よくあることですが、テレビの美術番組で初めの解説が長すぎて肝心の作品の写真がなかなか出て来なくてイライラすることがあります。
そこで今日は平山郁夫の心静まる風景画の写真から始めます。
1番目の写真は玄奘三蔵法師をテーマにした『仏教伝来』です。東京藝術大学で助手を務めていた1959年ごろの制作です。平山郁夫はインドへ旅した三蔵法師を尊敬していました。この制作が切っ掛けになり中国とローマを結ぶシルクロードに強い興味を持ちその風景画を沢山描くようになります。
2番目の写真は先週訪ねた甲斐小泉の平山郁夫シルクロード美術館に展示してあった「月光砂漠行」です。
平山郁夫は1968年以降シルクロードに関連する国々を数十回訪問し各地の風景画を描いています。訪れた国は中国、中央アジア、西アジア、東南アジア、地中海地域などシルクロードと関連のあった国々約37カ国です。
平山郁夫の一生はシルクロードに魅せられた生涯だったのです。
3番目の写真は同じくシルクロード美術館に展示してあった「アフガニスタンの砂漠行」です。
この美術館の1階にはシルクロードと関連のあった陶磁器、織物、イスラーム美術の彫刻、ガンダーラ美術の仏像、硬貨など約9000点の一部が展示されています。平山郁夫のシルクロードにかける情熱の強さに圧倒されます。
4番目の写真はインド洋を東西に繫ぐ「海のシルクロード」です。
「シルクロード」という名称はドイツの地理学者リヒトホーフェンが、その著書『China(支那)』で1877年に作った名前です。ドイツ語でSeidenstraßenと複数形になっていますが,全て内陸の交易路を意味し海のシルクロードは含まれていません。「海のシルクロード」は後世の人々が付けた名前です。
5番目の写真は『流水間断無』(奥入瀬渓流) です。この絵の大きな原画もシルクロード美術館 に展示してありました。
6番目の写真は平山郁夫シルクロード美術館に展示してあった北杜市から見上げた「甲斐駒岳」です。
7番目の写真は平山郁夫の郷里の尾道から四国を繫ぐ橋を描いた「白い橋 因島大橋」です。平山郁夫は1930年に 広島県尾道市瀬戸田町に生まれ尾道市で育ちました。そして2009年、79歳で亡くなりました。
表題に「平山郁夫の心静まる風景画」とありますが平山郁夫の頭には常に仏教的祈りがあったのです。
平山郁夫は先の戦争や原爆被爆の体験から、終生「平安と鎮魂」を求めていたのです。
奈良の薬師寺に奉納された壮大なスケールの『大唐西域壁画』と『ナーランダの月』は正しく心の平安と全ての死者の鎮魂を祈った壮大な絵画です。
平山郁夫の絵画の裏には静かな仏教的祈りがあるのです。誤解を恐れずに書けば、全て宗教画なのです。それが平山郁夫の絵画の強みでもありますが弱みになる場合もあるのです。
宗教的になって芸術性が弱くなるのです。とても美しい絵です。私は彼の絵が大好きですが、家人は何となくつまらない絵だと言います。困ったものです。
今日は日本画の平山郁夫の心静まる風景画をご紹介しました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)