575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

蛇の鬚の実             草女

2008年01月25日 | Weblog
 1月の初旬、海上の森を歩いていてジャノヒゲの濃いコバルトブルーの実を見つけた。房状に成り一本の柄に10個ほどの実がついている。いつもは数個くらいしかついていない。これほど見事な実に出会ったのは初めてである。
 子どもの頃、この美しいコバルトブルーの実を剥いて半透明な小さな球を弾ませて遊んだ。スーパーボールなどない頃、その弾み方は子どもの常識を超えていて楽しかった。
 ユリ科ジャノヒゲ属の多年草で別名リュウノヒゲという。細い葉を蛇や竜の鬚にたとえたものであろう。蛇に鬚があるかという疑問もあるが、それはさておきあのコバルトブルーの実が問題である。
 じつはあのコバルトブルーの実は種子なのである。ユリ科のヤブラン属とジャノヒゲ属だけは、果皮が薄くて脱落しやすく種子が剥き出しのまま成長する。
 幼い頃剥いたブルーの皮は果皮ではなく種皮ということになる。
 この事は柿の種を考えると良く分かる。柿の種は茶色の部分が種皮で中に乳白色の胚乳があり柿の種となっている。もしジャノヒゲの様に柿の種がそのまま枝にぶら下がっていたらどうだろう? 奇異だし何より美味しい柿が食べられない。
 ジャノビゲもヤブランも余分なものを一切捨てて究極の種子だけの姿を外に見せている。そしてそれが見事に美しい。特にジャノビゲの種子は、ラピスラズリやトルコ石より美しく、それらの宝石より光沢があり透明感があるように思える。
 身に着けることは適わないが森の大切な宝石である。

   人の手に惜しみ返へしぬ龍の玉       皆吉禅寺洞
   陸はもと海なり青き龍の玉         中村苑子
   この中の誰雨をんな龍の玉         宇佐美魚目

   小さき手を逃げて追われし龍の玉      愚足
コメント (1)
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