日本を取り巻く国際環境はトランプ大統領の出現以来、激しく変わってきました。
トランプ大統領のアメリカ第一主義で日本は自国の経済や安全について従来のアメリカ依存政策を考えなおす必要が生じてきたのです。それに拍車をかけたのは中国のGDPが世界2位に急上昇した事実です。
このトランプ大統領のアメリカ第一主義と中国のGDPの急上昇は日本にとって厳しい国際環境を作りつつあるのです。
このような時代になると日本は国際的な政策を独自に考えなければいけない時代になってきたのです。
アメリカと中国の対立、抗争が激しくなるこの情勢で日本の立場は厳しいものになります。
そこでこの連載では以下の5つの問題で日本はどのようになって行くかを順々と考えて行きたいと思います。
(1)中国の一帯一路政策への日本の参加と中国との貿易活動
(2)日本の自衛隊の軍備拡大に影響を与えるトランプ大統領と中国軍の太平洋進出
(3)中国と北朝鮮の団結が日本の外交政策に及ぼす影響
(4)ヨーロッパ諸国とアメリカと中国の対立、抗争の関係
(5)アジア諸国とヨーロッパ諸国とのロシアの脅威
以上の諸問題は相互に関連しているので単独に取り上げて議論すべきではありません。
しかし話を判り易くするためにそれぞれを分離して考えて行きたいと思います。
今日は「アメリカと中国の対立、抗争と日本の立場」という連載の(2)として以下の問題を取り上げます。
(2)中国の一帯一路政策への日本の参加と中国との貿易活動
さてこの主題を考える時一番重要なことは中国のGDPの急成長です。そこでこの問題から議論を始めようと思います。
1) 中国のGDPが世界2位に急上昇し2025年に世界一位になる
中国の経済力、GDPが世界で2位になり、やがてアメリカを抜いてトップの座につこうとしているのです。
1番目の写真は世界の主要国のGDPの1980年から2021年の推移を示す図面です。
この出典は,各国のGDP、http://www.garbagenews.net/archives/1335765.html です。
この図を見ると中国のGDPの増加は驚異的で、2025年には間違いなくアメリカを抜いて世界一になる勢いです。
従来、アメリカのGDPを抜いた国は皆無だったのです。これは破天荒なことです。この図の出典は,各国のGDP、http://www.garbagenews.net/archives/1335765.html です。
今後、中国はアメリカと並んで世界経済の秩序の規範を決めるようになると考えられています。
アジアの一国である中国が世界経済の秩序の主導権の一角を握るのです。
従って日本の対外経済活動も中国に左右されることになるのです。
日本はアメリカと安保同盟を結び、軍事的にはアメリカ依存が続きますが、経済分野では日本はアメリカから離れ中国に依存する運命にあるのです。
しかも経済力は軍事力の支えなのです。その意味でも日本の安全保障は中国の経済力とその中国が作ろうとしている巨大経済圏に大きな影響を受けることを客観的に理解すべきです。
2)一帯一路でつなぎ中国の巨大な経済圏
中国の一帯一路経済圏のGDPを合計してみましょう。
2番目の写真は世界全体のGDPに占める各国の2017年の比率です。出典は1番目の写真と同じです。
中国の15.5%と日本の6.4%とインドの3.1%とを加算すると25、0%になります。この数字はアメリカの24、4%よりも多いのです。
この中国、日本、インドの合計の25%に韓国と台湾のGDP加えればアメリカのGDPを遥かに抜いてしまうのです。
さらにインドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ミャンマー、バングラデシュなどのDGPを加えれば中国の一帯一路経済圏には巨大な経済圏が既に出来ているのです。
日本の経済活動が中国の一帯一路経済圏に巻き込まれるのは避けられないのです。
トランプ大統領自身も一帯一路への協力について米国はオープンであると述べています。
米国内ではキャタピラー社などといった米国企業、カリフォルニア州などが独自に一帯一路構想への参加を表明しています。
中国は共産党独裁の国だから付き合いは止そうという考えは現実的でありません。
国際経済はイデオロギーや宗教とは関係無くダイナミックに動いて行くものです。
3)中国の一帯一路経済圏の構想の詳細
一帯一路を中心にした中国主導の巨大経済圏構想は日本の経済活動に大きな影響を与えるので、その詳細をもう少し詳しく見てみましょう。
中国政府は中国から西方のアジア諸国、ロシア、中東諸国、ヨーロッパ諸国にまたがる広大な地域を一帯一路でつなぎ巨大な経済圏を作ろうとしています。
一帯とは陸路でつなぐ経済圏で一路とは海路でつなぐ経済圏です。
3番目の写真は中国が進めている巨大経済圏の地図です。青い色の国は一帯だけでつなぐ国で、褐色の色は一路でもつなぐ国です。
この図面の出典は、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%B8%AF%E4%B8%80%E8%B7%AF です。
4番目の写真は陸路の一帯と海路の一路の見取り図です。陸路の一帯も海路の一路の計画はまだ具体的には出来ていません。自動車高速道路の具体的な計画もまだ発表されていません。コンテナ船を航海させる航路もまだ決まっていません。暫くは複数の自動車道路や鉄道をつないで貨物の輸送をします。航路も同様です。
この一帯一路巨大経済圏構想に従って中国政府は外交活動を展開しています。
中国政府の李克強国務院総理は、沿線国を訪問し、支持を呼び掛けています。
すでに100を超える国と地域から支持あるいは協力協定を得ており、さらに国際連合安全保障理事会、国際連合総会、ASEAN、EU、アラブ連盟、アフリカ連合、アジア協力対話などの場で盛んに宣伝、勧誘を展開しているのです。
その結果、上海協力機構など多くの国際組織が支持を表明しているのです。
この活動を補強するために中国は、諸国の経済不足を補うアジアインフラ投資銀行(AIIB)を作りました。
その上、中国・ユーラシア経済協力基金、シルクロード基金などを矢継ぎ早に作っています。
これらの金融資金はインフラ投資を拡大するだけではなく、中国から発展途上国への経済援助を通じ、人民元の国際準備通貨化による中国を中心とした世界経済圏を確立する壮大な目的があるのです。
「一帯一路フォーラム」とは、2017年5月14日から15日、中国の習近平国家主席が旗振り役となり開催した国際会議です。
参加者は29か国の首脳と130か国以上の代表団、約70の国際機関、合計約1500人でした。
テーマは、かつてアジアとヨーロッパの貿易に多大な役割を果たしたというシルクロードを現代に復活させ、中国から海と陸のルートでヨーロッパまでをつなぐ一大経済圏を作ろうというものです。
5番目の写真はこの国際会議の参加者の集合写真です。
4)貿易における日本の対米と対中の立場の変化?
日本の立場はどうなのでしょうか?
日本の貿易の相手として中国がすでにアメリカより重要になっているのです。
6番目の写真は2012年度の日本の貿易の相手国の貿易額の割合を示しています。
この図の出典は、https://www.assist-theonlyone.com/2018/09/29/米中貿易戦争が泥沼化の様相/ です。
この図が示すように日本の一番重要な国は現在中国です。2位がアメリカなのです。そして中国との貿易額はますます増大しているのです。将来アメリカは日本の貿易相手国としては重要ではなくなるのです。
輸出・輸入を合計すれば、日本の最大の貿易相手国は中国です。2012年度の貿易総額は約130兆円ですが、その2割が中国で、2位のアメリカの1.5倍以上の割合です。今の日本経済にとって、中国はアメリカ以上に影響力の大きな存在なのです。中国経済が崩壊すれば、中国への輸出が激減することは必然です。
アメリカは生産国家・軍事国家として世界の秩序を維持しようとしてきました。貿易収支で大きな赤字を背負い力をなくしています。
トランプ政権は世界の相手国に対し対し、自国第一主義と保護主義を唱えた戦争を仕掛けています。
日本は経済活動分野ではアメリカを見限り、中国の味方にならざるを得ない趨勢です。
しかし安保条約が存在する以上、日本は露骨にアメリカに敵対出来ません。
今日の議論の結論です。
中国の一帯一路政策へ対して日本はもっと積極的に協力して各企業が参加すべきです。そして中国との貿易活動をアメリカの理解を得ながら拡大すべきです。
この連載の次回、第3回目は以下の問題を取り上げたいと思います。
(3)日本の自衛隊の軍備拡大に影響を与えるトランプ大統領と中国軍の太平洋進出
(続く)