ちょっと長くなりますが、最悪の幕引きで終わるところだった一日を
心のこもったプレゼントで、いい気分にさせてくれたI君との話です。
帰宅して彼が走ってきて、渡してくれたプレゼントはこれです。
名前入りのボールペンセット。ずっと前から用意してくれていたようです。
何も言わなくても、これを見たら気持ちが籠っているのが判るかと思います。
余りにも嬉しくて、夜中のうちに彼にメールをしました。
そして、今朝はまた嬉しい返事。正直言って、涙が出ました。
そのやり取りを御紹介します。最初は昨夜書いた僕のメールです。
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I君へ
今日で定年退職。今まで、お世話になりました。
思いがけない誕生日&還暦&定年退職のプレゼント。
私の名前まで入れてもらって・・・・感激しました。
本社に居た時はあまり関われなかったですね。
元々、電気工学の専門じゃないって思っていたけれど、
その後は設計業務に欠かせない、CEマーキングやRohsなどの
いわゆる裏方の仕事を一手に引き受けて奮闘している姿を拝見していました。
去年の10月だったかな?いやもっと前かも知れません。
本社に出向して、先だって辞めた男に私と子会社の弟子と、
もう一人の弟子である女性社員の3人で送別会を開いてやりました。
その時に『子会社は本社のようにならないとダメだ』と言ったことがありました。
実験や計算による技術的な裏付け、設計仕様書を作ること、
すべてにおいて子会社は本社の人間には及ばないと・・・・
弟子たちは、私からそのことを突きつけられ、身を持ってよく知っているのです。
ところが辞めた男は『本社の人間がレベルが高いとは思わない』
というので、色々と話を聞くと、彼は貴方のことを言っていたのです。
僕は笑って、『そういうお前の方がずっとレベルが低い』と言って
一笑に付したことがあります。
その時に私は
『設計なんて回路図を描いている人間だけではできないんだ』
そして、貴方の仕事のことを話して
『I君は本社では欠かせない存在、奴が居なくなったら本社の設計部門は機能しなくなる』
と退職した彼に言いました。
私の弟子たちは、その話を聞いて納得していました。
ご存じかもしれませんが、私は若いころに舞台照明の仕事をしていました。
役者や歌手の、舞台上でのパフォーマンスを生かすのが音響、照明といった裏方。
設計部署ではたぶん、貴方の仕事がそれだと思っています。
どんなに役者が上手かろうが、裏方が居ないと舞台には上がれない。
だから役者や歌手は、裏方のスタッフには最大限の敬意を表します。
僕が関わった中では、美空ひばりさんがその筆頭でした。
貴方を見ていると、その時代の自分をよく思い出します。
目立たないけど欠かせない。
貴方は物を売るために必要な作業を一手に引き受けている。
実際にはHさんなども手伝っているんでしょうけれど・・・・
私はそういった『裏方』が大好きです。
そういう裏方をやる人は、心優しく気配りが利く。
まさに今日、私のような嫌われ者の人間に素敵なプレゼントを用意してくれた
貴方がその人だって、確信しました。
自分の仕事に誇りを持ってください。
貴方が居ないと、本社の電気設計部門は機能しません。
そういう貴方を、私や盟友のKは理解しリスペクトしています。
弟子のMやKの弟子たちも、そのことを知っているから同じ目で貴方を見ていますよ。
目立たず、コツコツと地味な仕事をする貴方をいつも尊敬し応援しています。
私の年齢までまだ20年以上あるでしょう。
是非、会社最強の裏方になってください。
いつかまた会うことがあるでしょう。
近いうちに私がそういう席を弟子たちに作らせます。
その時はいろいろと話をしましょう。
今日は心のこもった、素敵なプレゼントをありがとう。
退職の記念として大事に使わせていただきます。
ありがとうございました。
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そのメールに朝一番で返事がきました。
谷中 様
私の入社当初から最後の最後まで「金言」を頂き、有難う御座います。
本社に居られた時はもちろんですが、子会社に移られてからも
通勤時や社内、電波暗室で孤独な闘いを行っていた際など、
気軽にお声をかけて頂き大変救われた思いがした事を良く覚えております。
前任者が開発本部に行かれた時に引き継いだピエゾ電源の設計時、
150V程度とはいえ不安があり相談させて頂いた折に
「自分が納得出来るようにやってみると良い。自分の考えが間違っているかも知れないが、
人に言われた通りにやって失敗するよりずっとためになる」
とお言葉を頂き、以降失敗する度に
「ここから得られる事こそが重要」
と切り替え、モチベーションが下がり過ぎないようにやってこれたのは
谷中さんの御陰だと思っております。
還暦=第2の人生の出発点 として新たなキックオフの笛が鳴り響いている
事と思いますが、「カズ」の様にいつまでも現役選手としてお体を大切にお過ごし下さい。
これまで色々とお気にかけて頂き、大変有難う御座いました。
また今後もお会いする事があると思いますが、宜しくお願い致します。
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嬉しいですねぇ。
今日は、朝からすごく気持ちが良い一日になりました。
心が優しい、I君。
期待している後輩です。頑張って!