【内容】
『竹柏記』は、恋が主題の武家物である。真面目に勤め、妻をひたすら愛する高安孝之助が、しかし妻・杉乃の心を掴めないまま時が過ぎ、しかもかつての杉乃の愛人であった岡村八束から卑劣な仕打ちを受けるという展開となり、最後に妻も心を開くのだけれど、恋心も仮借のない現実の中では踏みにじられるというストーリーなので、必ずしも後味はよくない。岡村八束のような、恩を平気で仇で返すような人物に苛立ってしまった。
『雨あがる』と『雪の上の霜』は浪人した武術の達人である三沢伊兵衛と妻・おたよを主人公とした姉妹編ともいうべき作品である。お人好しなのに部類の強さの伊兵衛が止むを得ず戦わなければならないシーンは思わず笑ってしまう。弱い者を救うために賭け試合をせざるを得ない展開になり、そのために仕官の道を閉ざされるのも共通のパターンだ。しかし、伊兵衛・おたよの夫婦には何とも言えぬ味わいがあり、楽しい。
【著者】
山本周五郎
山本周五郎
【読んだ理由】
山本周五郎作品
山本周五郎作品
【最も印象に残った一行】
人の一生はながく、つねに平穏無事ではない、静かな春もあれば、夏の残暑もある、道は嶮しく、風雪は荒いと思わなければならない。この世は花園ではないのです。
【コメント】
松はときに色を変えることもあるが、竹柏は枯死するまで色を変えない。
松はときに色を変えることもあるが、竹柏は枯死するまで色を変えない。
私も枯死が近いが、変えないものがあるだろうか。
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