自然の風景は美しい。そして四季折々咲く花々を眺めるとその美しさに魅せられます。
しみじみと自然を愛し花を眺めれば幸せになれると私は信じています。
ですから海や山や湖の風景を求めてあちこちに行きます。四季折々の花々を求めて野山をそして花畑や花園を探しに行きます。
とにかく自然をしみじみ愛します。すると足もとを流れる小川の水に魅了されます。一面に苔むした庭にも大自然を感じます。
冬の木枯らしに舞う落ち葉も何かを語っています。そして一面の原野が雪に覆われている光景にも息を飲みます。遠方に碧く輝いている雪山にも何故か感動します。そして四季折々に咲く花々は自然の美しさを引きたててくれます。
考えてみると自然を単純に愛すと幸せになると確信するようになったのは70歳を過ぎてからでしょうか?
それ以前は体力もあり山々に登ったり、海でヨットを楽しんだりしました。しかし高齢になると山に登れなくなり、ヨットも出来なくなります。ただ自然の風景や花々を眺めるだけになります。
静かに眺めていると自然界の息づかいが聞こえてくるように感じられるのです。それは地球の悠久な息づかいなのです。
自然と人間が一体になると感じる瞬間が時々あります。何の恐れも苦しさも無い幸せな瞬間です。これが単純に自然を愛せば幸せになるということなのでしょうか。
さて今日は日本に咲く花々のことを書きたいと思います。日本原産の花々と海外から渡来して来た花々なのかを考えてみたいと思います。
花のお好きな方は多いと思います。しかし日本原産の花か、海外から渡来してきた花かを正確にご存じの方は少ないと思います。
私は昔から日本原産の花に興味があったので調べてきました。ある時、本格的な文献を発見したのです。
それは慶応大学、磯野直秀名誉教授の発表している「明治前園芸植物渡来年表」です。(http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=13125 です)
これは完璧な研究論文です。信用出来る内容です。
いろいろな時代に日本に渡来した花々が明快に示してあるのです。
下にその一部をご紹介いたしますが、是非原文をご覧下さい。植物学の素人にも簡単に理解出来る素晴らしい文章で書いてあります。
(1)奈良、平安期
梅、菊、ボタン、シャクヤク、アサガオ、シモクレン、ケイトウ、ジュズダマだどなど。
(2)鎌倉期
ナンテン、フヨウ、ムクゲなど。
(3)室町期から安土桃山期
スイセン、ホーセンカ、ジンチョウゲ、ヒガンバナ、ローバイ、ソテツなどなど。
(4)江戸時代(17世紀)
シュウカイドウ、サルスベリ、レンギョウ、ハクモクレン、オシロイバナ、エニシダ、ヒマワリ、などなそ。
(5)江戸時代(18世紀)
キョーチクトウ、ハボタン、ニチニチソウ、など。
(6)江戸時代(19世紀)
ノボタン、ダリア、オジギソウ、コスモス、カンナ、キンギョソウ、スイートピー、パンジー、ラベンダーチューリップ、ゼラニュームなどなど。
この研究論文の圧巻は30ページから39ページにわたる数百種の渡来園芸植物の年号別の一覧表にあります。
慶雲2年(705年)から始まって、明治1年(1968年)のそれぞれの年号に渡来した園芸植物の名前が明記してあるのです。それはこの研究者のライフワークと言っても過言ではありません。
驚くことにわれわれが普通日本古来の植物と思っていた梅も柿もナスも皆渡来植物なのです。
是非ご覧下さい。そして植物がこの地球上を移動して繁茂する不思議をお考え下さい。
そして驚いたことに花屋さんで売っている花々の大部分が外国からやって来た花なのです。
それではと「日本原産の花」を検索しましたところ「お花の写真集」というホームページがありました。日本原産の花々の写真が沢山掲載されています。もっとも日本原産といっても東南アジアや中国、シベリアにもある花々です。日本だけの固有種ではありません。
その中から幾つかの写真をお送り致します。
1番目の写真がマンサクです。2番目の写真はテッポウユリです。
3番目の写真はハナショウブです。4番目の写真はフヨウです。
5番目の写真ははアジサイです。6番目の写真はカラスウリです。
7番目の写真はナデシコです。8番目の写真はオミナエシです。
さてそれでは日本にだけ生育している固有植物の花は何でしょうか?
日本の固有植物(http://d.hatena.ne.jp/naturalist2008/20110520/1305903018)というホームページには日本の固有な花の写真が掲載されて」います。
それを見ると、キンラン、エビネ、クマガイソウ、ウラシマソウなどとあまり数多くないことが分かります。
さてついでに桜について調べてみました。桜の原産はヒマラヤです。
『万葉集』には色々な植物が登場しますが、桜もその一つです。しかし、中国文化の影響が強かった奈良時代は和歌などで単に「花」といえば梅をさしていたそうです。万葉集においては梅の歌118首に対し桜の歌は44首に過ぎなかったのです。その後平安時代に国風文化が育つにつれて徐々に桜の人気が高まり、特に江戸時代になると「花」とは桜を指すようになったと言われています。
サクラの原産地はヒマラヤで、現在、ヨーロッパ・西シベリア・日本・中国・米国・カナダなど、主に北半球の温帯に、広範囲に分布しています。
桜で日本に自生するものとしては5から7種類ほどが認められており、これらの変性や交雑などから数十種類の自生種が存在するそうです。現在、広く植えられているソメイヨシノは江戸末期の改良種です。
このような花々の海外からの渡来の歴史を知ると時代によって日本人が眺めていた花の風景が変わって来たことが分かります。
年年歳歳、花相似たり、歳歳年々、人同じからず、と言います。しかし時間をもっと長い視野で考えると年年歳歳、花同じからず、となるのです。何故か地球の悠久の歴史が感じられます。
自然を愛するためには理屈がいりません。
自然の風景を単純に愛せば幸せになれると私は信じています。
四季折々の山林の風景を愛しています。林の中をじっと眺めます。樹木そのものも美しいですが背景に碧く輝く雪山が見えると一層美しく見えます。
そして四季折々いろいろな所に咲く花々に心が奪われます。本当に幸せな気分です。
こうして今日も何事もなく流れ行きます。老境の平穏な一日です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)