『バカダフィ大佐』と『オバカ大統領』の続きです。興味ない方はスルーしてください(笑)
欧州に輸出するには『CEマーク』と言う規格をクリアしないと輸出できないという、
欧州圏外の製品を締め出す為の排他的なルールが出来た当時。
その規格を通すため、漏洩電波の測定や、外部ノイズによる誤動作の有無など、
試験と測定を繰り返し、それによって起きた不具合に対し対策を施す。
対策後、再び測定して問題の有無を確認し、一つずつ問題を潰して行く。
そう言った面倒な繰り返し作業を、ある人間が担当してやっていた。
だが、そのやり方が滅茶苦茶で、無造作に高電圧印加テストなどをやっているうちに
装置を壊してしまい、その復旧作業に躍起になって時間を喰ってしまい、
後ろが決まっている仕事が、一向に前へ進んでいなかった。
それが輸出する為の解体・梱包作業をする2週間前。
この規格を通さないと、計画されていた輸出用の装置が全部輸出停止になってしまうと言う。
売り上げや利益に関わる、会社にとって大きな問題になりそうな案件だった。
そんな中、『最強コンビ』と煽てられて部署から抜擢されたのが、僕とKの二人だった。
しかしそれは、どんな手を使っても期限までに終わらせないとならない・・・・背水の陣、
僕ら二人には、突然舞い降りてきた『敗戦処理』みたいな仕事だった。
ただ、僕がKの仕事を引き継いだと言うこともあって、以前のような
わだかまりは小さくなっていたものの、やはり何処かでKは僕の事を
あまり良く思わず、心から信頼してはいなかった。
それでも、2週間と言う短時間。
お互いにミッションをやり遂げてやると言う意思だけは同じだった。
漏洩電波の測定をやると、外部ノイズによる誤動作や故障対策など、問題が多発したが、
その解決策など、毎朝早くから二人でミーティングを開いてその日のスケジュールを決めた。
そして測定して結果を見ながら、対策や改造の手順を二人で考えた。
作業は二人で手分けして行い、そのたびに測定・・・・。
測定項目が幾つもあるので、一つずつ基準をクリアするための改造を施しては、
延々と試しながら測定を繰り返して、問題を潰して行く。
測定はKが担当し、その結果を僕がまとめて文書にして行く。
測定中はやることがない僕は、Kから見ると『遊んでばかりいる』ように見えた。
僕から見ればKはデーターを取るだけで、『楽なもんだよなぁ・・・・』なんて思っていた。
ただ、お互いにそれを口にして冗談にする。
決して、影で悪口を言うような関係じゃなかった。
今のように電波暗室がある訳ではない。
測定したスペクトルのピーク周波数を調べて、外部の電波との切り分けをする作業をする。
立川基地の自衛隊、横田の米軍基地、警察無線など色々な電波を調べて、
時間帯によってその高さが変わるものを知らべて仕分ける作業が大変だった。
それでも、そんな状況でお互いの仕事をやりながら何とか2週間で、難題をクリアした。
その後、僕らが書いた手順書がマニュアルになり、僕らの提言がきっかけになり
測定専用の電波暗室が出来たことを書き加えておきましょう。
会社からは特別なご褒美として、会食を開いてもらったり、時計を贈呈されたり・・・で誤魔化された(笑)
この時から、Kとのコンビはお互いに『ライバル』としてリスペクトしあう仲になった。
その後、Kの部下で生意気な口を利く奴が居て、仕事のやり方が悪いと僕が懲らしめたら、
それが気に入らなかったKは、暫く口を利かない、いわゆる『絶交』状態になった。
Kと僕の仕事上のやり取りや質問などは、当時導入されたばかりのメールだけ。
今考えてみれば、子供の喧嘩みたいな事をやっていたのです。
色々あったけれど、いつの間にか和解。
その後はKが顕微鏡の心臓部であるレンズ系の部分を担当し、
僕がもう一つ心臓部である高電圧電源の部分を担当しながら、
Kと僕は、お互いにライバルとして性能向上のため切磋琢磨してきた。
Kが作った電源の性能を上がると、僕の高圧電源の粗が見える。
『ほら、そっちのせいだよ・・・・』と、得意満面の顔をするK・・・・悔しかったです。
逆に今度は僕が電源の性能を上げる。するとKの担当部分の粗が出る。
『あれぇ・・・・変だなぁ、何処が悪いのかなぁ』・・・・心の中でざまぁみろ!。
そんなことをやっているうちに、装置の性能がどんどん上がって行ったのも面白いところ。
お互いに不幸だったのは、『生き字引』と自ら称する、最悪の上司に遭遇してしまった事。
Kは、その『生き字引』と意見が合わず、それで生まれた確執で仕事を干され、
僕は、『生き字引』が自分の影響力を誇示したいために据えた、素人同然の後釜に仕事を奪われた。
『生き字引』は、僕が『先輩に引導を渡すのが礼儀』と言った時に、『頼むぞ』などと言っていたのに、
いざ引導を渡してみれば、自分の影が薄くなった事が気に入らなかったらしい。
まぁ、そういう人も居るんだって事を知らなかった、僕が未熟だったのかも知れませんね。
仕事を干された『寡黙』なKはじっと耐えて、陰で若手の育成をしながら今でも頑張っている。
反して『能弁』な僕は、自ら部署を出る決意をし、今の部署に異動した。
後継者として育てて来た弟子二人に、それまでの仕事を託して、外から見守ることにした。
お互いにやり方は違うが、とりあえず弟子は独り立ち出来るところまで育った。
そのKの弟子が『歩兵改め兵長』であり、僕の弟子が『小隊長』なのです。
『寡黙』なKと、『能弁』な僕。
対称的な性格の二人だから、凸凹の関係で来れた気もします。
ただKが本当に『寡黙』な人間とは思わない。
僕はむしろ、『部署で一番面白い奴』だと思っている。
そう思われてイメージが定着しているKを、僕は羨ましく思って見て居る。
羨ましい存在だから、そういう人間と一緒に居るのが好きなのですよ。
ついでだから明日は、僕が一番信頼し、一番好きな仲間『オバカ大統領』こと、
Kの素顔について書いてみましょうかねぇ・・・・