日本男道記

ある日本男子の生き様

素人鰻

2008年06月22日 | 私の好きな落語
【まくら】
『万葉集』にはすでに、うなぎは夏やせにいいと書かれている。しかし薬のように仕方なく食べる、という気分があふれていて、おいしくはなかったことがわかる。そのうなぎが、業者の扱う食べ物になるのは室町時代になってからだ。この時代にはすでにうなぎのなれずしと蒲焼が存在した。といってもこの時代の蒲焼はぶつ切りで、味付けはしょうゆと酒あるいは、サンショウみそだったというから、素人でも台所でできそうである。
江戸時代になると、腹や背を裂いて骨やわたを除くようになった。ここに、職人的腕前が必要になった。さらにみりんや砂糖も出現して「たれ」をつけて焼くことになる。たれは長く使うとうなぎの脂肪が溶けこんでおいしくなる。つまり長年営業しているプロのうなぎ屋だからこそ、美味な蒲焼きが焼ける、ということなのだ。

出典:TBS落語研究会

この噺は明治の初め”武士の商法”を笑う話として、この噺が出来た、と思われる。

【あらすじ】
元武士の主人が汁粉屋を始めたいと思っていたが、鰻さきの金に勧められて鰻屋を始めることにした。酒癖の悪い金ではあるが、酒を断ったので頑張るという。開業の初日、仕事が終わって、めでたいからと呑ますと、酔わないときは誠に良い職人であるが、その内に酩酊してきて前後が判らなくなる。主人に毒づいて飛び出してしまう。翌日、心配していると仲の”馬”を連れて帰ってくる。その日は又元気に働いて、日が暮れた。主人も喜んでいるところ、又酒を呑んで飛び出してしまう。翌日も同じで、ついに金は帰ってこない。

 主人自ら料理するという。客が来て鰻を注文すると、その鰻を捕まえることすら出来ない。悪戦苦闘の末鰻を捕まえたことはいいが、鰻は手の中で右往左往、鰻に合わせて主人も右に行ったり左に行ったり、
奥方が「いったいどちらに行かれるのですか?」
「前に回って、鰻に聞いてくれ!」。

出典: 落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
間抜け落ち(会話の調子で間抜けなことを言って終わるもの。また奇想天外な結果となるもの。)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『上からは明治だなどと言うけれど治明(おさまるめい)と下からは読む』

【語句豆辞典】
【片口】注ぎ口が一箇所についている陶器の鉢。樽その他の大きい容器から液体を小出しする場合、一度これに受けてから、他の小さい入れ物に移すのに使う。

【この噺を得意とした落語家】
・八代目 桂文楽

【落語豆知識】
【下席(しもせき)】二十一日から三十日までの興行のこと。

 



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