10日ぶりに出社。今日からまた、退屈な会社生活。
何もやる事が無いのは病院と一緒だけど、会社はやっぱりストレスが溜まる。
会社のパソコンの中にあった、僕の個人的な技術資料やデーターを
夏休み前に一通り吸い上げ終わったので、取り敢えず会社のパソコンには何も入って居ない。
メモリースティック4本、DVD2枚に入った大量の設計資料なんだけど、
休んでいる間に、パソコンが登録されたメモリースティック以外は
繋ごうとしても拒否されるように、変わっていた。
CDやDVDの読みこみも出来なくなっていて、会社で僕のデーターを見ようとしても
簡単に出来なくなっちゃった。
と云う訳で、実質会社には何も残さない事になった。
デスクの引き出しにある大量のノートも、定年までに少しずつ持ち帰って
自宅で処分するつもり。
デスクの引き出しから会社の創業60周年を記念する分厚い冊子が出てきた。
実はこれを見るのは初めての事。
中には僕が担当した装置の事が書いてあった。
一つは入社当時の部署で作った、表面分析装置。
もう一つは、本社で最後に居た部署で作った『超高圧電子顕微鏡』。
両方とも、開発時に苦労した部分について記述されている。
初めて見た会社史に、自分がやった仕事の事が書かれて居るのが嬉しかった。
『会社の歴史の一部分を自分が担当したんだ』っていう感じかな?
こんな事を考えるって事は、もう棺桶に足を踏み入れてる証拠です。
でも、間違いないのはいつも必死にやっていた。
眠れないほど悩んだ時期もあったし、夜中まで作業して帰宅した事もあった。
『結果が出ればそれでいい・・・・』と、若い頃は思っていたけれど、
だんだんそれが『自分が設計した通りに動いているのだろうか?』
と云う疑問を持つようになって、結果としてそれが性能を上げる事に繋がった。
『あいつは馬鹿』『何も解かっていない』などと陰口を叩かれたり、
試作中の電源を組み込んだ仕様の装置が受注されて居たり、
なおかつそのプロト機を製品にした時に、製造現場からは
『製品で実験なんかしてるんじぇねぇよ』みたいな事を言われ、
思うように進まないと『あいつを降ろせ』とまで現場から言われたり・・・・
大きな仕事をやれば、それなりに辛い事も多々あった。
でも、周りに支えられ、励まされてやって来たんだなぁ・・・・
なんて、今日は色々と考えちゃった。
そんな中、今の部署の『元弟子』が本社から供給された高圧電源の事で悩んでいて、
誰も居ないのを見計らって、僕の所へ相談に来た。
見るからに駄目そうな設計・・・・僕にはそれしか言えなかった。
『元弟子』に散々言って来た事が、本社の設計には一つも見えない。
『元弟子』には、それが問題点である事が解るから歯痒いのだろう。
頑張って・・・・としか言えなかった。
僕はもう、必要とされて居ないんだから、解決策を伝授するのは
『大きなお世話』になっちゃうからね。
まぁ、時間が解決するでしょう・・・・・かなり先になりそうだけど。