生活に充分な厚生年金を貰っている高齢者と毎月5万円の国民年金だけを貰っている人の間の格差、正規社員と非正規社員の間の格差、能力主義による正規社員の間の年収の格差、農業従事者や漁業従事者の中の経済格差などなど日本には大きな格差が増大しつつあります。
日本の社会がアメリカの資本主義にならって日本社会の格差が年々増加しているのです。
そこで今日は日本の格差社会の現状を概観してみようと思います。
(1)日本は世界的にも貧困率が高い先進国
以下は、http://finalrich.com/sos/sos-economy-world-oecd.html から抜粋しました。
高度経済成長期がバブル崩壊によって終焉し、その影響が格差社会を起こしたと言います。
そして1998年以降、日本の格差は紛れも無く拡大しています。
格差にはいろいろあります。年収格差、雇用格差、経済格差、教育格差、地域格差、労働環境の格差、団塊世代の格差、企業と家庭との格差、挙げればキリがありません。これらの中で今日は年収格差だけを考えて行きます。
さて完璧な社会など存在しないように全く格差が存在しない社会もありませんが、いき過ぎた格差拡大は、下積になった人々の不満や怨恨を生み出し、不幸な社会になります。日本はこの「行き過ぎた格差社会」になって行くのでしょうか?
以下では年収からみた日本の貧困率を世界の国々と比較してみます。2005年2月にOECDによって発表された図です。
上の図はOECDが発表した世界の貧困率を表したものです。貧困率の定義は末尾の参考資料で示します。
OECDとはOrganisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略で、北米とヨーロッパを中心に、世界的に裕福である経済先進国を中心とした30ヶ国による経済機構です。
貧困率とは簡単に言ってしまえば貧乏人が、社会のどのくらいを占めるかという割合を示したものです。貧困率が大きければ大きいほど貧乏人が多いということです。
このOECDが発表したデータによりますと、日本は世界の先進国のなかでも貧困率No.5にランクインされているのです。つまり世界でワースト5位なのです。日本の貧困率は15.3%にものぼり、24ヵ国の平均である10.4%を大きく上回っています。そしてドイツやフランスなどヨーロッパの国の多くは、軒並み10%以下を示しており、多くの国が日本よりも貧困率が小さい国であることがわかります。
しかも日本より上位の国を見てみると、先進国はアメリカしかいないのです。ということは、日本は世界でもアメリカに次ぐ世界第2位の格差社会の先進国ということがハッキリと示されているのです。
(2)日本は格差の大きい先進国!ジニ係数の各国との比較
続けて世界の格差を示すデータをみていきましょう。2005年2月にOECDによって発表された図です。
上の図はさっきと同じOECDが発表したOECD加盟国の "ジニ係数" を表示したものです。
ジニ係数とは、格差社会をあらわすひとつの目安となっている指数のことで、格差社会のバロメータと言われています。この数値が大きければ大きいほど所得格差が大きい格差社会であり、1.0になると1人がすべての金を独り占めにするという完全不平等社会を示すことになります。そして逆に、ジニ係数が小さければ小さいほど所得格差が小さく、0.0になればすべての人の所得が同じという完全平等社会となります。
尚、このジニ係数の計算方法は末尾の参考資料にあります。
さて、このジニ係数においても日本はOECD参加国の中でも上位にランクインしています。
しかしこの日本がなによりも問題なのは、急速にこのジニ係数の数値が上昇していることなのです。
一昔前まで日本は「一億総中流」とか言われて、貧富の差が一番少ない国であると言われていました。それが、わずか10年程度でここまで格差が拡大してきたのです。この格差拡大は、次のジニ係数の年度別変化を見るとハッキリします。
(3)収入格差を示すジニ係数の増加の様子
下にOECD加盟国のジニ係数がどのように変化したかをしめします。
上の図は、ここ20年間のジニ係数の推移を表した図です。
この日本のところを良く見てください、確かにジニ係数自体は5番目あたりになっていますが、そのジニ係数がこの20年間で急速に上昇しているのです。
逆に日本よりもジニ係数が高い水準にある アメリカ、 イタリア、 イギリス などはジニ係数が1990年代からあまり拡大せず、むしろアメリカなどではジニ係数が抑えられてきているのです。
このことは次のことを意味しているのです。
それは日本の格差拡大は急速に進んでいること、そしてその格差拡大が進んでいるために、アメリカを超える格差社会になる意味しているのです。
さて何故このように格差の大きい社会になってきたか?
その原因は(1)高齢化社会になっている、(2)収入の少ない非正規社員が増加している、(3)正規社員は能力主義で収入格差が増大している、などなどの多くの原因があります。
しかしあまり長くなるので日本が格差社会になって来た原因は続編で議論いたします。
今日の挿絵代わりの写真は昨日、小金井公園で撮って来た花々の写真です。写真は順々にレンギョウ、ショカツサイ、ミツマタ、ユキヤナギ、そしてソメイヨシノです。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
====参考資料==========
(1)貧困率
貧困率とは、再配分後所得を家族の人数で調整したうえで、可処分所得の中央値の50%未満の所得しか得ていない人々を「貧困者」として定義し、その「貧困者」が、全体に占める比率のことである。貧困率が高いということは、その国が貧困である、ということではなく、その国内で、上記で定義した「貧困者」が多数いる、ということを示しており、それだけ、貧富の差が大きいということである。
例えば、日本の貧困率が、OECD諸国の中で第5位で、15.3%だということは、かなりショッキングなデータです。1980年台までは、日本は「一億総中流」とか言われて、貧富の差の少ない国であると、思われていたのです。それが、バブルがはじけて10年一寸で、「貧困者」が、15%以上もいる、貧富の差の大きい国になってしまったのです。
(2)ジニ係数
貧富の格差を測る指標に,ジニ係数がある.ジニ係数は、0から1までの値をとり、分布が平等であれば0に近づき、不平等であれば1に近づく係数であり、値の大きさが不平等度を測る指標として用いられている。例えば、5世帯の所得が、少ない順に10万円、20万円、30万円、40万円、100万円の場合のジニ係数をもとめてみよう.
世帯数の累積相対度数を横軸に、所得の累積相対度数を縦軸にとり、原点と各点を結んだ線をローレンツ曲線という。ローレンツ曲線は、所得の分布が平等であれば、原点を通過する45度線に近づき、不平等であれば45度線から右下に離れる傾向がある。
下の図のローレンツ曲線と45度線で囲まれる面積の2倍した値をジニ係数と呼ぶ。この場合,ローレンツ曲線と45度線で囲まれる面積は,0.2であり,ジニ係数は0.4である.
上はローレンツ曲線からジニ係数を求める図面です。
ジニ係数(ジニけいすう、英: Gini coefficient)とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標。ローレンツ曲線をもとに、1936年にイタリアの統計学者、コッラド・ジニによって考案された。所得分配の不平等さ以外にも、富の偏在性やエネルギー消費における不平等さなどに応用される。