原子炉の全電源喪失で水素が多量に発生し建屋が爆発でコナゴナに吹き飛びました。この現象は科学的に説明すべき内容です。
ところが説明にあたる東京電力広報担当者達の科学的思考訓練があまりにも薄弱なために説明に厳密性がありません。曖昧模糊としています。
その事が東京電力の情報隠蔽体質と連動して国民に根強い不信感を植え付けてしまったのです。
科学的思考訓練とは自然現象の原因と結果の関係を明快に説明しようとする訓練です。
原発の冷却水が何故有効に炉心を冷却出来なかったか?その原因を科学的に推定します。そして推定の正しさや間違いを検討します。そのような態度が始めから無いのです。
次に、炉心へ外側から注水した水は核燃料を溶解や懸濁させながら建屋の地下室に集まると仮定するのが正常な科学的思考です。そのような説明もありません。
また、毎日、何トンの注水をし、そのうち何トンが地下室に集まるのか推定するのも科学的思考です。
次に、地下室から毎日何トンの汚染水を汲み上げて浄化し、そのうち再び何トンを注水に使っているか計算し、公表するのが科学的な態度です。
この単純な数値を発表すると、毎日、原発工場の地下の土の中へ漏れて行く汚染水の量が計算できます。毎日の注水量から汲み上げている汚染水の量をさし引いた量が、地下の土中へ漏れている水の量です。
昨日、1号炉、2号炉、3号炉の全てが100度以下の冷温停止状態になりました。これは予想以上の大きな成果です。
しかし、汚染水は相変わらず漏れ出しているのです。その量を発表しようとしないから情報隠蔽と批判されるのです。
福島原発の原子炉から漏れている汚染水の対策について科学的に明快な発表がありません。
私は現在の放射能汚染水の漏れの様子を大げさに描いた図面を下に示します。
下の図のギザギザの醜い上下の線が、汚染水の漏れの様子をマンガ的に描いたものです。
勿論、全くの憶測で描いた概念図ですので漏れの個所は間違っていると思います。しかし現在何が起きているかを概念的に理解するのには大変分かり易い図面と自負しています。
水漏れは、3月11日の大地震とその後の水素爆発で、あちこちに出来た割れ目や小さな穴から起きている筈です。
このような状況ですから、すべての割れ目や小さな穴を溶接して密閉する事は殆ど不可能に近いと思います。
全ての原発炉の冷温停止に成功した昨日からは以上のような汚染水の漏れる状況を科学的にそして定量的に発表すべきと信じます。
それが発表されると国民は少し安心するのです。
蛇足ながら付け加えると、汲み上げる汚染水が注水量より多い日もある筈です。大雨の降った翌日は雨水が地下室へ沁み出して、地下室の水位を上げる筈です。その現象も含めて長期間の観察が必要なのです。
このようにして原発のトラブルの一つ一つを科学的に説明して行くことが信頼回復に繋がります。東京電力側の誠実な、そして科学的な説明を期待しています。(続く)