透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

あ、貫通やぐら!

2021-03-07 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)松本市笹賀(今町会公民館前) 4脚(貫通)44型 撮影日2021.03.07

 この火の見櫓を初めて見たのは2010年の7月のことだった(過去ログ)。火の見櫓巡りを始めたのが同年5月だから、そのわずか2カ月後ということになる。この時に掲載した記事のタイトルは「屋上に立つ火の見櫓(*1)」となっている。この時は脚が倉庫を貫いていることに全く気がついていなかった。なぜ?

先日読んだ『脳は、なぜあなたをだますのか』妹尾武治(ちくま新書2016年)の第4章「だまされないために、心のからくりを知る」の第1節のタイトルは「何かに集中していると他に注意が払えなくなる――注意資源と二重課題」だが、この時は火の見櫓が屋上に立っているということに気を取られて(ただし屋上に立っているということは事実誤認)、つまり注意資源の大半を屋上に立っているということにもっていかれて、脚元に向ける注意資源が残っていなかったという状況だった。だから、脚が倉庫を貫いていることには全く気がつかなかった。人がマジックに騙されるのもこのような理由。

その後、2015年4月にもこの火の見櫓を取り上げている(過去ログ)。この時は前述のような思い込みで、やはり脚が壁から出ているということに全く気がつかなかった。だから記事ではこのことに全くふれていない。







今日(7日)もいつものように屋根から脚元まで②③④の順に写真を撮ったが、まだ気がつかなかった。



地上から屋根の上まで掛けてある梯子を真正面から撮ろうとカメラを向けた時、初めて気がついた。見えているこの状態に脳が初めて気がついた。「あ、貫通やぐら!」





倉庫の裏側にまわってみると、表側と同じように2本の脚が壁を貫いていた。このことにもっと早く気がついていれば『あ、火の見櫓!』にも取り上げたのに・・・。

こんなことがあるから、一度見て終わり、なんてダメということだ。


*1 屋上という表現は正しくない。折版屋根の上に立っていると正しく捉えていれば、壁貫通していることに気がついたかもしれない。「屋上」に立っていると捉えてしまったことにより、下まで脚が伸びているとは思わず、従って、脚が外壁を貫いて外に出ているなどとは全く思わなかった。この倉庫が鉄骨造であることをきちんと分かっていれば、脚は地上まで伸びているはずだと分かったと思うが、それもできていなかった・・・。なんということだ。でも、貫通やぐらであることに気がついてよかった。


「キリギリスの年金」

2021-03-07 | A 読書日記

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 『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』明石順平(朝日新書2020年)を読む。「キリギリスの年金」というタイトルだけで、楽観的な内容ではないということが分かる。

家庭でも支出が収入を上回れば家計が赤字になるが、年金も同じこと。この国は**老齢年金は、少子化によって保険料負担者が減る一方、高齢化によって年金受給者は増えていくという極めて困難な状況に直面しています。**(29頁)というのが現状。だから年金支給総額を抑えて、保険料をより多く徴収するように制度を変えていかないと年金制度が危うくなる。だから何年先のことになるのか分からないが、年金支給開始年齢は70歳に引き上げられるだろう(75歳になるかも)。定年延長を義務付けることによって保険料負担者を多くし、できれば受給開始を遅らせたいという目論見も分かる。だが、年金制度についてはこれ以上のことは分からない。

本書には厚生労働省や財務省などの資料から引いた表やグラフがいくつも示されている。それらを客観的に読み取ることから分かる年金制度の実態、行く末について論じている。経済用語の基礎知識がない私には難しいが、とにかく最後まで読んでみたい。

**公的年金が現在どのような財政状態にあり、将来についてどのような予想に基づいて運営されているのかを知った時、本当に驚くと思います。(中略)「不安を煽るな!」は日本人の思考停止スイッチを押す魔法の言葉であり、この言葉のせいで様々なことが先送りにされてきました。年金もそうです。(後略)**(3、4頁)

年金問題については知らぬが仏なのかもしれない。だが、「鶴の恩返し」のおじいさん、いやおばあさんだったかな、それからイザナミの死後の姿を見てしまったイザナギのように知りたいという欲求が勝る。


年金問題の過去ログ


「絶対に挫折しない日本史」読了

2021-03-07 | A 読書日記

『絶対に挫折しない日本史』古市憲寿(新潮新書2020年)を読み終えた。

**本書は二部構成になっている。第一部は言ってみれば「ニッポン全史」。日本列島の誕生から消滅までを一気に描いてみた。第二部では、章ごとに「コメ」「家族」「戦争」などのテーマを設定し、日本史を第一部以上に超高速で振り返っていく。** このように本書の帯にある。

第一部は喩えて言えば中山道六十九次の旅を3、4の宿場で休憩するくらいのスピード、そう超高速でしたかのよう。で、中山道の旅をしました、と言われても・・・。もう少しじっくり旅したい。こんな感想だった。別の言い方をすれば僕の希望よりあまりに上空からの俯瞰に過ぎた、ということになるだろう。

でも、中山道全旅程の概要をあらかじめ把握するのに、このようなガイダンスは有効だろうと思う。要は読み手が何を期待して、何を求めて読むか、ということ。で、僕には合わなかった、そういうこと。