【内容】
志保は庭へおりて菊を剪きっていた。いつまでも狭霧さぎりの霽はれぬ朝で、道をゆく馬の蹄ひづめの音は聞えながら、人も馬もおぼろにしか見えない。生垣のすぐ外がわを流れている小川のせせらぎも、どこか遠くから響いてくるように眠たげである、……露でしとどに手を濡らしながら、剪った花をそろえていると、お萱が近寄って来て呼びかけた。
「お嬢さま、もう八時でございます、お髪をおあげ致しましょう」
「お嬢さま、もう八時でございます、お髪をおあげ致しましょう」
【著者】
山本周五郎
【読んだ理由】
山本周五郎作品。いつまでも狭霧さぎりの霽はれぬ朝で、道をゆく馬の蹄ひづめの音は聞えながら、人も馬もおぼろにしか見えない。生垣のすぐ外がわを流れている小川のせせらぎも、どこか遠くから響いてくるように眠たげである、……露でしとどに手を濡らしながら、剪った花をそろえていると、お萱が近寄って来て呼びかけた。
「お嬢さま、もう八時でございます、お髪をおあげ致しましょう」
【著者】
山本周五郎
【読んだ理由】
山本周五郎作品
【最も印象に残った一行】
けれどもあなたに近づき、あなたと言葉を交わしていると、云いようのない美しさ、心の奥まで温められるような美しさにうたれる。
【コメント】
ひさしぶりの山本周五郎作品。主人公志保の滅私の生き方には心打たれる。