玄関から外に出たら、ふうわりといい香りに包まれた。
もう金木犀の季節なんだ。
裏庭に回ると、緑の葉の中に、クリーム色の小さな蕾が。びっしり付いている。
降り続いた雨で庭に出ない間に、こんなに蕾をつけていた。
花が開く前からほのかに香って、開花を知らせてくれる。開花すると、オレンジ色に木が覆われたようになるが、まだ葉の陰に潜んでいるのが可愛い。
手紙に添えて、金木犀の花をセロハンに包んで送った日のことが、この花が咲くと思い出される。
それは、高校3年生の時である。
東京に進学した彼との手紙通信が春からずっと続いていた。進学を目指した高校生活や故郷の季節便りなど他愛のない文面だったけれど、1日の終わりに書くのが楽しかったし、なれない寮生活や大都会の中のお知らせなど、便箋2枚程度の彼からの便りが、帰宅した私を毎日待っていてくれるのが嬉しく、帰宅を急いだものだった。
そんな便りの中に「故郷の香り」を届けた。今のように早く届かなかったその頃、返事に、
「茶色くなった花に故郷の遠さを思う。冬休みに帰っても、もう花はないね」と~~~
手紙だけの幼い初恋だったと今は懐かしい。
36歳という若さで亡くなったことを新聞で知った時、お風呂の中で、声を出して泣いたことも、金木犀の咲く頃にふと頭をよぎる。
もう金木犀の季節なんだ。
裏庭に回ると、緑の葉の中に、クリーム色の小さな蕾が。びっしり付いている。
降り続いた雨で庭に出ない間に、こんなに蕾をつけていた。
花が開く前からほのかに香って、開花を知らせてくれる。開花すると、オレンジ色に木が覆われたようになるが、まだ葉の陰に潜んでいるのが可愛い。
手紙に添えて、金木犀の花をセロハンに包んで送った日のことが、この花が咲くと思い出される。
それは、高校3年生の時である。
東京に進学した彼との手紙通信が春からずっと続いていた。進学を目指した高校生活や故郷の季節便りなど他愛のない文面だったけれど、1日の終わりに書くのが楽しかったし、なれない寮生活や大都会の中のお知らせなど、便箋2枚程度の彼からの便りが、帰宅した私を毎日待っていてくれるのが嬉しく、帰宅を急いだものだった。
そんな便りの中に「故郷の香り」を届けた。今のように早く届かなかったその頃、返事に、
「茶色くなった花に故郷の遠さを思う。冬休みに帰っても、もう花はないね」と~~~
手紙だけの幼い初恋だったと今は懐かしい。
36歳という若さで亡くなったことを新聞で知った時、お風呂の中で、声を出して泣いたことも、金木犀の咲く頃にふと頭をよぎる。