昨日は『基礎や基本が大事』と言うことを書きました。
若いころはそんな事、微塵にも思わなかった。
と言うより、意識していなかったと言った方が正しいかな?
舞台照明を志して、運よくそういう道に進めることが出来た。
でも、いざやってみると何にも知らず、何にもできない自分が居た。
それで他の人の仕事を見て覚えたり、空いた時間でピンスポットの
操作を練習させてもらったり・・・・
その当時は、今みたいなキセノンランプの大きなピンスポットなど無く、
日本武道館や、野外ステージなどではピンスポットにアークを使っていた。
アークとは、アーク溶接の時の目が潰れるほどの光を利用したもの。
溶接棒と同じ炭素棒に隙間を作って、電圧をかけると放電して、
明るい光を作って、それを球面の鏡で集光して前に飛ばすもの。
ところが、これは時間と共に炭素棒が燃えて短くなって行く。
それによって炭素棒の距離が長くなると、光が暗くなったり、
チラチラしたり、最悪の場合は消えてしまう厄介なものだった。
その為に仕事では左目で舞台を見ながら、左手でスポットのシャッター等を操作し、
右目では黒い鏡を通して炭素棒が作る光の形を見ながら、
炭素棒の距離を一定にするよう、炭素棒を支えている部分をネジを回して
常に前に押し出すような指の動かし方をしながら、操作していた。
これは結構、経験が要る。
その為に、僕は休みの日になると同じようなアークスポットを遣う
映画館へ行って映写室で作業を、無休で手伝う代わりに、
アークを炊く練習をさせてもらったり、アークスポットのある
大きなホールへ行き、同じように仕事を手伝っては練習させてもらった。
そんなことを半年ほどやっていたら、ピンスポットの基本操作も覚えて
いつの間にか照明の基礎的な仕事もしっかり身についていた。
その当時でも『大砲』と呼ばれたアークスポットを炊ける人材が少なく、
結果として僕は『大砲を炊ける小僧』と言うことで、良い仕事が沢山舞い込んできた。
その後、今の電気設計の仕事に就いた時も、最初は電気工学の基礎が
全然解っていない自分に気が付いて、一生懸命勉強した。
若い人がネットなどの情報豊富な環境に居て、経験に基づく勉強をしようとしない。
そのたびに僕は苦言を吐いていたんだけどね。
仕事だけではないサッカーも、基礎技術の積み上げだし、
世の中のもので、基礎や基本を疎かにして通用するものは無いって
身に染みて感じて来たから、『基礎や基本が大事』
と自信を持って僕は言うのです。