下ばかり見ている

歩いていると澄んだ空気の中から、いい香りがする。
秋の香りの一番は、木犀であるが、これにはまだ早い。裏口から出るときには、木犀に触れるようにして出てくる感じだが、花も蕾さえも見当たらなかった。

ゆっくり歩いていると、香りが近寄ってくる。
歩道のガードレールのすぐ傍に咲いている。
黄色い大きい花をいっぱい付けて、「だらん」とした感じで咲いている。
お昼に歩いた時は、香りがなかった。だから、香らないのだと思っていた。
しかし、夕暮れ時にそこに近づくにつれ香っていることが分かった。
曼荼羅華も夕方開花の時の香りがとても良い。それに似ているが、花はどれ一つとして上向きがない。「木立チョウセンアサガオ」である。

花の傍に行くと声をかけたくなる。
「みんな　どうしてそんなに　下ばかり見ているの。上を見てご覧。周りを見てご覧。素敵な高校生だって、毎日あなたを見ながら通っているのよ。だあれも　摘んでいかないで、見て通っているのよ」って～～～。