□鳥たちの格好な餌場
庭の片隅に黄色の原色のネットが光輝いている。
この植え込み樹木の合間に見えるネットがブドウ棚である。外側からこんもりしたヒバの木に隠される、秘密のテント基地である。
春先から数か月かけて手塩に掛て育てたブドウが漸く成熟し、収穫を迎える前に敵(鳥)が数度の襲来で食い荒らされ棚下に残骸を残され虚しい思いをさせられた。成熟した時期の甘さが、格好の好物で、一旦味を覚えると格好の餌となり、時期になると執拗にせまってくる。
朝起きて、棚下に食い荒らした殻が無数に散乱し、攻撃された房が突かれ、殆ど実が無くなる程の無残な姿に悔しい思いもしてきた。
そんな苦い経験を反省に、より強固なバリアーとなるネットを張ってみた。
上から被せるだけのネットでは、下部から潜り、餌にありつけることを自然に身を付けてしまった。
□強固な小屋づくり
コーナに柱を立て、これを支点に水平方向に柱を交わし、骨格が生まれ、小屋の骨格が完成する。
この支柱を支えに上部からネットをかけ、小屋風に仕上げる。
そこで、寸足らずでネットが地面に届かない従来品に加え、新たなネットを購入し棚の下部からもネットを張り、ぶら下がったブドウ房を下部からも侵入阻止出来る構造にした。
それでも執拗に進入路を探す、鳥共にネット相互の繫ぎ部分は針金で止め、隙間は完全に塞ぐことは出来なかったが、それに近い姿に仕上げた。
こうした状況にぶどうの生育をみながら6月に現在のネットを張った。
以来、9月に至るまで時折、監視しているが、防禦機能が成功したか、敵(鳥)の侵入は無く、無事にブドウの成育を見守った。
□カ-テンコールの幕開け
ネットの内側には3月頃の冬季から育てたブドウ様が、豊潤な姿に期待を込めて、成育していく。
さーて愈々準備が整った、カーテンコールの幕開けである
9月に入って台風の影響もあって今年は雨が多い。
先日も、台風15号や前線の影響で、雨雲や雷雲が発達しやすい状態が続く。
雨がいったん弱まったり、やんだりしても、突如カミナリ音で激しい雷雨の洗礼もあり気を抜けない状況。
繊細なブドウ様、溜まった水滴が病気を呼び、雨に弱い
このためプロの農園では房単位で傘をかけ雨対策、次いで房単位で防水処理された紙袋を掛ける。
前述の通り、上から、下からネットで隔離されているため、肝心のブドウ様の成育実態はベール包まれてしまった。
袋は底が開いているもの、側面はシールで塞がれているが、僅かな隙間から内部を覗くことが出来るが、ネットのバリアもあって、殆ど遮断状態で中の様子が見えない状態にあった。
僅かな覗ける範囲で、真っ黒な成熟品もあり赤みを帯びた未成熟品もあり、収穫すべきか判断に迷った。
周辺の農家も品種が違うが、既に狩り取られたブドウが梨などと一緒に並び、賑わいを見せている。
□「そろそろ収穫しろよ」のサイン
そんな中でネットの周辺は甘い匂いが漂い、「そろそろ収穫だ~」と言う促しがブドウ様自ら発しられている「匂いのサイン」が送られている。
こんな背景から遂に刈り取りに踏み切った。
と言っても成育にばらつきがあり、もうすでに成熟しているものは落としていったが、明らかに未成熟品は見送った。
最初の刈り取りから、一週間後の、間を置き、二度の刈り取りを実施した。
こうして、目につく物を次々に袋を引っ剥がし、その正体が初めて判る。
栄養補給路を断たれ枯れ既にミイラ化した物、赤みを帯びた未成熟品など。一方では、真っ黒で形が整い大きな柄の房のプロ並みのブドウの出合いは、収穫冥利に尽きる。
こうして100数十枚枚の袋外しは一部の未成熟を残し、瞬く間に終わってしまう。
こんな狭い所に法外な袋の数、プロの農園は房の出来具合を見て粒の多いものは残すが粒の未達品は落としてしまいエリートとしてそのまま育てる。
所が我が家はけち根性を発揮し小物も袋掛けするので忽ち袋の数が多くなってしまう。
房の大小に関わらず総花的に全数育てるより、限られた樹液の総量を甘受したエリートのみ育てるのが、見栄えの良い作品造りに必須とも思えるが、中々ふん切れない。
□甘い食感
良い品種,余り良くないものを雑種混合を一先ず、回収ダンボールに収容する。
房から仲間外れされた種子を、拾い集め、口に放り込む。「うん、甘~い」取立てを、その場で感受出来手塩を掛けて作った手作りの喜びはなんとも言えない。