日本男道記

ある日本男子の生き様

黒崎~箱の浦 4

2025年02月18日 | 土佐日記


【原文】 
風の吹くことやまねば、岸の波立ち返る。これにつけてよめる歌、
緒を撚りてかひなきものは落ちつもる涙の玉を貫かぬなりけり
かくて、今日暮れぬ。
四日。梶取、「今日、風、雲の気色はなはだ悪し」といひて、船出ださずなりぬ。しかれども、ひねもすに波風立たず。
この梶取は、日もえはからぬかたゐなりけり。

【現代語訳】
風が吹くことが止まないので海岸の波が寄せては返る。それにつけて、(私が)詠んだ歌は、
緒を撚りて…
(糸を撚って紡いだところで、どうしようもないのは、こぼれてたまる旅の苦しみの涙の球を貫くことができないからだ)
このようにして、今日も暮れてしまった。
二月四日。船頭が「今日は、風、雲の様子がとても悪い」と言って船を出さないことになった。けれども、一日中風も吹かず、波も立たなかった。
この船頭は天気の具合も推測できない馬鹿者なのであった。

◆『土佐日記』(とさにっき)は、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ。紀貫之が土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を諧謔を交えて綴った内容を持つ。成立時期は未詳だが、承平5年(934年)後半といわれる。古くは『土左日記』と表記され、「とさの日記」と読んだ。 

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