石山 望さんは何十年もロンドンにお住まいです。以下はその実感的なご感想です。
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先日、ニューズで知ったのですが、カズオイシグロ(Kazuo Ishiguro, 石黒一雄)さんが、文学部門で、今年のノーベル賞をもらわれたとのこと。
まずは、おめでとうございます。
この方、日本人ですが、5歳の時、家族と一緒に渡英。それからずーっと、62歳の今まで、英国住まいですから、国籍は英国ですし、思考様式も気質も、ほぼ英国人のそれです。奥様も英国人です。
でも、ご本人は、日本人の部分が少しあると仰っています。まあ、さしづめ感性がそうでしょうね。
代表作そして出世作「日の名残り(The Remains of the day)」で、ブッカー賞(日本の芥川賞にあたるもの)も貰っておられますし、当地では、よく知られた作家ですので、今度の受賞は、驚くに当らないというところでしょうか。
従って、彼の受賞に対する国民の反応も、淡々としたものでした。
その日のTVニューズでも、イシグロさんの受賞のことに関しては、最後の方に、アナウンサーが少し述べただけという、。
一体、この国では、ノーベル賞受賞者が出たからといって、あまりとやかくは言いませんね。ましてや、ノーベル賞受賞者を、神様扱いにするということは決してありません。
私、英国のこういうところは、とても好きです。
ただ、今回の場合は、文学賞ですから、一般大衆にも、まだ身近に感じられる部分があるのですが、これが、例えば、物理学賞とかいうことになると、国民の殆んどの人は、何のことかさっぱり分らないようなことなのですから、そういう部門で受賞者が出たといっても、彼らの反応は「ああ、そう、、」と、それだけ、。
また、英国人でも、小説など、全く読まない人も沢山おられます。それと同時に、すごい量の本を読まれる方もまた多いです。
私も、本は読みますが、悲しいかな、日本語か英語の本の乱読。読書量の多い皆様には、非常に恥ずかしいです。
これは、子供の頃に読書の習慣をつけておかなかったからだと、今にして思います。
何しろ、私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのですからね。その頃から、ひねくれ者の私、別に何とも思いませんでした。豊田佐吉さんとか、二宮金次郎さんとか、野口英世さんとか、(私に言わせると、我が家の救育ママ、教育センスがイマイチ)。
というわけで、イシグロさんの本は一冊も読んだことはありません。しかし、それでは、あまりに恥ずかしいので、昨日、町の大きな本屋に2軒行ってみましたが、いずれの店でも、彼の本は「売り切れました」とのこと。
仕方なく、今日、アマゾンで一冊注文しました。一番有名な「日の名残り」です。
私、基本的に、どんな本でも「読了する」という主義なのですが、この頃年端が行き、そんなことは言っておられなくなってきました。つまらないと思えば、途中で放り投げてもいい。
面白いと思う本を読みなさい。いくら、立派なためになる本だからと人に言われても、自分の梃子に合わないと思ったら、さっさと諦めなさい。
最後に付言、。
日本にも、イシグロさんに十分匹敵する作家は、以前から、少なからずおられたと思います。
しかし、その方達の作品が、極東のちょっと変った一言語で書かれているため、よほど頻繁に英語にでも翻訳されていない限り、ノーベル賞の候補対象になるには、不利だということではありませんか。(終り)
=====著者紹介===========================
この随筆の原題は、「面白いと思う本を読みなさい。」です、SNSの趣味人倶楽部の石山さんの日記欄に掲載されていたものを転載しました。
転載の許しを電話で頂きました。その折、原題を変えても良いというご承諾も得ました。
石山さんは何十年もロンドンにお住まいです。イギリスを愛し、日本を愛している知性豊かな紳士です。
石山さんにはこの欄に何度かご寄稿を頂いていますので、ご記憶の方も多いと存じます。
日本の文化とイギリスの文化に関して比較文化人類学的な鋭い観察眼をお持ちです。
私はかねがね日本でノーベル賞受賞者を崇め、大騒ぎをする様子を苦々しく思っていました。イギリスではノーベル賞もブッカー賞も同じようなものなのでしょう。
・・・「私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのです」と母親のことを言いながら今は亡き母親を偲んでいるところが石山さんの優しさです。微笑ましいです。
今日の挿し絵代わりの写真はイギリスの景勝地として有名な湖水地方の風景写真です。
写真の出典は、https://www.veltra.com/en/europe/uk/london/a/100639 です。
ロンドンから電車で3時間~4時間ほど行けます。湖水地方の景勝は、幾世紀にもわたってイギリスの詩人や芸術家たちを魅了してきました。世界中の子供たちの好きな小さな絵本シリーズのピーターラビットを描いたビアトリクス・ポターも住んでいたそうです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
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先日、ニューズで知ったのですが、カズオイシグロ(Kazuo Ishiguro, 石黒一雄)さんが、文学部門で、今年のノーベル賞をもらわれたとのこと。
まずは、おめでとうございます。
この方、日本人ですが、5歳の時、家族と一緒に渡英。それからずーっと、62歳の今まで、英国住まいですから、国籍は英国ですし、思考様式も気質も、ほぼ英国人のそれです。奥様も英国人です。
でも、ご本人は、日本人の部分が少しあると仰っています。まあ、さしづめ感性がそうでしょうね。
代表作そして出世作「日の名残り(The Remains of the day)」で、ブッカー賞(日本の芥川賞にあたるもの)も貰っておられますし、当地では、よく知られた作家ですので、今度の受賞は、驚くに当らないというところでしょうか。
従って、彼の受賞に対する国民の反応も、淡々としたものでした。
その日のTVニューズでも、イシグロさんの受賞のことに関しては、最後の方に、アナウンサーが少し述べただけという、。
一体、この国では、ノーベル賞受賞者が出たからといって、あまりとやかくは言いませんね。ましてや、ノーベル賞受賞者を、神様扱いにするということは決してありません。
私、英国のこういうところは、とても好きです。
ただ、今回の場合は、文学賞ですから、一般大衆にも、まだ身近に感じられる部分があるのですが、これが、例えば、物理学賞とかいうことになると、国民の殆んどの人は、何のことかさっぱり分らないようなことなのですから、そういう部門で受賞者が出たといっても、彼らの反応は「ああ、そう、、」と、それだけ、。
また、英国人でも、小説など、全く読まない人も沢山おられます。それと同時に、すごい量の本を読まれる方もまた多いです。
私も、本は読みますが、悲しいかな、日本語か英語の本の乱読。読書量の多い皆様には、非常に恥ずかしいです。
これは、子供の頃に読書の習慣をつけておかなかったからだと、今にして思います。
何しろ、私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのですからね。その頃から、ひねくれ者の私、別に何とも思いませんでした。豊田佐吉さんとか、二宮金次郎さんとか、野口英世さんとか、(私に言わせると、我が家の救育ママ、教育センスがイマイチ)。
というわけで、イシグロさんの本は一冊も読んだことはありません。しかし、それでは、あまりに恥ずかしいので、昨日、町の大きな本屋に2軒行ってみましたが、いずれの店でも、彼の本は「売り切れました」とのこと。
仕方なく、今日、アマゾンで一冊注文しました。一番有名な「日の名残り」です。
私、基本的に、どんな本でも「読了する」という主義なのですが、この頃年端が行き、そんなことは言っておられなくなってきました。つまらないと思えば、途中で放り投げてもいい。
面白いと思う本を読みなさい。いくら、立派なためになる本だからと人に言われても、自分の梃子に合わないと思ったら、さっさと諦めなさい。
最後に付言、。
日本にも、イシグロさんに十分匹敵する作家は、以前から、少なからずおられたと思います。
しかし、その方達の作品が、極東のちょっと変った一言語で書かれているため、よほど頻繁に英語にでも翻訳されていない限り、ノーベル賞の候補対象になるには、不利だということではありませんか。(終り)
=====著者紹介===========================
この随筆の原題は、「面白いと思う本を読みなさい。」です、SNSの趣味人倶楽部の石山さんの日記欄に掲載されていたものを転載しました。
転載の許しを電話で頂きました。その折、原題を変えても良いというご承諾も得ました。
石山さんは何十年もロンドンにお住まいです。イギリスを愛し、日本を愛している知性豊かな紳士です。
石山さんにはこの欄に何度かご寄稿を頂いていますので、ご記憶の方も多いと存じます。
日本の文化とイギリスの文化に関して比較文化人類学的な鋭い観察眼をお持ちです。
私はかねがね日本でノーベル賞受賞者を崇め、大騒ぎをする様子を苦々しく思っていました。イギリスではノーベル賞もブッカー賞も同じようなものなのでしょう。
・・・「私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのです」と母親のことを言いながら今は亡き母親を偲んでいるところが石山さんの優しさです。微笑ましいです。
今日の挿し絵代わりの写真はイギリスの景勝地として有名な湖水地方の風景写真です。
写真の出典は、https://www.veltra.com/en/europe/uk/london/a/100639 です。
ロンドンから電車で3時間~4時間ほど行けます。湖水地方の景勝は、幾世紀にもわたってイギリスの詩人や芸術家たちを魅了してきました。世界中の子供たちの好きな小さな絵本シリーズのピーターラビットを描いたビアトリクス・ポターも住んでいたそうです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)