昨日はあきる野市の広徳寺をご紹介いたしました。
1番目の写真がその本堂です。
このかやぶき屋根のお寺を見て私は「嗚呼、鎌倉佛教だ!」と強く感じました。
建てられたのは鎌倉時代の後の1373年ですが、お寺全体の雰囲気が鎌倉仏教そのものです。
突然私的なことを書いて恐縮ですが私の家内は鎌倉生まれで終戦の年までそこの幼稚園や小学校に通っていました。
鎌倉は楽しい所だ良い所だとしきりに言うので私も何十回も鎌倉に遊びに行きました。鎌倉のお寺へも何十回も行き写真を撮りました。境内に佇んだり坐ったりしていると、とても穏やかな気持ちになれます。
そうしたら鎌倉佛教とはこういうものだと感じられるようになったのです。それは奈良や京都の佛教と違うのです。
そこで今日は皆様に鎌倉の佛教を感じて頂けるように幾枚かの写真をお送りいたします。
2番目の写真は鎌倉仏教を代表する建長寺の山門です。
建長寺は鎌倉五山の第一位の寺で臨済宗建長寺派の大本山です。建長5年、1253年に幕府五代執権北条時頼が建立したわが国最初の禅寺です。
建長寺の開山は中国から来た蘭渓道隆によってなされたのです。
3番目の写真は建長寺の鐘楼です。鐘楼の鐘は建長寺創建の時に鋳造されたもので国宝に指定されています。鐘楼の屋根が茅葺なのが古さを感じさせます。
4番目の写真は円覚寺の坐禅堂の選仏場の写真です。円覚寺は一般向けの座禅会や学生座禅会などを毎日のように開催していてます。
5番目の写真は海蔵寺です。質素で小さなお寺です。侘びを感じさせるたたずまいです。この雰囲気が好きで何度も行ったお寺です。
6番目の写真は報国寺の竹林です。本堂が立派でないので竹林がこのお寺の魅力です。
7番目の写真は光明寺の山門です。
この光明寺の山門だけは例外的に壮大です。浄土宗の本山の一つの「大本山」なので大きいようです。この寺以外はとにかく小さいのです。お寺の雰囲気も侘しいのです。
鎌倉のお寺はみな質素です。しかしその厳しさ、侘しさが何とも言えぬ魅力なのです。
以上の7枚の写真で鎌倉仏教というものを感じて頂けたと思います。
感じて頂けたらそれで良いのですが蛇足を少々書かせて下さい。
飛鳥時代や奈良時代に日本に入って来た仏教は天皇や貴族のための佛教であり、「護国安泰」の目的で保護されました。
従って一般民衆の救済は重要視されていません。ただ空海、すなはち弘法大師だけは天皇、貴族だけでなく民衆の救済のための行脚をしたことで有名です。
しかし鎌倉時代になると仏教は武士や民衆の魂の救済を重視するようになります。教義も非常に簡単になり、例えば南無阿弥陀佛と念仏を唱えるだけで極楽に行けるという宗派も出てきたのです。誰でも出来る座禅を重視する禅宗が盛んになります。
この新しい仏教への変革を鎌倉時代の仏教改革と言います。禅宗とは臨済宗と曹洞宗と江戸時代に伝えられた黄檗宗です。
このような仏教改革を受けて、鎌倉のお寺は禅宗の建長寺と円覚寺の二つ以外のお寺は規模が小さくて質素なたたずまいです。天皇や貴族の保護を受けた京都の寺のように華やかでありません。静かな小さいお寺が沢山あるのです。
私はもう50年くらい前から鎌倉にとりつかれ何度も訪れました。瑞泉寺、明月院、寿福寺、杉本寺、海蔵寺、報国寺、光明寺、などなど30位のお寺には何度も行きました。ある時は鎌倉や逗子や江の島の宿に泊まり、まだ人のいない朝早くから、読経の声が響く境内を散歩したものでした。
鎌倉の仏教は質素を美徳にした武士や庶民の為の仏教なのです。
鎌倉時代の宗教改革は主に京都で起きましたが、その当時の政治権力が鎌倉にあったので、新しい宗派の寺を鎌倉に建てたのです。
その改革によって生まれた6つの宗派を鎌倉仏教と言います。1、浄土宗 、法然(源空)、2、浄土真宗(一向宗) 親鸞、3、時宗(遊行宗) 一遍(智真)、4、法華宗(日蓮宗) 日蓮、5、臨済宗、栄西、6、曹洞宗 、道元、の6宗派です。
現在、鎌倉にあるお寺の一覧表は末尾の参考資料にありますが、その大部分はこの新しい仏教宗派のお寺なのです。
古い時代に鑑真の開いた奈良仏教の宗派や、空海の真言宗や最澄の天台宗はその教義とは関係なく、天皇や貴族によって保護されたために京都にある寺院仏閣はどうしても華美なものになっているのです。
ところが、これらの宗派のお寺も鎌倉にもあります。真言宗や天台宗のお寺も幾つかあります。
しかしそれらのお寺も質素なたたずまいです。鎌倉の武士や庶民の信仰の対称になっていたので華美な雰囲気はありません。
さて、鎌倉のお寺を訪れると「鎌倉五山」とか「京都五山」という言葉が出てきます。
当時の政治権力者が新しい禅宗の臨済宗などの寺院を格付けし、管理をする制度で選ばれたお寺です。
第一位の建長寺から順々に円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺(第五位)というランクがあったのです。幕府が住職を任命していたのです。
しかし、この鎌倉五山のお寺も贅沢とはほど遠いたたずまいを見せています。
そんな鎌倉なので茶道も盛んでした。お寺の僧たちが茶道を愛したのです。現在でも抹茶を出してくれる店があちこちにあります。
鎌倉のお寺めぐりの魅力は「わびさびの世界」にあるようです。日本人の心の琴線を掻き立てるのです。勿論外国の観光客もこの「わびさびの世界」を感じ鎌倉を再訪する人も多いのです。
今日は鎌倉仏教を写真で感じて頂けるような紹介をしたつもりです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)
===参考資料=================
(1)鎌倉の寺院一覧:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8E%8C%E5%80%89%E5%B8%82%E5%86%85%E3%81%AE%E5%AF%BA%E9%99%A2%E4%B8%80%E8%A6%A7
鎌倉地域
扇ガ谷 英勝寺 東光山 浄土宗 玉峯清因 英勝院 1636年(寛永13年)
鎌倉地域
扇ガ谷 海蔵寺 扇谷山 臨済宗建長寺派 心昭空外 上杉氏定 1394年(応永元年)
鎌倉地域
扇ガ谷 護国寺 (鎌倉市) 立正山 日蓮正宗 日達 1969年(昭和44年)
鎌倉地域
扇ガ谷 寿福寺 亀谷山 臨済宗建長寺派 栄西 北条政子 1200年(正治2年) 鎌倉五山第三位
鎌倉地域
扇ガ谷 浄光明寺 泉谷山 真言宗泉涌寺派 真聖国師 北条長時 1251年(建長3年) 鎌倉観音霊・・・・以下省略します。
(2)日本の仏教宗派一覧:http://www.ne.jp/asahi/koiwa/hakkei/bukkyou26-4.htm
(3)鎌倉仏教:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8E%8C%E5%80%89%E4%BB%8F%E6%95%99
「鎌倉新仏教」とは、一般には次の6宗を示している。
浄土宗 法然(源空)
浄土真宗(一向宗) 親鸞
時宗(遊行宗) 一遍(智真)
法華宗(日蓮宗) 日蓮
臨済宗 栄西
曹洞宗 道元
(4)鎌倉五山:
我が国の禅宗のうち、臨済宗の寺院を格付けをする制度。すなわち、幕府が任命した住持(住職)を順次上位の寺に昇進させることにより、幕府の管理下に置き、コントロールしようというもの。 鎌倉幕府の五代執権、北条時頼の頃、中国の五山の制に倣って導入したのが始まりで、その時々に応じて入る寺院や順位などが変動した。最終的には、京都と鎌倉にそれぞれ五山、その上に「五山之上(ござんのうえ)」という最高寺格として南禅寺が置かれた。現在の五山の順位が決まったのは、至徳3(1386)年、室町幕府三代将軍・足利義満の時。ちなみに、五山の下には、十刹、諸山がある。
(京都・南禅寺 - 別格上位)
建長寺 - 第一位
円覚寺 - 第二位
寿福寺 - 第三位
浄智寺 - 第四位
浄妙寺 - 第五位
(5)鎌倉の寺院マップ:http://www5d.biglobe.ne.jp/~shocoma/tp/kmmp.htm
そして、https://www.google.com/maps/d/viewer?mid=znOgXTlC1ISA.k2mXDagL2b0E&hl=en_US