け船が出たのである。そして程なくボクの眼前には、あの「帆立岩」が迫り来るのであった。


   
               ●あれに見えるは「ホ・タ・テ・イ・ワ!」、2年振りに帰って来たのだ!●

  「’10 男女群島遠征 ~第2部」に続く。
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