赤坂、六本木、華のお江戸のど真ん中、○○タワー、△△ヒルズ、アカサカサカスと横文字のネーミング名が付けられ見上げリャ、とてつもないビッグタワー乱立し、街ぐるみ、地域ぐるみ、大型の開発が進みふらりとやってくる田舎者には何処が、何処だかさっぱり判らない。
まして、一歩脇道に入ると、曲がりくねった道と、榎坂、うどん坂、南部坂、薬研坂、乃木坂、安鎮坂、ころび坂etcと赤坂だけで20近くの坂道が網の目のように走っている。
起伏の激しい立地を無節操につなぎ合わせた江戸時代あるいはそれ以前からの名残をそのまま引き継いでもいるようである。
そんなことから、そこを根城にしている連中なら未だしも、よそ者には判り辛くしているようで、一旦迷うと袋小路に入ってしまう。
周辺は江戸城を囲むように大小の有力大名が多数住んでいたが、ご維新と共に屋敷は払い下げられ中央官庁街に企業のオフイスビル街に変貌していった。都会の一等地として多くの人を抱え込み、其処から吐き出される人の渦で埋まり、絶えることが無い。当たり前のことだが、この雑踏の中これだけ多くの人が行き交い、人との関わりを余り持たず、よそよそしく無関心で居られるのも、都会の姿である。
そんなところで六本木の交差点の案内板の前で、地図をかざし、目指す目標の○○ビルの方向は確かにこの方角で間違いないと思うのだが、置かれる周囲の状況から自信持てず、しばしこの案内板の前で思案していた。
その姿に背後から、お嬢さんが声を掛けてくれ、「どうしましたか?」と助け船。
「そちらの方向に、間違いありません」の一言が天の神に思え、嬉しかった。礼もそこそこに背中を押されるように自信を持ってそちらに向かった。
ん~ん、覚めた都会の中で、人と人と関わりが薄い時代に、極く稀であろうが思いやりや、情けが脈々と続いているのだと改めて、感心させられた。
それが、若い女性であったことも、幸運であったのかも知れない。(笑い)