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『雨月物語』1953年(昭和28年)公開 監督:溝口健二

2021年12月30日 | 映画

wiki『雨月物語』(うげつものがたり)は、1953年(昭和28年)3月26日公開の日本映画である。大映製作・配給。監督は溝口健二、主演は森雅之、京マチ子。モノクロ、スタンダード、96分。

上田秋成の読本『雨月物語』の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編に、モーパッサンの『勲章』を加えて、川口松太郎と依田義賢が脚色した。戦乱と欲望に翻弄される人々を、幽玄な映像美の中に描いている。海外でも映画史上の最高傑作のひとつとして高く評価されており、第13回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。

『雨月物語』(Ugetsu)/1953/予告編

カメラは宮川一夫。これも”幽玄な映像美”がふんだんにあった。
水辺のシーンがよく似合う。霧、枯れ木の幹や細かな枝、河原のススキ、漕ぎ出す小舟。

時代は室町時代の終わり頃か。すでに戦国の世のようす。
貧農の源十郎は焼き物を作って町で売っていた。
それでも何とか食っていけそうな様子だったが、戦乱の中、賑わっているらしい町へ出て一旗あげようと
する源十郎と、侍になりたい義弟の藤兵衛の話。妻子を残し二人はともに村を出た。(妻はこのままつつましく暮らしたい)
果たして結果は、おそらく想像どおり。


藤兵衛の妻「いくら言ってもあんたはバカだから、自分で不幸せな目に合わなきゃ気がつかなかったんだよ」過去形だから映画後半だ。

藤兵衛「いくさがが俺たちの望みを歪めてしまったんだ」
藤兵衛はまだ自分のせいにはしていない。

しょげる夫に対し妻「あたしの苦労を無駄にしちゃいやだよ しっかり元気を出しておくれよね」
「うん」と無言でうなづく藤兵衛。苦労したのは妻のほうだ。
このころの映画の女性は、けっして亭主への愚痴や世の中にたいする不満は口にしない。

一方の兄源十郎は?
ネタばれそうなので書かない。
涙があった。

昔話の教訓めいたところもあるが、話は単純で、それだけに無限の解釈の幅がある。

たとえば藤兵衛の「いくさがが俺たちの望みを歪めてしまったんだ」の”いくさ”にしても
金、出世欲、女の色気、(世間、あらゆる欲望、競争)など。

京マチ子の妖艶さと田中絹代の現実的で地味なあたたかさ。
その対比だけで男の愚かしさを表してあまりある。
おろかしいとだけ、せめてはいけないのだろうが。

帰ってきた源十郎が妻を呼びながら、家のなかを一まわりする長回しのシーンは
:22:35秒ぐらいから。

余談だが
古い映画を連続して見ていると、同じセットや小物の使いまわしに気づくようになった。

 

監督 溝口健二
脚本 川口松太郎
依田義賢
原作 上田秋成
製作 永田雅一
出演者 京マチ子
森雅之
水戸光子
田中絹代
音楽 早坂文雄
撮影 宮川一夫
編集 宮田味津三
製作会社 大映京都撮影所
配給  大映
公開  1953年3月26日

上映時間 96分