あの地方には揺るぎもしない大きな杉の木が立っていて、
そこにそよ風が吹いている。
風が吹くたびに、杉花粉が飛び散っている。
といった光景が見えてくるような句だ。
杉花粉は花粉症を連想させ、現代的な雰囲気も帯びてくる。
古い巨木と新しい病気が組み合わされ、ユーモアもある。
吉本隆明が、夏石番矢の俳句について書いたものです。
さらに、こう続きます。
この句の場合、助詞を抜いて成り立っている。
助詞を抜くということは、先に触れた日本的な情緒を
抜くということにつながっている。
しかし漢詩になったわけではない。まぎれもない日本語の作品だ。
夏石さんの句は、一見すると、とんでもないものに思えるかもしれないが、
よく読むと、前の時代の前衛俳句よりも、むしろ俳句らしく
音数律の枠を保って、わかりやすい。
すべての言葉を漢字にしたことで、見た目の効果も表れている。
さて読み方です。
ひこくみふうすいどうとこたちすぎみじん
「現代日本の詩歌」吉本隆明より 遅足
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