この欄では、2017年12月7日に、「中国主導の巨大経済圏、一帯一路とアジア人の立場の向上」と題する記事を掲載しました。
その冒頭に次のように書いてあります。
・・・戦後72年の歴史を振り返れば、1945年から1990年頃までの冷戦時代はアメリカとソ連が世界の秩序の規範を決めていました。そしてソ連崩壊後は経済的に急成長した中国が世界の覇権を握る勢いです。特に世界の経済に分野では、中国はアメリカ、ロシア、そしてEUと競い、世界の経済的主導権を握ろうと努力しています。今後、中国はアメリカと並んで世界の秩序の規範を決めるようになると考えられています。
清朝末期からアジアは欧米の植民地として搾取されて来ましたが、この長期間続いた欧米主導の世界秩序が終焉を迎えたのです。
アジアの一国である中国が世界秩序の主導権の一角を握ったのです。これはアジアの国々にとって喜ばしいことです。日本もその対応を適正に行えば日本の運命も非常に素晴らしいものにするのです。・・・
この記事に対して趣味人倶楽部の会員の窮理彷徨人さんから批判的なコメントを頂きました。私の書いた記事の内容が楽観的過ぎるという趣旨のコメントです。
この 窮理彷徨人さんからのコメントは丁寧語や敬語がきちんと書いてありコメントの文章の模範のような文章です。丁寧なコメントなので、その内容を数日考えてみました。
そうしたら私の12月7日の記事は楽観的過ぎるという考えに至りました。
そこで今日は題目を「中国主導の巨大経済圏、一帯一路の完成には長期間かかる」と変更して、窮理彷徨人さんからのコメントの内容をご紹介したいと思います。
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窮理彷徨人さんからのコメント=====================
時々、日記を拝見させていただいています。様々な話題について掘り下げての、見識のあるご意見をありがとうございます。
習近平主席のアジア経済圏「一帯一路」構想は、どのような経緯、狙いで構想されたか詳しいことは存じあげませんが、ひとつの記事を見付けましたのでご紹介させていただきます。
これはあくまでもわたくし個人の意見を反映させたものではなく、何の意図もありません。
あくまでもネット上で公開されたもので、事実関係、分析などは記事の執筆者の判断であることをご承知願います。以下にURLをご紹介いたします。
http://www.mag2.com/p/news/339064?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_1211
これによると、この構想は将来的にアジアしいては世界の経済に、発展的効果をもたらすとは言い切れない問題点が指摘されたいます。
私には個人的評価をできるほどの知識、経験もなく、記事の信ぴょう性、信頼性なども分かりません。
無責任なきらいはあるかもしれませんが、この記事が何らかの有益な効果をもたらすようなことがあればとの想いから、ここでご紹介いたしました。どうか意図をお汲み取り頂き、ご容赦いただきたいを思います。
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さてコメントで教えて頂いたURLを開いてみましたら、中国主導の巨大経済圏、一帯一路構想にはいろいろな問題が起きていることが分りました。
特にこれまで中国と親しかった国々に於いてもこの中国の構想の事業が反発を受けている事実が列挙してあるのです。
そこで以下にこの『中国の「一帯一路」、不信感広がり巨大事業が相次いでキャンセル』と題したメルマガの解説文の抜粋を転載いたします。
・・・「一帯一路」は、中国によるインフラ建設を沿線国で推し進め、一大経済圏をつくりあげるということが建て前として語られてきました。ところが、実際には中国側の契約不履行や工事中断が相次いでおり、また、仮に完成したとしても、中国側に高い金利を要求され、実質的に中国に支配されるというケースが相次いでいます。
このメルマガでも何度かそのことはお伝えしてきました。いい例がスリランカのハンバントタ港です。スリランカ政府が中国側の甘い提案に乗せられ、高利での資金援助を受け入れた結果、支払いができなくなったスリランカ政府は中国政府に債務軽減を求め、そのかわりに中国側に99年間の運営権と治安警備の権限を譲渡せざるをえなくなりました。
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インドと中国 スリランカめぐり高まる「駆け引き」
こうした状況は、中国の「新植民地主義」として世界で警戒されるようになったわけです。しかも、今回、中国側の提案を拒否したパキスタン、ネパール、ミャンマーは、いずれも長らく親中国であり続けてきた国です。
とくにパキスタンは中国と中パ経済回廊(CPEC)の建設で合意し、中国からパキスタンへ600億ドルの支援が約束されていますが、これに水が差された形です。しかもCPECでも腐敗問題によりパキスタンの負債と工期の遅れが顕在化しているといいます。
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中国パキスタン経済回廊に高まる警戒感、最大の脅威は腐敗
結局、中国人がかかわる以上、腐敗や搾取は避けられず、それが現地住民の憎しみを倍増させることにつながるのです。アフリカでも中南米でもそうした反中意識が高まっています。
そして同様の反中感情が、親中国でも現れ始めたといえるでしょう。中国ではパキスタンとの友好関係は「巴鉄」(鉄のように硬い同盟)と呼ばれていますが、最近は、中国人を狙った襲撃事件が多発しています。CPECで大量にパキスタンに入り込む中国人を身代金目当てに誘拐する事件も増えているといいます。
上にある反中国の具体例を一つだけ以下に示します。
・・・パキスタン、ネパール、ミャンマーが、中国が計画していた大規模水力発電所3カ所の事業中止を発表しました。報道によれば、これは総額200億ドルにもなる大型プロジェクトだそうです。
パキスタンはインダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に中国が提供を申し出ていた資金140億ドル(約1兆5,754億円)の受け入れを拒否したとされています。インダス川はチベット高原を水源とし、その90%以上がパキスタン領内を流れています。
パキスタンの穀倉地帯を流れる貴重な水の供給源であり、これを中国に握られることは、国の死活問題にかかわります。さすがにこれを受け入れるわけにはいかなかったということでしょう。・・・
ネパールやミャンマーでも同様な大型プロジェクトの中止が発表されています。
以上のようなメルマガの解説文にある大型プロジェクトの中止は「中国主導の巨大経済圏、一帯一路」構想の実現には非常に大きな問題が立はだかっており、この構想の完成には紆余曲折の長期間が必要になると誰の目にも明らかです。
最大の問題点は中国の植民地主義です。これがある限り関係国は警戒して中国の投資を拒否します。
中国政府が植民地主義を完全に放棄することは容易ではなく、相互互恵の精神が定着するためには長期間が必要になります。
従って私の書いた、「中国主導の巨大経済圏、一帯一路とアジア人の立場の向上」と題する記事は楽観的過ぎると言わざるを得ません。
その楽観的な書き方を訂正いたします。この事をご指摘下さった窮理彷徨人さんへ感謝いたします、有難う御座いました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
今日の挿し絵の写真は記事の内容とは関係がありません。ヨーロッパの文化や雰囲気が伝わって来るようなシスレーの絵画3点です。
アルフレッド・シスレー(Alfred Sisley, 1839年 - 1899)は、フランス生まれのイギリス人の画家です。
シスレー 「サン=マルタン運河の眺め」、1870年、50 x 65 cm 、オルセー美術館、パリ
シスレー 「ポール・マルリの洪水」、1876年、Oil on canvas、50 x 61 cm、ルーアン美術館
シスレー 「 モレのウジェーヌ通り、冬 」 1891年、 46.7 x 56.5 cm、メトロポリタン美術館