帆船にはロマンがある。その姿を見ているだけで心が豊かになる。風という自然現象に従って大海原を走る。自然と一体なのだ。
たまにはそんな帆船の話を書いて楽しんでみたいと思う。昨日、帆船Cutty Sarkのラベルのついたスコッチを傾けながら記事の構想が浮かんで来たのです。
連載の第一回目はイギリスで復元、公開展示してある帆船Cutty Sarkを、そして第二回目は横浜に係留公開してある帆船日本丸を簡略にご紹介し、最後に自分が乗っていたクルーザーヨット(帆舟)をご紹介したいと思います。
帆船の構造は簡単に言えば船体に高いマストを建てて何枚もの帆を上げて風の力を掴み航海する構造になっています。
マストと帆に何本もロープが付いていて、風の強弱に従って上げたり降ろしたりするのです。
風の力だけでは港への出入りが不便なので小型の蒸気機関かジーゼルエンジンが補助的についています。
さてカティサーク(Cutty Sark)は19世紀に建造されたイギリスの快速帆船です。
1番目の写真はイギリスで復元され展示してあるCutty Sarkです。船体の中央に蒸気機関の煙突が立っています。その右脇に船を推進させる内輪の白いカバーが見えます。
このCutty Sarkは中国からイギリスまで紅茶を輸送する「ティークリッパー」として活躍しました。
いかに速く一番茶をイギリスへ届けるかを競ったのです。
カティサークは現存する唯一のティークリッパーとしてロンドン近郊のグリニッジで保存展示されているそうです。
当時、イギリスの国民的な飲物である紅茶をいかに新鮮なまま届けるかに高い関心が集まっていたのです。最初に届けられたその年の一番茶は高値で取引され、船主や船長は莫大な利益と名誉を得ることができたそうです。
紅茶輸送のための快速船ティークリッパーが多数建造されましたが、Cutty Sarkはその中の一隻だったのです。
ティークリッパーは外洋で高速が出せるよう、通常の帆船に比べ前後に細長い形状をしていました。港湾内で小回りの利かないこのような船型が可能となった背景には、蒸気機関を積んだためと考えられます。
しかし可能な限り多量の紅茶が積めて、外洋で高速が出る設計が難しいのです。その為には蒸気機関を小さいものにし、石炭も少ししか積みません。出来るだけ大きな帆を何枚も張らなければなりません。
それは外洋帆船レースの技術の粋です。だからこそ快速船ティークリッパーのCutty Sarkはイギリス人の夢と希望だったのです。
Cutty Sarkを復元し展示してあるのは、それがイギリス人の誇りだからです。
それではもう少しCutty Sarkの構造を見てみましょう、
2番目の写真は3本のマストと長い横桁(ヤード)の写真です。
この写真で一番目が行くのはロープ類です。ロープ類は使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前がついています。
このロープ類は帆船の命です。
2番目の写真を見ると3本のマストに横になった帆桁(ヤード)が何本かずつついています。
ゴチャゴチャした写真なので大型帆船の構造は一瞬にして分かるというわけにはいきません。
しかしロープ類は次の2種類しかないのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類(クルーザーではステイとシュラウドと呼ぶ)
2)何枚もの帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類(クルーザーではハリヤードやシートと呼ぶ)
大型帆船ではロープ類が多数ついていますが、このように2種類だけに分類出来ます。
なおこの二番目の類には横桁(ヤード)の上下や向きの調整をするロープも含んでいます。
さて、どのロープを引くとどうなるか?一切心配無用です。甲板上の装置は全て人力で動かすのです。分からない時は手で引っ張ってみて、何処が動くか見れば簡単に理解出来るのです。
閑話休題。カティサークという船名の由来をご説明して終りといたします。
3番目の写真はカティサークの船首像の写真です。
カティサーク (Cutty Sark) とは、スコットランド語で短い (Cutty) シュミーズ (Sark) を意味するそうです。
ロバート・バーンズ (Robert Burns) 作の詩「タモシャンター」Tam o' Shanter に登場する魔女に由来すると言われています。
農夫のタムが馬にのって家路を急いでいると、悪魔や魔法使いが集会をしているところに出くわします。そこでタムは、カティサークを身にまとった若くて妖艶な魔女に魅了され、思わず立ち止まります。そのとたん、にわかに空が暗くなり、魔女たちがタムを捕まえようとしました。タムは馬にまたがり、命からがら逃げ出します。カティサークの魔女は馬の尾をつかまえたものの、尾が抜けてしまったため、タムは逃げのびることができたのでした。
3番目の写真のカティサーク号の船首像はカティサークを身にまとった魔女であり、その手には馬の尾が握りしめられているのです。
スコットランドの話には怖いものがありますね。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
たまにはそんな帆船の話を書いて楽しんでみたいと思う。昨日、帆船Cutty Sarkのラベルのついたスコッチを傾けながら記事の構想が浮かんで来たのです。
連載の第一回目はイギリスで復元、公開展示してある帆船Cutty Sarkを、そして第二回目は横浜に係留公開してある帆船日本丸を簡略にご紹介し、最後に自分が乗っていたクルーザーヨット(帆舟)をご紹介したいと思います。
帆船の構造は簡単に言えば船体に高いマストを建てて何枚もの帆を上げて風の力を掴み航海する構造になっています。
マストと帆に何本もロープが付いていて、風の強弱に従って上げたり降ろしたりするのです。
風の力だけでは港への出入りが不便なので小型の蒸気機関かジーゼルエンジンが補助的についています。
さてカティサーク(Cutty Sark)は19世紀に建造されたイギリスの快速帆船です。
1番目の写真はイギリスで復元され展示してあるCutty Sarkです。船体の中央に蒸気機関の煙突が立っています。その右脇に船を推進させる内輪の白いカバーが見えます。
このCutty Sarkは中国からイギリスまで紅茶を輸送する「ティークリッパー」として活躍しました。
いかに速く一番茶をイギリスへ届けるかを競ったのです。
カティサークは現存する唯一のティークリッパーとしてロンドン近郊のグリニッジで保存展示されているそうです。
当時、イギリスの国民的な飲物である紅茶をいかに新鮮なまま届けるかに高い関心が集まっていたのです。最初に届けられたその年の一番茶は高値で取引され、船主や船長は莫大な利益と名誉を得ることができたそうです。
紅茶輸送のための快速船ティークリッパーが多数建造されましたが、Cutty Sarkはその中の一隻だったのです。
ティークリッパーは外洋で高速が出せるよう、通常の帆船に比べ前後に細長い形状をしていました。港湾内で小回りの利かないこのような船型が可能となった背景には、蒸気機関を積んだためと考えられます。
しかし可能な限り多量の紅茶が積めて、外洋で高速が出る設計が難しいのです。その為には蒸気機関を小さいものにし、石炭も少ししか積みません。出来るだけ大きな帆を何枚も張らなければなりません。
それは外洋帆船レースの技術の粋です。だからこそ快速船ティークリッパーのCutty Sarkはイギリス人の夢と希望だったのです。
Cutty Sarkを復元し展示してあるのは、それがイギリス人の誇りだからです。
それではもう少しCutty Sarkの構造を見てみましょう、
2番目の写真は3本のマストと長い横桁(ヤード)の写真です。
この写真で一番目が行くのはロープ類です。ロープ類は使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前がついています。
このロープ類は帆船の命です。
2番目の写真を見ると3本のマストに横になった帆桁(ヤード)が何本かずつついています。
ゴチャゴチャした写真なので大型帆船の構造は一瞬にして分かるというわけにはいきません。
しかしロープ類は次の2種類しかないのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類(クルーザーではステイとシュラウドと呼ぶ)
2)何枚もの帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類(クルーザーではハリヤードやシートと呼ぶ)
大型帆船ではロープ類が多数ついていますが、このように2種類だけに分類出来ます。
なおこの二番目の類には横桁(ヤード)の上下や向きの調整をするロープも含んでいます。
さて、どのロープを引くとどうなるか?一切心配無用です。甲板上の装置は全て人力で動かすのです。分からない時は手で引っ張ってみて、何処が動くか見れば簡単に理解出来るのです。
閑話休題。カティサークという船名の由来をご説明して終りといたします。
3番目の写真はカティサークの船首像の写真です。
カティサーク (Cutty Sark) とは、スコットランド語で短い (Cutty) シュミーズ (Sark) を意味するそうです。
ロバート・バーンズ (Robert Burns) 作の詩「タモシャンター」Tam o' Shanter に登場する魔女に由来すると言われています。
農夫のタムが馬にのって家路を急いでいると、悪魔や魔法使いが集会をしているところに出くわします。そこでタムは、カティサークを身にまとった若くて妖艶な魔女に魅了され、思わず立ち止まります。そのとたん、にわかに空が暗くなり、魔女たちがタムを捕まえようとしました。タムは馬にまたがり、命からがら逃げ出します。カティサークの魔女は馬の尾をつかまえたものの、尾が抜けてしまったため、タムは逃げのびることができたのでした。
3番目の写真のカティサーク号の船首像はカティサークを身にまとった魔女であり、その手には馬の尾が握りしめられているのです。
スコットランドの話には怖いものがありますね。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)