日本男道記

ある日本男子の生き様

黒崎~箱の浦 1

2025年01月28日 | 土佐日記


【原文】 
二月一日。朝の間、雨降る。牛時ばかりにやみぬれば、和泉の灘といふところより出でて、漕ぎ行く。海の上、昨日のごとくに、風波見えず。
黒崎の松原を経て行く。ところの名は黒く、松の色は青く、磯の波は雪のごとくに、貝の色は蘇芳に、五色にいま一色ぞ足らぬ。

【現代語訳】
二月一日。 朝のうち、雨が降った。お昼ごろにやんだので、和泉の灘(たな川)という所から出て、漕いで行く。
海上は、昨日と同様に、風も吹かず波も立たない。黒崎の松原を過ぎて行く。土地の名は黒く、松の色は青く、磯の波は雪のように白い、貝の色は蘇方、五色にあと一色だけ足りない。

◆『土佐日記』(とさにっき)は、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ。紀貫之が土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を諧謔を交えて綴った内容を持つ。成立時期は未詳だが、承平5年(934年)後半といわれる。古くは『土左日記』と表記され、「とさの日記」と読んだ。 

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