三月某日、2カ月に一度の神戸労災病院の定期検診に行った。無罪放免で終わってから神戸文学館に歩いて行った。
上のポスターにある坂を下って。
歩き出す前に毎回検診の度に寄る蕎麦屋「二滝」でこの日はいつものざる蕎麦ではなく、天ざるを初めてオーダーした。
天婦羅をアテにして菊正宗のぬる燗を楽しんだ。時々、神田勤務時代のように蕎麦屋で一杯が恋しくなる。
文学館の展示には村上春樹が卒業した神戸高校前の地獄坂や北野町の不動坂などいくつも馴染みの坂の写真が展示されていた。
文学館を出た後は適当な場所でバスに乗るつもりで歩き出した。
阪急王子公園駅のガードと駅。
水道筋商店街の手前の橋から山手と浜側。
水道筋商店街
銭湯
灘警察近くの都賀川にかかる橋から山手と浜側
将軍筋あたりの山手と浜側
そして結果的には「神戸文学館を出て水道橋筋商店街を抜けてマジックパン屋の横を過ぎ、六甲八幡神社を過ぎて山猫軒の前を通り
松の多い石屋川公園でペットボトルの水を飲んで一休みしてます。30 分かそこらしたら家に着くでしょう(笑)」と言うメールを
相方に入れることになった。
石屋川公園にて
帰宅して携帯の歩行計を見ると労災病院から家まで8069歩だった。
神戸文学館のサイトから。
★地獄坂の情景
神戸に通うようになり3カ月、本当に「神戸は坂の街」だと実感します。阪急電車から外を見ると、山側も海側も坂道ばかりです。神戸に住む人にとって坂道は生活の一部。一人ひとりにお気に入りの坂や思い出があることにもうなずけます。
村上春樹さんの「ノルウェイの森」の中で、ワタナベがキズキと一緒にビリヤードに行く場面。2人が歩く坂道は、神戸高校正門前の「地獄坂」から始まる坂道がモデルだと考えられています。いったいどのくらい「地獄」なのかと実際に歩いてみると、想像以上の急勾配でした。ちょうど陸上部らしき生徒たちがダッシュで上り下りしていたのですが、私には走って上るなんてとうていできません。ここに通うと少しの寝坊もできないな…と無駄な心配をしてしまいました。
神戸高校時代はバス通学だった村上さん。「地獄坂」は日常の一部だったとして、バス道から海へと向かう坂道は、馴染み深いというよりも少し特別なものだったのかもしれません。実際に友人と授業を抜け出しビリヤードに行ったのなら、その道のりは楽しい思い出として刻まれているはず。しかし、作品の中では友人の死へとつながる場面となりました。村上さんの頭の中で、ワタナベとキズキはどんな言葉を交わしながら、どんな速さでこの坂道を下って行ったのでしょうか。
登場人物と筆者に思いを馳せながら作品のモデルとなった場所を聖地巡り。これも文学の醍醐味の一つです。(学芸員 川田有美)
★坂道から生まれた装い
朝の電車のホームで装いの素敵な女性を見かけました。60歳前後くらいでしょうか。柔らかい白のウールのロングコートに赤茶色の皮バッグ。同系統の赤が混じった多色使いのマフラーを合わせています。思わず見とれてしまいました。
「神戸はね、若い人だけじゃなくて大人がおしゃれな街なのよ」。昔、叔母が教えてくれました。「おしゃれは足元から」といいます。けれども神戸は坂の街。靴を選びます。
先月の文学館便りで北村学芸員が書いていた北野の思い出は坂道を颯爽とヒールで歩く神戸の女性の話でした。
「そう、そう」。私も頷きながら10代のころを思い出しました。たまに訪れていた北野の坂道を歩きながら、視界に入ってくるのは目の前を行くお姉さんたちの姿でした。「こんな勾配をヒールですごいなあ」と驚いたことを覚えています。そして、揺れるスカートから伸びる足のきれいだったこと。今から思えば、坂をものともしない着こなしの格好良さと、颯爽と歩く様が美しく見えたのだと思います。
神戸を舞台にしたNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」。この番組制作に洋裁の技術指導で携わっているという神戸の女性の記事に印象的な言葉がありました。
「神戸の坂道でスカートの裾がきれいに見えるには、どんなラインがいいかなど、暮らしの中で映える工夫をいつも考えていました」
坂の街に暮らす人の装い、その装いをつくる人たち。「神戸の人はおしゃれ」というイメージには神戸ならではの坂道が一役買っているかもしれません。(学芸員 中村 麻)
引用元。
楽屋ネタ。
2017.03.19 〜 2017.03.25、閲覧記事数:12471 PV、訪問者数:2217 IP、ランキング:2015 位 / 2691871ブログ
上のポスターにある坂を下って。
歩き出す前に毎回検診の度に寄る蕎麦屋「二滝」でこの日はいつものざる蕎麦ではなく、天ざるを初めてオーダーした。
天婦羅をアテにして菊正宗のぬる燗を楽しんだ。時々、神田勤務時代のように蕎麦屋で一杯が恋しくなる。
文学館の展示には村上春樹が卒業した神戸高校前の地獄坂や北野町の不動坂などいくつも馴染みの坂の写真が展示されていた。
文学館を出た後は適当な場所でバスに乗るつもりで歩き出した。
阪急王子公園駅のガードと駅。
水道筋商店街の手前の橋から山手と浜側。
水道筋商店街
銭湯
灘警察近くの都賀川にかかる橋から山手と浜側
将軍筋あたりの山手と浜側
そして結果的には「神戸文学館を出て水道橋筋商店街を抜けてマジックパン屋の横を過ぎ、六甲八幡神社を過ぎて山猫軒の前を通り
松の多い石屋川公園でペットボトルの水を飲んで一休みしてます。30 分かそこらしたら家に着くでしょう(笑)」と言うメールを
相方に入れることになった。
石屋川公園にて
帰宅して携帯の歩行計を見ると労災病院から家まで8069歩だった。
神戸文学館のサイトから。
★地獄坂の情景
神戸に通うようになり3カ月、本当に「神戸は坂の街」だと実感します。阪急電車から外を見ると、山側も海側も坂道ばかりです。神戸に住む人にとって坂道は生活の一部。一人ひとりにお気に入りの坂や思い出があることにもうなずけます。
村上春樹さんの「ノルウェイの森」の中で、ワタナベがキズキと一緒にビリヤードに行く場面。2人が歩く坂道は、神戸高校正門前の「地獄坂」から始まる坂道がモデルだと考えられています。いったいどのくらい「地獄」なのかと実際に歩いてみると、想像以上の急勾配でした。ちょうど陸上部らしき生徒たちがダッシュで上り下りしていたのですが、私には走って上るなんてとうていできません。ここに通うと少しの寝坊もできないな…と無駄な心配をしてしまいました。
神戸高校時代はバス通学だった村上さん。「地獄坂」は日常の一部だったとして、バス道から海へと向かう坂道は、馴染み深いというよりも少し特別なものだったのかもしれません。実際に友人と授業を抜け出しビリヤードに行ったのなら、その道のりは楽しい思い出として刻まれているはず。しかし、作品の中では友人の死へとつながる場面となりました。村上さんの頭の中で、ワタナベとキズキはどんな言葉を交わしながら、どんな速さでこの坂道を下って行ったのでしょうか。
登場人物と筆者に思いを馳せながら作品のモデルとなった場所を聖地巡り。これも文学の醍醐味の一つです。(学芸員 川田有美)
★坂道から生まれた装い
朝の電車のホームで装いの素敵な女性を見かけました。60歳前後くらいでしょうか。柔らかい白のウールのロングコートに赤茶色の皮バッグ。同系統の赤が混じった多色使いのマフラーを合わせています。思わず見とれてしまいました。
「神戸はね、若い人だけじゃなくて大人がおしゃれな街なのよ」。昔、叔母が教えてくれました。「おしゃれは足元から」といいます。けれども神戸は坂の街。靴を選びます。
先月の文学館便りで北村学芸員が書いていた北野の思い出は坂道を颯爽とヒールで歩く神戸の女性の話でした。
「そう、そう」。私も頷きながら10代のころを思い出しました。たまに訪れていた北野の坂道を歩きながら、視界に入ってくるのは目の前を行くお姉さんたちの姿でした。「こんな勾配をヒールですごいなあ」と驚いたことを覚えています。そして、揺れるスカートから伸びる足のきれいだったこと。今から思えば、坂をものともしない着こなしの格好良さと、颯爽と歩く様が美しく見えたのだと思います。
神戸を舞台にしたNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」。この番組制作に洋裁の技術指導で携わっているという神戸の女性の記事に印象的な言葉がありました。
「神戸の坂道でスカートの裾がきれいに見えるには、どんなラインがいいかなど、暮らしの中で映える工夫をいつも考えていました」
坂の街に暮らす人の装い、その装いをつくる人たち。「神戸の人はおしゃれ」というイメージには神戸ならではの坂道が一役買っているかもしれません。(学芸員 中村 麻)
引用元。
楽屋ネタ。
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