575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

静寂のダム湖    鳥野

2009年02月03日 | Weblog
もう昨年のことになります。晩秋、徳山ダムが満水になったと聞いて、出かけました。

湖底に沈められた徳山村、寸断された伝統、住み慣れた地を追われた人たち、悲しさや悔しさを思えば、観光気分どころではない。ためらっていました。

が、折りよく”富有柿を買いに道の駅にでも行こうか”という夫妻があって、足を延ばしてもらいました。

揖斐川沿いの道は、里山をいくつか越えて、奥へと続きます。山裾には集落の跡地も散在していました。

付け替えで整備された、すばらしい道路が現れるとダムは間近、コンクリートずくめの別世界です。

堰堤は行き届いた遊歩道、日本一の広さという湖が一望できます。

計画から50年余、無駄遣いだ、時代遅れの愚挙だ、と反対されながら、遂に完成したダム事業。ダム湖は徳山湖と呼ばれます。

「お国が決めたことだもの、どうせ止めはしないよ」と言いながらピッカリコニカで、村の生活を撮リ続けた増山たづ子さんも亡くなりました。

”沈まないでくれ”と児童が太い字で書いた、あの徳山小の黒板も今は湖底です。

   ・ 声のなき叫びを沈めし徳山湖黒き水皺の深き寂しさ

   ・ 水底となりたる村の山裾に灯ともすごと柿の熟せり

                         鳥野


 
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